中学受験で差がつくのは「算数」! 苦手単元トップ5の攻略法 ~お父さん・お母さんは解けますか?~ 図形・割合・比・速さ・特殊算
中学受験において「算数」で苦労している受験生や悩まれている保護者は多いのではないでしょうか。ここでは、中学受験の算数対策について、早めに取り組んでほしいことをはじめ、攻略のための具体的な勉強方法や重要単元をお伝えしていきます。
【 目 次 】
- 中学受験で「算数が合否を分ける」と言われる理由
- 1:配点の割合
- 2:得点差がつきやすい
- 中学受験における算数の特徴
- 小学校の算数との違い
- 中学受験のために早い段階でしておくべきこと
- 1:計算力を身につける
- 2:苦手意識を持たせない
- 中学受験における算数の重要な単元1
- 1:図形
- 2:割合
- 3:比
- 4:速さ
- 中学受験における算数の重要な単元2
- 1:つるかめ算
- 2:旅人算
- 3:濃度算
- 中学受験の算数の効率的な勉強法とは?
- 1:基本的な計算問題の正答率を上げる
- 2:復習を繰り返す
- 3:苦手な問題はわかるまで繰り返し解く
- 家庭学習のポイント
- 問題集を使用する場合
- 塾を利用する場合
- 個別指導塾を利用する場合
- まとめ
中学受験で「算数が合否を分ける」と言われる理由
中学受験では「算数がキモ!」とよく聞くけれど、「うちの子は算数苦手なのよね。中学受験向きではないのかしら?」、「算数ができないと合格できないよ!」と闇雲にプレッシャーを与え、子どもを算数嫌いにしていないですか?
こういった算数嫌いを防ぐためには、まずは算数という「戦う相手を知る」ことが大事です。
そして、何のために中学受験をするのか、こちらの記事を参考にしながら考えてみましょう。
1:配点の割合
入試科目全ての合計点で合否判定がなされる入試では、「配点の割合が高い教科」がすなわち「合否に影響を与えやすい教科」と言えます。
学校によって入試の各教科配点は異なりますが、国語・算数の配点を理科・社会よりも高く設定している学校も数多くあります。このような学校では、受験生の算数の出来・不出来が、合否に影響を与えやすい状況となっています。
例を見てみましょう。
A校:4教科350点満点のうち算数の配点が150点の場合、算数の占める割合は約43%。
B校:4教科いずれも100点満点の場合、算数の占める割合は25%。
A校では、算数が合否に影響を与えやすい教科であることが一目瞭然ですね。
2:得点差がつきやすい
算数は他の教科に比べて、合格者平均点と受験者平均点に差がつきやすいことが特徴としてあげられます。各学校のホームページや入試結果報告会などで算数の入試結果を確認してみると、合格者の度数分布と受験者の度数分布に大きな差があることが多いです。
受験生の得点に差がつきやすい教科に算数がなるということは、算数が得意な子どもにとっては有利ですが、算数が苦手な子どもにとっては苦戦を強いられることになります。たとえ、他教科が得意で得点が取れていたとしても、算数に足を引っ張られるケースが往々にしてあります。
では、なぜ算数が得点差のつきやすい教科となってしまうのでしょうか。
差がつきやすい原因
算数で受験生の得点差がつきやすくなる原因として、「出題形式」と「採点基準」が挙げられます。
<出題形式>
理科・社会の知識問題や国語の漢字・語彙問題は、独立した問いであるため、その解答が間違っていたとしても、他の問題の解答に影響はありません。しかし、算数の場合、大問の(1)でつまずくと、同じ大問の(2)、(3)…と影響が出る場合があり、大きな失点に繋がります。
また、算数は他教科と比較して問題数が少ない傾向にあります。その結果、1問あたりの配点が大きくなりがちです。
<採点基準>
算数の場合、答えの正・誤が明確です。途中まで合っていて部分点が出たとしても、計算ミス等によって最終的な答えが誤っている場合は、大きく減点されます。つまり、正しい答えであるかどうかが大きな基準となっています。一方、国語や社会の記述問題の場合は、盛り込むべき要素が入っていればその分の得点は加点されます。例えば、解答に必要な要素が3つある問題では、要素が1つ含まれていればプラス◯点、2つ含まれていればプラス◯◯点、全て揃っていれば満点のように、段階的に部分点が与えられるため、大きな得点差にはなりづらい構造となっています。
中学受験における算数の特徴
中学受験における算数では、小学校で習う基礎的な知識を習得していることが前提で、その知識を組み合わせた応用的な問題が多いことが特徴です。問題文を読み、知識や公式を材料に解き方を予測し、時間内に正しい答えを導く必要があり、理論的に考えて答えに辿り着く力が求められています。このため、公式を暗記していれば解けるような基本的な問題の理解だけでなく、算数に対する本質的な理解が求められます。
このことから中学受験の算数は大人が見ても、一筋縄ではいかないと感じる問題が多くあります。
とはいっても、もちろん入試ですから、受験生をふるいわける目的があります。ただ一方で、「思考力や論理的な表現力を持つ生徒に入学してほしい」という学校側の思いが入試問題には詰まっているということも事実です。
小学校の算数との違い
小学校で習う算数は、主として基本的な知識を教わるため、公式をそのまま当てはめてしまえば答えが導ける問題がほとんどです。このことから、公式を忘れなければ小学校のテストでは高得点を狙えます。
一方、中学受験の算数では、小学校のおさらい問題が出題されるケースはゼロではありませんが、小学校では見たこともない高度な問題が出題されるケースが多いです。
これまで学んだ知識や経験した問題パターンを総動員して最適な解法を選ぶ、頭の中を論理的に整理して自分の言葉で説明する、といった問題が多く出題されています。つまり、算数を根本的に理解していないと正解はできません。
小学校の算数テストは満点ばかりだったのに、中学受験塾で受けるテストで散々な結果になるというのは、そもそも求められている力の設定がそれぞれ異なるからです。
難関中学に合格した先輩は算数をどう克服したのか?
TOMAS合格体験談
中学受験のために早い段階でしておくべきこと
中学受験を念頭においている場合、受験算数の対策として「計算力を身につける」、「算数に対して苦手意識を持たせない」ということが重要となります。特に「計算力」は算数の土台となる部分です。早い段階で土台がしっかりしていると、その土台にどんな応用問題が乗ってきても、あきらめずに問題に取り組む力が育まれます。早いうちの基礎固めが、その後の応用力の育成に繋がっていきますので、第3次中学受験ブームとも言われている現在、こちらの記事を参考にして「先取り教育」を考えておくこともよいことです。
また、こちらの記事では、秋から志望校対策を有利に進めるための夏までに仕上げておきたい小6難関校志望者教科別チェックリストを公開しています。参考にしてみるとよいでしょう。
1:計算力を身につける
中学受験の算数では、論理的思考力や応用力が求められると言いながらも、入試においては最終的に式を立てて「計算」を進めなければ答えにはたどり着けません。このことから、どんな問題であっても、「計算力」が必須の力となります。逆にいうと、「計算力」が身についていれば、それが【様々な問題で有利に働く】ということです。
あなたは子どもに「解き方は合っていたのに、計算ミスしちゃった」と言われたことはありませんか?それを聞いて、「今回は計算ミスで点数を落としたけど、解法はわかっているから大丈夫」という慰めをして、それを言い訳にしていないでしょうか。厳しい言い方とはなりますが「解き方がわからなかった人」も「解き方はわかっていたが計算ミスした人」も、最終的な正答に辿り着けなかったという意味では同じです。【解き方が解っている点数の取れる問題で、いかに計算ミスをしないか】が重要です。
計算力に必要な重要要素は正確さとスピードですが、時間内に計算しきる能力は日頃の訓練で養われていきます。では、計算力に必要な「計算しきる能力」を身につけるにはどのようにすれば良いのでしょうか。
計算力をつける具体的な方法とは?
計算力を身につけるためには、具体的なステップがあります。
第一に、毎日計算(数字)に触れること。ここでのポイントは「毎日」であるという点です。大量のドリルや問題集でなくても構わないので、「毎日」一定量の計算をこなすこと。数字的な感覚は、触れない時間が長くなると勘を取り戻すのに時間がかかります。そうならないために受験当日まで毎日計算することを習慣にしてください。
そして、最初は時間がかかっても「正確に」解くことを意識してください。計算が苦手な子どもに、最初から制限時間を与えて計算させるのはお勧めしません。なぜなら、たくさんの問題を時間内に解こうとすると気持ちが焦ってしまい、計算が雑になります。一旦、その癖がついてしまうと克服するのにかえって時間を要してしまうからです。
ある程度、正確に計算ができるようになれば、次の段階として解答への目標時間を設定すると良いでしょう。自分の計算方法は少し時間がかかるなと感じたら、解答・解説を読んで、計算時間が短縮できる別の方法や工夫がないかを探ってみるのも良いですね。
2:苦手意識を持たせない
算数は子ども達にとって苦手意識を持ちやすい科目です。理由としては、小学校で習う算数と中学受験の算数で乖離があること、苦手な単元に出会ってしまったときに小学生の子どもたちは算数全体が苦手と思い込みやすいこと、解答の途中に式で説明するなどの論理的な思考が求められる問題が多いこと、さらに、一朝一夕では点数アップが難しい科目であることなどが挙げられます。
他方で、算数が好き・得意な子どもたちは、解いていて楽しいという気持ちが表れていると感じます。「算数の問題が解けた→達成感を感じる→自信がつく→楽しい→もっと難しい問題に挑戦したい」というような好循環が生まれていると感じます。
算数に苦手意識をもつ子どもたちは苦手意識を抱えているがゆえに、「算数の問題は見たくない→問題に接する機会が減る」という悪循環が生まれがちです。このことから、まずは解答に無理のない問題から解き始め、問題が解けた達成感を数多く経験させることが重要となってきます。
既に苦手意識を持っている場合は?
では、既に子どもが算数に対して苦手意識をもっている場合は、どうしたら良いのでしょうか。
算数が嫌い・苦手と思っている子どもによくよく聞いてみると、算数全体が苦手なのではなく、「苦手な単元」があることがほとんどです。まずは苦手な単元を洗いだして、その単元を重点的に復習することが効果的です。
苦手な単元の洗いだしは保護者の出番です。通塾している場合であれば、定期的なテストの結果から苦手な単元を把握する、そして塾の先生にお尋ねするのも一つです。また、テキストの答え合わせを保護者が担当することで、子どもの理解や間違えやすいポイントを整理・把握することも可能となります。
加えて、子どもへの保護者からの声かけは何よりも大切です。「算数には苦手意識があるけれど、できるようになりたい!」と子ども本人が1番強く感じているはずです。子どもは言葉にださないのかもしれませんが、その気持ちを受け止めて、子どもが前向きになれるようなポジティブな声かけをしてみましょう。
特に「なんでできないの!」、「こんなのも分からないの?!」というような声かけは子どもが委縮してしまうのでNGです。たとえ思ったとしても「言わない」と決めることが大切です。
効果的な方法として、問題を一緒に解いて「これってどう解いた?」とお子さんに教えてもらう方法もあります。子どもは人に教えることによって知識の定着が図られる効果があるとともに、子どもの自己肯定感も高まります。
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中学受験における算数の重要な単元1
ここからは、つまずきやすい苦手単元トップ5の攻略法をご紹介していきましょう。
中学受験の算数では、幅広い範囲から入試問題が出題されます。
なかでも、【出題割合が高い重要単元】かつ【苦手な子どもが多い単元】である「図形」「割合」「比」「速さ」「つるかめ算」「旅人算」「濃度算」について、効率的な勉強法やコツをお伝えします。
1:図形
図形の単元は、【平面図形】では多角形の角度・面積、相似、面積比、図形の移動、線対称・点対称、円と扇形、【立体図形】では直方体、立方体、柱体、錐体(すいたい)、展開図、を主に押さえておく必要があります。
特に平面図形の問題では、「補助線」を適切に引くことが求められます。【どの場所に補助線を引くか】は問題演習を積み重ねて、いろいろなパターンを自分の頭の引き出しに入れておくことが大切になってきます。
勉強のコツ
図形が苦手なお子さんは、図形を立体や多角的にイメージできていないため、図形を構成している要素の位置や図形どうしの関係性を整理・把握できていないことが多いです。
「図形を感覚的に捉える力」を養っていくと、苦手を得意に変えていくことができます。「図形を感覚的に捉える力」を養うためには、次のような方法があります。
◎図形の問題では、必ずノートに図形を書き写すようにする。
フリーハンドで構いません。自分で手を動かすことで、図形の特徴を体で覚えることができ、図形の問題に慣れることができます。
最初は時間がかかるかもしれませんが、だんだん慣れていきます。図示することに抵抗がなくなれば、今度はただ書き写すだけでなく、問題の条件(「これは正三角形」「この角度は60度だ」など)を意識しながら書くようにすると、理解が深まり問題が解きやすくなります。
◎普段から折り紙や立体物に触れるようにする
展開図や立体図形を苦手とするお子さんからは
- 展開図を頭の中で組み立てることが難しい
- 立体を切断する問題でどのような断面になるのかイメージがわかない
という言葉をよく耳にします。
空間認識能力を養うためには、
- 実際に問題に出てきた図形を自分で折り紙を使って作ってみる
- スポンジを実際に切断してみて断面を確認する
といった経験が大切です。
経験が増えてくると、実際に作ってみなくても、頭の中でその立体を再現できるようになります。一度実際に作ってみると記憶にも残りやすく、応用がきくようになってきますので、面倒と思わずに試してみましょう。
2:割合
割合は、次に説明する「比」にも関連し、中学受験算数ではとても重要な単元です。割合と比の考え方は、入試での頻出単元となっています。
単純に割合と比の文章題だけでなく、速さや図形などの頻出単元に、割合と比の概念が融合した問題として出題されることもあります。
割合を理解するには、分数の考え方を理解していないと進みません。また、割合の問題では、分数や小数の計算も多くあるため、計算が難しいと感じるお子さんもいます。このため、割合が苦手なお子さんに対しては、分数の概念が理解できているか、分数・小数の「計算」に手こずっていないか、をまず確認してみましょう。
次に、割合では、何と何を比べているのか、つまり、「もとにする量(基準量)」と「比べる量(比較量)」をきちんと整理して理解することが重要です。問題に出会ったら、毎回「もとにする量(基準量)」と「比べる量(比較量)」を明確にしてから、解き始めるようにしましょう。
勉強のコツ
「もとにする量」と「比べる量」で頭が混乱する場合には、問題の文章を式に書き換える方法もあります。この方法だと、「もとにする量」と「比べる量」もすぐに判断できますので試してみてくださいね。
(例)
A君の家では、先月の電気代に対して今月の電気代は95%でした。
↓ 割合の表現を小数に直して「倍」をつける
A君の家では、先月の電気代に対して今月の電気代は0.95倍でした。
↓ 掛け算の式に直す。この時、主語(〜は/が)を左側に置く。
今月の電気代=先月の電気代×0.95
「比べる量=もとになる量×割合」の公式に当てはめると
「比べる量」:今月の電気代
「もとにする量」:先月の電気代
となりますね。
また、割合の単元では売買損益、食塩水濃度の出題も多くあります。
売買損益の問題では、小学生にとってはあまり身近ではない用語が出てきます。用語の意味をきちんと理解しなければ、問題を取り違える可能性も高いため、売買の問題が苦手なお子さんはここで用語の意味を再確認してみましょう。
仕入れ値(原価):お店が仕入れた時の値段。
利益:お店の儲けになる部分。
定価:お店がお客さんに売る値段。
売り値:定価より値引きした場合、お店がお客さんに売る値段。
この4つの要素の関係性は式に表すと以下になります。
定価=仕入れ値(原価)+利益
売り値=定価-値引き額
利益=売り値(※)-仕入れ値
※定価で売った場合は利益=定価-仕入れ値
この関係性は用語の意味とともにきちんと理解しておきましょう。
食塩水濃度の問題については、後ほど濃度算の項目で取りあげます。
3:比
中学受験算数で取り上げられる比の問題は、前述の割合とつながっており、割合をきちんと理解することが土台となります。苦手意識がある場合は、分数や割合に一度戻って復習した方が理解が進むことも多いので、急がば回れで試してみましょう。
また、割合・比は、年齢算や旅人算、濃度算、つるかめ算などの特殊算の文章題で使われることが多くあります。比が苦手になると、このような特殊算にも苦手意識を持つことに繋がりますので、早めに克服しておきましょう。
勉強のコツ
比でつまずいているケースでは、実は分数や小数の計算で戸惑っていることが原因の場合があります。分数と小数の計算問題を多く解くことによって、基礎固めをすることも効果的です。
また、比の「計算問題」は解けるのに、「文章問題」になった途端に手が止まってしまうお子さんも多く目にします。「計算問題」であれば、「解き方を覚える→当てはめて解く」ことが可能ですが、「文章問題」になると自分で文章から数式を立てる必要があり、これが苦手で手が止まってしまう状態です。
文章問題から数式を立てるためには、どうすれば良いでしょうか。
効果的なのは、線分図や面積図を積極的に利用することです。文章を図示することによって、文章問題に出てくる要素の関係性の理解が深まります。数式はこの図をもとに立てていけば良いので、問題を読んだらすぐに線分図や面積図を書くように意識しましょう。
比と割合は、中学受験算数では大きな割合を占めるので、上で述べたコツを徹底的に行いましょう。この単元が得意になれば、中学受験算数に対する苦手意識もかなり小さくなるはずです。
4:速さ
速さは入試出題の頻出単元であり、中学校、高校の数学・理科系科目でも必要になってくる重要な単元です。しかし、残念なことに学年が上がるにつれて、苦手意識を持ちやすい単元となっています。主な原因としては、「速さ」の概念をきちんと理解していないことや単位換算で苦戦すること、が挙げられます。
勉強のコツ
「速さ」とは、「一定の時間あたりに進む距離」を意味します。具体的には1秒/分/時間に進む距離であり、単位は秒速(毎秒)、分速(毎分)、時速(毎時)で表します。
距離・速さ・時間の3要素を使った公式で教えられることも多いですが、「公式に当てはめるだけで良い」と理解していると、そもそもの本質が理解できず、問題が解けなくなってしまいます。「速さとは?」を説明できないお子さんは、速さが何を表しているのかをきちんと理解することが大切です。
また、速さの問題では、あえて単位を統一せずに出題されるケースも多くあります。単位を変換する計算方法をきちんと理解しておきましょう。
そして、問われている答えが「分速」なのか「時速」なのか、「km」なのか「m」なのかをきちんと押さえて解いていきましょう。計算があっていても、最終的な答えの【単位】を書き間違えると誤答となりますので、最後まで気を抜かずに確認しましょう。
中学受験における算数の重要な単元2
中学受験の算数では、〇〇算と呼ばれる特殊算の出題が多くあります。特殊算の問題は一見して「この問題は〇〇算の問題だ!」と分からないものが多いです。文章題を読み、どのタイプの特殊算なのかを見極める必要があります。
この見極めには、数多くのパターンの問題を解き、頭の中で分類・整理・蓄積させることが重要です。ここでは、特によく出題される「つるかめ算」、「旅人算」、「濃度算」について、取り組むときのポイントをお伝えします。
1:つるかめ算
つるかめ算とは「ツルとカメが合計で〇〇います。足の合計は△本。ツルは何羽、カメは何匹いますか?」が基本パターンですよね。
考え方としては、種類の違うもの(ツルとカメ)がある場合、全て〇〇だったらどうなるか(つまり、全部がツル/カメだったら足は何本になるか)が解法の糸口となります。
しかしながら、中学入試では問題中にツルもカメも登場しないのが一般的です。
ツルもカメも登場しない「つるかめ算」とは、例えばコインの裏表で点数を競うコイントス問題や硬貨の種類と枚数(金額)の問題、速さの問題などがあります。「これはつるかめ算を利用できます」と問題には書かれていないので、問題文を読んだ段階で「これはつるかめ算を使って解ける!」と見抜くことが重要です。
対策としては、①つるかめ算の基本的な考え方を理解する、②様々なパターンのつるかめ算を解く、③問題を読んだ段階でつるかめ算で解けることを見抜けるよう訓練する、のが良いでしょう。
2:旅人算
旅人算は、速さの問題の1種で、登場人物が複数人(2人以上)でてくるため、問題が複雑で難しく感じてしまいがちです。様々なパターンがありますが、主な分類としては次の4つです。
①2つの地点から2人が逆向きに進み、途中で出会う
②先に出発した人を追いかけて、追いつく
③2人が池の周りを逆方向に回って、途中で出会う
④2人が池の周りを同じ方向に回って、途中で追い越す
この4パターンの解き方のポイントをきちんと理解できるようになると、旅人算を得点源に変えていくこともできるので、しっかりと違いを整理して身につけていきましょう。
どのパターンでも共通する解き方のポイントは、
- 出発時とゴール時の状況を把握すること。
- 時速なら1時間後、分速なら1分後、秒速なら1秒後にどうなっているのかを考えることです。
旅人算では、登場人物が同時に動くので一見複雑に見えますが、ポイント2点をしっかりと押さえて取り組んでみましょう。
3:濃度算
濃度算では、食塩水について出題されます。まずは、食塩水の濃度・食塩水の重さ・食塩の重さの関係を理解しましょう。
基本的な濃度の求め方は、食塩水の濃度(%)=食塩の重さ÷食塩水の重さ×100 です。
この他にも前提として知っておくポイントがあります。
①水を蒸発させた場合、食塩水の重さと濃度は変化するが、食塩の重さは変化しない。
②2種類の食塩水を混ぜた場合、食塩水の濃度は変化するが、食塩水/食塩の重さの和は変化しない。
受験勉強で理科を学ばれている場合は、当たり前のこととして理解していると思いますが、2科目(算国)受験や算数一科目受験の場合は、漏れることのないよう必ず押さえるようにしましょう。
濃度算の問題パターンとしては4つ挙げられます。
①濃度の違う食塩水を混ぜる
②水を加える
③蒸発させる
④食塩を加える
問題演習を通じて、問題の4パターンと解法を身につけ、どのパターンの問題かを判断できるようになりましょう。
複雑な問題になると、「濃度の違う食塩水を混ぜる→水を蒸発させる→食塩を加える・・・」などと操作が複数になります。この場合は複数の操作を、一つ一つの操作に分解して考えましょう。操作前後の食塩水の濃度・食塩の重さ、食塩水の重さを常に意識・整理することができれば、複雑→単純な問題に変わってきます。
濃度算は慣れてしまえば、パターンが決まっていて得点源にしやすいので、諦めずに取り組みましょう。
中学受験の算数の効率的な勉強法とは?
1:基本的な計算問題の正答率を上げる
算数の実力アップを狙うためには、「丁寧さ」と「効率性」を意識することが大切です。
ここでの「丁寧さ」とは、「計算ミスや、問題文の読み間違え、条件の見落とし等を防ぐこと」であり「効率性」とは、「問題の本質を見極めた上で、操作や計算の単純化、時間短縮を図ること」と考えてください。この2つは、単元に関係なく、算数全体を通して言えることなので意識してみましょう。
入試問題は最初の大問で、四則演算や公式を理解しておけば解ける基本問題が並ぶことが多いです。ここで確実に正解をしておき、得点源にしていきましょう。
計算問題でミスしがちなお子さんは、「途中式や筆算は余白を使って大きく書くこと」を習慣づけ、「丁寧さ」を特に意識してみましょう。入試や模試では計算スペースが限られており、ノートのような線がないことも多いので、家庭学習においてもノートや計算用紙を使って、しっかりと途中式を書く習慣をつけておきましょう。途中式があれば、見直しをしたときにどのような考え方で解いたのか辿ることができますし、ミスの傾向を把握することも容易になります。
2:復習を繰り返す
新しい単元を学んだとき、復習はいつ行っていますか?
「翌週の確認テストの前に復習すれば大丈夫!」となっていませんか?
人は何かを記憶するとき
- 一度も復習せずにいると、24時間後には74%を忘れる。
- 24時間以内に復習すれば、10分程度の復習で100%の記憶に戻る。
- 復習の回数が増えるたびに、忘却率が下がり、復習の時間も少なくなる。
という研究結果 があります。
このことを踏まえると、受験勉強では、
- 習ったその日に復習(1回目)
- 3日後に更に復習(2回目)
- テスト前にもう一度復習(3回目)
のサイクルで、少なくとも3回は復習を繰り返し、知識を定着させることをお勧めします。
習った当日に復習の時間を確保することは、最初は大変かもしれません。しかし、ここを怠ると、授業の内容を思い出すことに時間がかかり、結果的に復習の効率が悪くなってしまうため、短時間でも構わないので時間をとるよう心がけましょう。
3:苦手な問題はわかるまで繰り返し解く
苦手な問題や単元を攻略するには、まずは基本問題から着手し、「解ける」感覚を身につけることから始めましょう。「解ける」ようになれば、苦手意識が薄れ、「できる」という達成感や自信にもつながります。このような成功体験を積んでいくことが何よりも大切になってきます。
また、お子さんにとっては、苦手な問題や単元に取り組むことそのものが、とても勇気のいることになる場合があります。「やりたくない」、「後回しにしたい」という思いに打ち勝って、今、取り組んでいるはずですので、保護者さまにおかれましては、問題の正解・不正解に関係なく、取り組んでいる行動自体をしっかりと褒めてくださいね。
算数は、解法を理解するまで繰り返し解くことが大事ですが、闇雲に解くのではなく、問題を解いた後の振り返りが非常に重要になります。
これは、算数の実力アップに必要な「丁寧さ」と「効率性」の両方を伸ばすためのキーポイントです。
ここからは、具体的なケースとして、以下の3タイプに分け、振り返り方法を解説します。
●手も足も出なかった問題
●答えは出せたのに間違えた問題
●正解した問題
手も足も出なかった問題は解説を見ながら解くのがコツ
問題文を読んでも解き方が全くわからなかった問題は、解説を「少しずつ」、「操作ごとに」確認しながらお子さんと一緒に解いていきましょう。
ここでは、「少しずつ」、「操作ごとに」解説を読むことが注意ポイントです。
わからないからと言って、解説を全部通して読んでしまうと、「問題を思考する」ことよりも「解法を暗記する」ことになってしまいがちです。特に、思考力を問う応用問題・発展問題の場合、同じ問題がそっくりそのまま出題されることがあまりありません。このような問題では、次の出題に備えて「解法を暗記する」ことよりも、「思考する」過程や経験のほうが、お子さんにとって何よりも重要です。
では、具体的に、「少しずつ(操作ごとに)」解説を読む方法をお伝えします。
1:わかる範囲で問題文の条件整理をする。必要に応じて、問題文を図や表にする。
2:行き詰まったら、その部分の解説を読む。
3:次の段階に進んだら、その先を自分でわかる範囲で考えてみる。
4:1から3を繰り返す。
注意点としては、解き方が全くわからない場合でも、問題文の条件整理は解説を読む前に必ず行うことです。
条件整理をしておくことで、自分が問題文をきちんと理解できているか、見落とした条件がないのかがわかります。このような作業は、慣れないうちは大変かもしれませんが、地道に積み重ねていくと、大きく実力がアップします。
【問題文の条件整理の例】
- 図形の問題で、自明あるいは求められる角度、長さがないか。
- 問題文を線分図、面積図、ベン図などで表すことはできないか。
- 変化前、変化後の状態がどうなっているか。
間違えた問題は誤答原因を把握するのがコツ
実際に手を動かして答えをだしたのに間違えてしまった問題は、間違えた原因(考え方が違う、または計算ミスなど)を、きちんと把握しましょう。
原因を突き止めるためには、途中式や筆算をたどり、自分の考えの過程を思い出す必要があります。このために、必ず途中式や筆算は消さずに残しておくようにしましょう。
考え方に間違いがあった場合は、見落とした条件等がなかったか、勘違いして覚えている公式等がなかったか、などを掘り下げます。同様に、計算ミスの場合も、小数点の間違いなのか、繰り下がりの間違いなのかなど、どのような計算ミスでつまずいたのかを把握しましょう。
こうすることによって、間違いの傾向が明らかになってきます。自分の間違い傾向(よくあるミス)が分かれば、見直しの時もその点を意識して見直すようになるため、次から同じような間違いをすることが減っていきます。
また、例えば、場合の数や公倍数、公約数の問題のように、複数の解があり、漏れなく数えなければならないような問題では、自分の考え方(数え方)の癖(傾向)を知っておかないと、なかなか正答を導き出せないので、自分の考えの過程をきちんと知っておくことが重要です。
正解した問題も、より良い解決方法がないか確認を
一度正解した問題は、解答を見て正解とわかれば、解説は読み飛ばしがちになります。ところが、実はもっと楽な解き方や、計算が短縮できるような効率的な解法が、別解として記載されていることもあるため、必ず解説に目を通すようにしましょう。
その際には
- 自分の解き方と解説の解き方を比較する
- (余裕があれば)解説の解き方で解き直す
ことをしてください。
自分の解法とは別の方法で解くことによって、一つの問題で複数の解き方を身につけることができ、算数の力が格段に上がります。
また、「手も足も出なかった問題」や「解いたけれど間違えた問題」と比べると、正解した問題の方が、どこから別の考え方で解けるのか、効率化できる箇所はどこなのか、計算が楽になるのはどこからか、などを実感しやすくなるので、面倒と思わずに別解も必ず確認するようにしましょう。
家庭学習のポイント
問題集を使用する場合
家庭学習で問題集を使用する場合に一番大事な点は、お子さんのレベルに合った問題集を準備することです。
特に算数は、習った内容が高学年になるとともに、内容がどんどん積み重なっていく教科です。低学年の学習内容が抜けていれば、高学年で新たな内容を学んだとしても、理解が難しく、知識が定着しません。このことから現学年の学習内容で、理解が不足している単元があれば、必要に応じて、前の学年の問題集でおさらいをすることが大切です。遠回りに見えるかもしれませんが、そうすることによって、結果的に知識は積み重なっていきます。
また、算数の問題集には単元別にまとまっているものもあります。お子さんの弱点単元がわかっていれば、単元別問題集を有効に活用し、補強するとグッと力がついてきます。
また、問題集の活用のコツとして、「問題集は1周解いて、次の問題集に手を出す」のではなく、同じ問題集を繰り返し解いて、解けなかった問題の解法を着実に身につけるほうが算数の力がつく近道となります。
1周目で解けなかった問題にチェックをつけておき、2周目で解法が身についているか確認する、といったように、何度も繰り返し解くことで算数の実力はついていきます。
算数では、①解けなかった問題を把握、②解けなかった問題を自力で解けるようになるまで解く、この積み重ねが大切です。次から次へと新しい問題集に移るのではなく、1冊にじっくりと取り組むことで実力アップにつなげてくださいね。
過去問を使う場合の注意点・コツ
志望校への合格のためには、過去問に取り組み、出題傾向を把握することが必要不可欠です。しかし、
- 志望校が決まっているからといって、早い段階で過去問に取り組むこと
- 過去問の点数に一喜一憂し、解き直しをしないこと
は、過去問の正しい活用法とは言えません。
過去問の取り組み開始時期は、一般的に、単元学習が完了し基礎固めを終えた小6の9月頃からです。
志望校の過去問は最低5年分、可能であれば10年分取り組みましょう。特に算数は、ライバルとの差がつきやすく、合否を分ける科目です。第一志望校は10年分、第二志望校は5年分、第三志望校以降は3年分というようにメリハリをつけて取り組みましょう。
過去問演習では時間を計測し、本番と同様の科目順、問題や解答用紙も本番と同じ大きさの紙を準備して取り組んでください。試験への慣れ、ペース配分、計算スペースなどの余白の把握、集中力持続の訓練など、1回の過去問演習で多くの学びがあります。過去問演習は、時間的にも体力的にもお子さんにはそれなりの負荷がかかります。このことから1回1回の過去問演習を有効活用するように心がけましょう。
過去問を解いた後の分析 、解き直し方法など詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
塾を利用する場合
中学受験に対応している塾は、集団指導塾と個別指導塾の2種類に大きく分けられます。それぞれには特徴がありますが、集団指導塾では、集団の中での切磋琢磨を促すという特徴があります。例えば、成績によってクラスのアップダウンがある(教室の規模にもよる)、テスト成績が公開される(席次が成績順の場合もある)などがありますので、教室内での自分の位置を知ることで、発奮して頑張ることのできるお子さんには向いているといえます。
一方で、集団指導塾では授業の進度についていけなかった場合、一定のフォローは塾が行いますが、それでも追いつかない場合は各家庭に任せられることが多いです。このことから場合によっては、家庭教師または他塾に通わせる等の手段を講じないといけないこともあります。
また、特に算数においては、解き方がわからない場合、塾の先生に質問しないと疑問が解消しません。塾によっては、授業前後の時間帯に算数の先生の前に「質問の列」ができることも。お子さんの性格次第では、そのような環境では質問がしづらい等もありますので注意が必要です。
個別指導塾を利用する場合
個別指導型の塾の中には、「学校の勉強についていくこと」や「学校の成績を上げること」を目的としている塾も多く存在します。中学受験を目指しているのであれば、中学受験ノウハウを持つ個別指導塾を選ぶことが前提です。
また、昨今の急速な時代の変化によって、受験ノウハウも変化しているため、情報をキャッチアップできていないと、「今」の受験の対応についていけません。このことから変化する受験を熟知した優秀な講師が在籍する塾を選ぶことがポイントとなります。
個別指導型の塾の良さには、お子さんの個性(得意科目、弱点分野なども含む)を踏まえたうえでオーダーメイドのカリキュラムを考え、受験まで導いてくれる、という点があります。
これらのことから集団指導塾でありがちな、授業の進度についていけずモチベーションが下がる、苦手科目(単元)は自力で解決しないといけない、わからない問題の質問がしづらい、といったようなことはありません。
個別指導のTOMASでは、次のステップにしたがい、志望校合格を徹底サポートします。
- ① 夢の志望校を決める偏差値だけでなく、校風や教育理念、将来の進路、そして、なによりも、夢やあこがれ、わくわくする気持ちを基準に、妥協のない志望校を選びます。
- ② 合格逆算カリキュラムを作成1人ひとり個別に、百人百様の個人別カリキュラムを作成。生徒の成長にあわせて細かな軌道修正を何度も繰り返し、進化させていきます。
- ③ 完全1対1の個別指導「生徒1人に講師1人」という環境です。講師は専用のホワイトボードを使い、立って授業を行います。発問と解説を繰り返し、理解度を確認します。
- ④ 責任ある担任制で成績を管理本物の個別指導で、2ランク、3ランク上の難関校へ! 多くの生徒たちが、大きな伸びしろをもちながら、夢の第一志望校に合格しています。
- 集団塾に通塾中だがついていけずに自信を失っている
- 個別指導塾に通っているが、成果がでない
- どうしても克服できない苦手科目がある
- 志望校対策の進め方がわからない
- 受験校に特化したハイレベルな指導を受けたい
- 自分の子が集団塾に合っているのか、個別塾に合っているのかわからない
などありましたら、TOMASでは、体験授業や無料受験相談、資料の送付もいたしますのでお気軽にお問い合わせください。
まとめ
中学受験算数の効率的な勉強法やポイントをご紹介してきました。
大切なことは、「ポイントを正しく押さえた学習を地道に」続けていくこと。
成果がすぐに見えなくても、焦らずに、地道に勉強を続けてください。毎日少しずつでも続けていけば、算数は確実に実力がついていく教科です。
また、成績が伸び悩んだり、算数に苦手意識を持っているお子さんにとっては、算数に取り組むこと自体がつらく感じることがあるかもしれません。そんなときは、保護者さまの温かな励ましが何よりの安心感ややる気につながります。成績や点数で口を出すのではなく、まずはお子さんの取り組みを見守って支えてあげてください。
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