おかあさんの参考書
子どものスポーツは「多種類」を「楽しむ」のが大事

子どものスポーツは「多種類」を「楽しむ」のが大事

親野智可等

日本では一つのスポーツを続けることが多い

子どものスポーツについて、日本では次のような例が多いと思います。

幼稚園のときに柔道を始め、ずっと柔道の「道を究める」ために高校生まで続けた。

小学1年生で野球を始め、6年生までずっと続けた。
その延長線上で、自然の流れとして中学・高校でも野球部に入った。

親の方でも、「途中で野球からサッカーに変わったりすると、一つのことが続けられない子と思われて、不利になるのでは?」などと心配する人もいます。

でも、実は、こういう傾向は先進国では唯一日本だけなのです。

例えばアメリカでは、州によって違いはあるようですが、子どものスポーツクラブは3種類以上の種目がそろっていないとクラブとして認められない州が多いそうです。

例えば、陸上と野球とバスケットボール、そして夏は水泳も入れるという感じです。
つまり、マルチスポーツが当たり前なのです。

マルチスポーツのメリット

近年、子どものスポーツについて、さまざまな調査が日本に限らず世界中で行われています。

調査でわかってきたのは、子どものときは一つのスポーツを集中的にやるよりも、多種類のスポーツを経験して(マルチスポーツ)、全身をまんべんなく使ったほうがよい、ということです。

その方が、身体全体の健全な成長だけでなく、さまざまな身体能力の向上につながるというのです。

身体能力と一口に言っても、筋力、瞬発力、持久力、柔軟性、俊敏性、心肺機能など多種多様です。一つのスポーツを集中的にやるよりも、複数のスポーツをやることで、諸能力を伸ばすことができるのです。

また、多種類のスポーツを経験することで、優れた才能を発見できる可能性も高まります。

さらには、人生を通して長くスポーツを楽しむ「生涯スポーツ」の実現にもつながります。
運動やスポーツの習慣は、心身の健康を保つために欠かせないものです。

そして、将来プロのスポーツ選手になったときも大成しやすいということもわかっています。

山梨大学の中村和彦教授がオリンピックのメダリスト40人を調査した研究では、子どものときから現在のスポーツしかやっていないという人はわずかに2人だけでした。

その他の選手たちは、複数のスポーツをしてきていることがわかったのです。
また、小学校時代には1日2時間以上も身体を使った遊びをしていたこともわかりました。

いまだに根性主義・勝利主義がまん延している

もう一つ、日本の子どものスポーツについて気になるのが、いまだに根性主義・勝利主義がまん延していることです。

試合で勝つこと、大会で優勝すること、いい成績を取ること、こうしたことが優先されています。

これではスポーツが子どものためというより、監督・コーチ・学校などの評価を高めることにつながり、子どもはそのための道具になってしまいかねません。

勝つために練習しすぎたり、あるいは厳しく叱られ過ぎたり、または負けたことを責められたりしたことが原因で、スポーツ自体が嫌いになってしまう子も少なくありません。

また、野球でボールを投げ過ぎて野球肘になったり、バスケットボールやサッカーなどをやり過ぎて膝を傷めるオスグッド病になったり、などの弊害もあります。

子どものスポーツは「とにかく楽しくやる」が最優先

世界の先進国では、子どものスポーツは「とにかく楽しくやる」というのが主流です。

その方が、子どもの心身の健全な成長にとってはるかにいいですし、また、楽しかった経験は生涯スポーツにつながり、一生を通じてのメリットになります。

お子さんとスポーツとの関わり方について、このような観点から考えてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

親野智可等
親野智可等
おやのちから

教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。ブログ「親力講座」も毎日更新中。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。

教育評論家・親野智可等 公式ホームページ『親力』


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