おかあさんの参考書
6年生の親の心構えを考える

6年生の親の心構えを考える

鳥居りんこ

入学・進級を迎えた4月も、そろそろ月末。中学受験を目指す6年生は、いよいよ受験学年となり、お母さんたちの悩みも増えてくる時期ではないかとお察しいたします。

今回は、そんな6年生の親御さんが考えておいたほうが良い4つのポイントについて語ってみます。

ポイント➀ 健康管理:特に睡眠不足に要注意

やはり何はなくとも健康が大事。こればかりは受験があろうがなかろうが親の仕事です。
しかしながら、6年生の親はより一層、注意深く、子どもの健康面を支えなければなりません。

健康維持の基本は栄養バランスの取れた食事、適度な運動、十分な休養の3つであることは言うまでもありません。
焦りのあまり、子どもの睡眠時間を削ってまで、勉強をさせる親御さんが現れたりもするのですが、その行為はメリットゼロどころか、マイナスになります。習ったことの記憶定着のためにも、疲労回復のためにも、成長ホルモン分泌のためにも、睡眠は何よりも重要です。

体調を崩してしまっては、受験どころではなくなりますから、親の仕事の一番は健康管理だということを強く認識しておいてください。

ポイント② 時間管理:声掛けで、うまく誘導

6年生は勉強時間も増えてくるのが普通です。もちろん子どもにもよりますが、6年生では平日は3~5時間、休日は8~10時間程度の学習をすることになるでしょう。

しかも、6年生は小学校では最上級生に当たりますので、部活や委員会活動、各行事などで責任あるポジションにつくことも多く、余計に多忙になりやすいです。とても忙しい1年間を過ごすことになるのですが、そうは言っても、タイムスケジュールどおりに自発的に動くことは、まだまだ難しい年齢です。

起床時間、塾に行くタイミング、学校の宿題をする時間、塾の復習をする時間、ゲームを切り上げるタイミング、お風呂、ベッドに入る時間などなど、日々の生活の中での時間の声掛けは親の仕事。上手に誘導できるように、親のほうが賢く振る舞ってください。

特に、ゲームやネット視聴などの余暇時間については悩ましいものがあると思います。6年生になると、子どもを叱っている時間ももったいなくなるものです。不毛な時間を生まないためにも、今のうちから、お子さん主体で日々のタイムスケジュールを決めておく。親は、それに従い「もうすぐ8時だよ」という具合に時間の声掛け誘導をしていくのが理想です。

それには、計画をゆるめに立てておき、うまくいかなかったら、都度、見直すようにしなければなりません。

「わが家流」の時間の使い方と、上手な誘導法を試行錯誤していくことになると思われますが、計画どおりいかないのが、むしろ普通。子どもたちは受験本番が近づくにつれ、本当の受験生に成長していきますので、それまでは親も根気強く、優しい声掛けをし続けてください。

ポイント③ プリント管理:優先順位を決めて「取捨選択」

中学受験生の親の仕事にプリント管理があります。塾の学習プリントや教材のすべてを漏らすことなく解くことができれば最高かもしれませんが、そういう子はいませんし、すべてをやる必要もありません。プリント管理とは「取捨選択」のことです。

例えば、完璧に理解している基礎問題は解く必要はないですし、逆に基礎部分が抜けているのに、応用問題をやっても意味がないわけです。親の仕事としては、子どもの学習到達度を見極めて、学習の優先順位を決めることです。

受験までの時間は限られていますので、「何を勉強するか?」「何をしないか?」は非常に大切です。
苦手な分野は何かを把握し、どの問題を解くのか、解けるようになるために低学年に戻って、その単元を学習するのか、じっくりと取り組めば理解できるのか、単なるケアレスミスなのかなども含めて、攻略法を見いださなければなりません。

ついつい、あれもこれも! になりがちなのですが、それをストップすることが大切です。
どちらかと言えば、やるべきことを削る方向でいくほうが、効果が出ます。入試は7割弱が正答であれば合格するという学校が多いのです。満点を取る必要はありません。正答率が高く、もう少し頑張れば解けるであろう問題を理解する方向にシフトしていくイメージで、模試も含めた子どものプリントと向き合ってください。

もし、優先順位がご家庭で決められないということであれば、プロである塾の先生に相談するという方法もあります。
意外にも「この単元は応用だけでOK!」とか、「志望校には、この問題はマストだから、自宅で対策を」などといった直接的アドバイスがいただけるものです。
塾の先生のサポートもうまく引き出して、「取捨選択」を頑張ってみてください。

ポイント④ 情報管理:「わが子にとって何が大事か?」を軸に

最終学年である6年生にとっては志望校選択が重要です。

ほとんどの中学受験塾では6年生の夏前には入試で必要な単元は一通り終了。天王山と呼ばれる夏期講習から、演習を中心とした学習に移り、9月からの本格的な過去問演習に切り替わります。学習方法も実戦形式となり、入試問題に慣れるという「アウトプット学習」に進化していきます。

このため、秋の段階で最終的な志望校が決まっているほうが、対策が取りやすいのです。
例えば、志望校で出題されやすい単元を、まだ入試までに間がある時期に集中的に学習できるというようなことですね。もし、攻略できれば、それは武器となり、大いなる自信につながりますので、他の学習についても好循環が生まれます。

過去問についても、志望校の過去問題集を入手するなどは親の仕事ですが、人気校は売り切れることもあり得ますし、過去10年分の過去問ともなると、入手にも、それなりの努力が必要ですので、注意が必要です。

さらに、志望校の説明会へのエントリーなども抜かりなく実行しなければなりません。もちろん、説明会出席、出願から合格発表までの一連の手続きの流れなども情報管理の一部になります。ここの部分は子どもではどうにもなりませんので、親の出番です。

口コミも含め、様々な情報が出回るとは思いますが、「わが子にとって何が大事なのか?」「どの学校が合っているのか?」を決められるのは親しかいません。
実際に学校に出向いて確認する、塾の先生に相談するなどもし、子どもの意見も充分に聞いた上で、一つひとつのことを決断して実行していってください。

以上、6年生の親御さんが気をつけるべきポイントをお伝えしました。

多くの小学生にとって、やはり中学受験は大きな試練であり、ストレスです。もちろん、親にとっても相当なストレスになることは間違いありません。
しかし、中学受験は、子どもにとっては一生に一度の経験。来年の今頃、親子で「中学受験、楽しかったね」と言えるような、充実の1年間になるように、できることから一つひとつ頑張ってやっていきましょう。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)など多数刊行。最新刊は『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)

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