おかあさんの参考書
地頭が良くなる生活習慣を考える

地頭が良くなる生活習慣を考える

鳥居りんこ

様々な場所で子育て中のお母さん達からお話をうかがう機会がありますが、ここ10年ほどでしょうか、「地頭」という言葉を頻繁に聞くようになりました。
会話の中で「地頭がいい」というフレーズで発せられることが多いのですが、意味としては、物事に対する理解力や柔軟な思考力を持つ人を指します。

これは、社会が「答えのない時代」に突入したことにより、求められている人物像が学力の高さや知識の豊富さから、問題に対して柔軟に対応できる力を持っている人にシフトしている現実からきていると言えましょう。

もちろん、学力や知識も大切で、ベースがなければ物事に対する応用力も発揮できないということになるので、基礎教養が必要なことに変わりはないのですが、暗記一辺倒でどうにかなった時代は終わりを告げたということになります。

実際、大学入試でも、難関大学になればなるほど、この傾向は顕著であり、答えが決まっている問題を素早く正確に解いていく力よりも、問題に対する理解力や応用力、そして、自分なりの解を見出す力を評価する方向で動いています。
この流れは中学受験にも波及しており「オーバーツーリズムを解決するための方法を考えて書きなさい」(2024年 栄東中学校・社会科)というような「自分の考え」を問う設問が、今はむしろ普通です。

このような時代背景があるために、幼い子を育てているお母さんの中には「何をしたらいいのだろう?」と不安に思っている人もいます。
ある意味においては、〇×がハッキリしている事柄のほうが教えやすく、伝えやすいということがあり、さらには、今のお母さん世代は「自身の考えを述べる」という教育には慣れていないという理由も大きいかと思います。

そこで、どのような事柄に注意しながら、これからの時代の子育てをすればいいのかということを考えてみましょう。

三種の神器は「百科事典・ホワイトボード・重松清」

私はもう長いこと、東大生や医学部生を育てたというご家庭の取材を続けていますが、世間が「不確実性の時代」に入ったとされる頃から、それらのご家庭の共通点のようなものを感じるに至りました。
抽象的な事柄よりも「目に見える物」のほうがイメージを掴みやすいので、ここでは共通する「リビングにある物」を羅列してみます。

拙著の中でも「3種の神器」として、ご紹介したことがあるのですが、それが「百科事典・ホワイトボード・重松清」です。

「地頭がいい」という子のご家庭の多くでリビング学習が取り入れられているのですが、机の上、床、本棚といった、子どもが手に取りやすい位置に、一見、無造作に置かれているのが、百科事典や図鑑、歴史漫画の類です。

ネット環境が整っているご家庭でも、どちらかといえばアナログ。電源いらずで、いつでもめくれ、折ったり、破れたり、落書きしたりも自由自在な「紙の本」が「落ちている」というイメージでしょうか。

母たちにその子の幼少期の話を聞くと「飽きもせず、図鑑をずっと眺めていた」とか「(遊びに)集中している時は声をかけても聞こえない」と答えてくれることが多いです。
そして、ここは真似してみても良いところかもしれませんが、その母たちが言うには「集中している時は邪魔しない」そうです。

ある東大理三生のお母さんが「人間、集中力は最大でも30分。小学生なら15分がせいぜいだから、集中している時の夕飯は15分遅れにしていた」と教えてくれたこともあります。

“三種の神器”のふたつめの「ホワイトボード」ですが、リビングに会議で使うようなホワイトボードがあると答えてくれたお母さんも多いです。

「おやつは棚の中」といった連絡事項もあるのですが、それよりも、クイズ方式で子どもが書いた計算問題に親が解答する、連想ゲームのように家族が順番に単語を羅列していくなど、「母塾/父塾」としてホワイトボードを使って講義をするというよりは、家族のお遊びとしてのコミュニケーションに利用している雰囲気が窺えました。

そして、最後の「重松清」。こちらは、重松先生でなくてもかまいません。要は、上質な物語を紡ぎ出す作家の作品であれば、何でも良いのですが、結果的にその作品が中学受験などの入試問題に選ばれることが多いのです。

これらの文学作品は何となく家の中に置いてあり、親も日常的に読書をしていると答えてくださったお母さんは沢山います。

やはり、人は「読め!」と強要されると読みたくなくなる生き物なのでしょう。
ある医大生の母は「何でもいいから活字に触れさせておきたかった」とコロコロコミックの横に恩田陸を置いておき、子どもには「恩田陸は、君にはまだ早い!」と言いながら親が夢中で読む姿を見せていたといいます。結果、「マンマと自分から勝手に読んでいた(笑)」そうです。

そういえば、子ども向けの新聞を取っているご家庭は多いなぁという印象もあります。
医大生の母が教えてくれたように、活字に触れることは思考を深めることに繋がるのだと思います。

“撒き餌”で、無理なく

このように、暮らしの中で、無理をせずに、気がつくと「知識」を獲得しているという子が目立つのです。
例えるならば、Aという知識とBという知識が、ある日、突然、パズルがハマるかのごとく結びつき、Cという新たな解を発見するというイメージ。

わが子が何に興味を示すのかが読めないので、とりあえずは、自分たち親が「楽しい!」と思うピースを撒き餌のように部屋にばら撒いておき、食い付いたら、そっと応援するというスタンスなのです。
その際には、聞かれたら答えるけれども、指示や命令は控え、子ども自身が「どうしたいのか」「どうすればよいのか」をじっくり考える時間を大切にしていた節が、どのご家庭からも感じられました。

地頭がいいと評価される人は、物事に対しての理解力や応用力が高く、困難に対しても知恵を発揮して切り開いていく力があるといわれていますが、その幹を作るのは、やはり家庭生活が鍵となるようです。

そうそう、言い忘れました。「地頭がいい子」を持つご家庭は、例外なく睡眠時間を大切にしていると答えてくれます。

大谷翔平選手ではありませんが、やはり、睡眠は大事。人間は眠っているときに、知識を整理するという説がありますが、医学部専門というある予備校では、生徒に「家では勉強するな! 睡眠だけは削るな!」と厳命しているそうです。

体もそうですが、脳の成長のためにも、人は充分に眠らなければならないということなのでしょう。成長期である子どもならば、尚のこと。できているご家庭は、そのままに、ちょっと足りてないなと思うご家庭は、まずは、ここから、ゆったりトライしてみてはいかがでしょう。

完璧な親はいませんので、子育て中は誰しもが試行錯誤の連続。いわば、トライ&エラーの繰り返しになりますので、あまり突き詰めて考え過ぎないのも大事なポイント。

親の仕事は、子どもの年齢に応じた、より良い生活習慣をつける手助けをすることでもありますが、ご自身が思う「教育方針」の中で、無理なく、できる範囲で取り組んでみるのが良いかと思います。

上記のようなことが、少しでもご参考になれば、嬉しいです。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)など多数刊行。最新刊は『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)

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