「これからの社会に必要な力は何か」を考える
わが子に身に着けさせるべき能力が従来と変わってきている
第1回目では「幸福曲線と世帯年収」という観点から、わが子への教育戦略を考えましょうという話をしました。
第2回目は、「次の時代に必要になる力」がテーマです。
ご存じの方もおられると思いますが、米Facebook社のCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は次のようなことを語っています。
「AIの進歩は著しく、様々な可能性を模索しているが、現時点で機械にはできないことがふたつある。ひとつは経験のない状況での判断。そして、もうひとつが全く新しい発想をすることである」
つまり、単純作業や膨大な知識の記憶では機械に軍配が上がるけれども、「答えがない」ものに関しては人間の能力に頼るしかない、という現状があるようです。
こういう近未来予想図が出ている今、わが子に身に着けさせなければならない能力というものが、従来とは変わってきていることにお気付きになるかもしれません。
そして奇しくも、わが国では次年度より、「黒船到来」とも「戦後初の教育改革」とも呼ばれるものが本格的に動いていきます。
大学入試センター試験に代わる「大学入学共通テスト」が、2020年にスタートするのです。
国が本腰を入れた教育改革
皆さんのお子さんが大学入試を迎える2024年度には、「大学入学共通テスト」で国語や数学だけではなく、理科や地・歴・公の分野でも記述式が導入され、英語はTOEIC、TOEFL、IELTSなどの民間検定試験に完全移行すると言われています。
さらに、2022年には、学習指導要領も大幅に変わります。
英語は従来の「読む」「聞く」に加え、「書く」「話す」のいわゆる英語4技能が求められるようになります。
社会科では、経済・法律のしくみに加えて、社会保障の現状なども学び問題点を理解する「公共」、18世紀以降を中心に日本史と世界史を関連付けて学ぶ「歴史総合」、全世界が直面している共通の課題と国際協力のあり方などを学ぶ「地理総合」が新設されます。
理数では、研究事例を通して、テーマの見つけ方や発想法、研究姿勢といった基礎を学ぶ「理数基礎探求」や、実際に実験などに取り組む「理数探求」という選択科目が新設されます。
このように、少子高齢化に伴う人口減少、ITの進化にプラスして、国が本腰を入れた教育改革という嵐の中に時代は突入していくわけです。
しかし、私立中高一貫校はかなり前から、こういう時代の先を見越しての教育方針を打ち出しているところが多く存在します。
従来型の知識教育と共同作業やグループワークを使った体験型教育をバランスよく取り入れているわけですが、当然ながら、そのやり方は各学校によって違ってきます。
文科省がアクティブラーニング(主体的・対話的学び)を推進するずっと以前から、私立中高一貫校では伝統的に行っている学校が多く、グループディスカッション、ディベート、プレゼンテーションの機会は頻繁にあることがもはや普通です。
それに加え、「ICT(情報通信技術)」の導入に熱心な学校、国際バカロレアクラスの新設、留学プログラムの充実、海外研修などに代表される、いわゆるグローバル教育に舵を切る学校もあります。
また、高大連携授業、キャリア教育の推進、企業とのコラボ授業など、学校外にも大きく開けて生徒の意識改革を狙う学校など、各学校でオリジナリティのある特色を打ち出しながら、変革の時代を乗り切ろうとしています。
答えのない社会の中で、自分なりの答えを出す力
先述したザッカーバーグ氏が主張する「経験のない状況での判断」と「全く新しい発想」が本当に求められる時代が既に来ているという前提と、18歳人口減少による経営危機意識があいまって、私立中高一貫校の本気度はこれまで以上に上がってきていると、私には感じられます。
これから中学受験を意識するご家庭は、この目まぐるしい変化の時をリアルタイムで体感していくのです。
今は正解がないという問題をどう考え、またどう立ち向かうのかを、親御さん自身がご自分の頭でまず考えてみる、ということが必要になります。
つまり、どんなに時代が変わろうとも、人として身に着けておくべき知識や事柄、つまりリテラシー教育(=literacy:「読み書き算盤」という意味ではあったが、最近では情報、多文化、メディア、コミュニケーションについての知識を操ることのできる能力のことを指すことも多い)をどのラインに求めるのかを、理想論ではなく、生身のわが子を見つめながら組み立てるということです。
総じて答えのない社会の中で、自分なりの答えを出す力が求められる今、どの学校に預けることがわが子の成長に役立つのかを、よく吟味しておかねばなりません。
お子さんを中高一貫校に預けて「失敗した」と感じている親御さんの多くは、中学受験時や入学後に至るまで、自分の頭で考えず、第三者が出してきた数字しか見ていないという傾向があります。
私学は「ファンクラブ」の集いです。
その学校の理念や教育方針に心から賛同している人たちが集まる場所なのです。
数字ではなく、見た目ではなく、学校がどのように子どもたちの未来を考えているか、それがわが家の教育方針とわが子の特性に合致しているかを、冷静に見ていきましょう。
そして、そこで学ぶことでわが子が幸せになるであろうと予感できる学校を選ぶということが、わが子に中学受験を経験させる親の責務なのです。
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