「人生の財産をわが子にどう遺すか」を考える
一貫したテーマ「幸せになるための中学受験」
こんにちは。
私、鳥居りんこと申しまして、長年、中学受験並びに中高一貫校を取材している者でございます。
今回から連載スタートということになりますが、このコラムでは「中学受験を考えだした」、あるいは「スタートを切った」親御さんに向けて、「幸せになるための中学受験」というテーマで綴っていこうと思っております。
おつき合いいただければ幸いです。
すでに、中学受験に駒を進めている親御さんの中には、「毎日がとても辛い。なぜ、こんなに苦しいのだろう?」と思っている方がたくさんいらっしゃると思います。
「この道が果たして正しいのだろうか?」と、何度も何度も自問自答しておられるのではないでしょうか。
私自身、ふたりの子ども(男女)に中学受験をさせたわけですが、想像以上に壮絶な毎日で、こころはジェットコースターのように揺れ続け、こともあろうに、その「偏差値が上がらない」に代表される不安と、「このままでは、どこにも受からない」という恐怖を、肝心のわが子にぶつけてしまう(つまり怒鳴り散らした)という愚か者でした。
「ひとりめはともかく、ふたりめは学習しろよ!」って言われそうですが、残念ながら学習できませんでした……(涙)。
わが子は、学力が身についているかどうかは別にして、学校が終わったあとは残業のように塾に行き、土日もないような生活をはっきり言えば「母のため」にしていたのです。
そのわが子に向かって、「やる気がない」と言って怒鳴る私がいました。
「この子育ては違う!」と思いながらも、降り方すらもわからなくなり、「誰か、止めて~!」「誰でもいいから、“この道が正しい”と言ってよ!」っていう気持ちだったのです(遠い目)。
かつての私は、「負けがこんだ博打」のような中学受験だった
中学受験は一種の魔物でして、一度入ると、なかなか抜けられない迷宮のようなところがございます。
私個人は、「ここまでお金をつぎ込んで、今さら止められるか~~⁉」という思いでした。
私はそういう受験を総称して、「負けがこんだ博打」と呼んでいるのですが、自分のこのダメな経験をお伝えすることによって、少しでも読者のみなさんの受験が「幸せになるための中学受験」になっていくといいなぁ、と思っています。
この連載では、中学受験で幸せになるための基本的な考え方をお伝えしてまいりますが、初回は、子どもの未来のための「幸せの定義」をお話ししようと思います。
年収75000ドルを超えると、幸福度が上がらなくなる
ご存知の方もたくさんおられるでしょうが、2010年に米国プリンストン大学のダニエル・カーネマン教授とアンガス・ディートン教授らが、スウェーデン王立科学アカデミーに発表した実験は、世界中に衝撃を与えるものでした。
年収と幸福度の相関関係について分析したものですが、大雑把に言ってしまえば、年収75000ドル(当時のレートで600~700万円程度)が「幸福度」の分岐点になるというものです。
年収がこの金額以下では、「収入」と喜びや満足感といった「幸福度」を示す感情は比例するにもかかわらず、この金額を超えると数値が上昇しなくなるというデータが示されたのです。
「お金を持てば持つほど、幸せになれる」というのは、一種の幻想かもしれない、ということでしょうか。
逆に考えれば、子どもが独立して家を構える壮年期後半から中年期にかけての、親が望む子自身の年収ラインが、現在では世帯年収で700万円が基準になると捉えることもできるわけです。
この「年収」や「幸福度」をどう考えるかで、私たちの子育ての戦略も変わってきます。
子どもには、働かなくても一生食べていけるだけの現金を遺す、というのもアリかもしれませんし、不動産としてたんまり相続させるのもアリかもしれません。
子ども自身に経験値を積ませるために、例えば中学生の段階で海外留学を選ぶということも考えられるでしょう。
実際、子どもと一緒に世界中を旅することを実行しておられる方もいます。
幼いころから「これ!」という習い事を、一心不乱に、それこそ一家を挙げてやっておられる方もたくさんいます。
また、私たちのように、「知識と知恵は誰にも奪われない」という信念のもと、「勉強すること」を「よし」として中学受験に踏み切る家庭もあるわけです。
わが子に身に着けてもらいたい最低限度の教養を、どのラインに持って行くのか?
子育てにお金をかける・かけない、また、何にどれくらいお金をかけるかは、そのご家庭の判断ですので、それによいも悪いもありません。
しかし、わが子に身に着けてもらいたい最低限度の教養をどのラインに持って行きたいのかは、中学受験に踏み切る前、あるいは最中に、一度、ご夫婦で確認しておくことをおすすめします。
ここでご夫婦の意見が一致していないと、子どもは左右から手を引っ張られる状態になり、混乱してしまうからです。
子どもが望めば大学まで行かせたいのか、その資金は提供可能か、どういう学び舎がわが子に向いているか、わが子の向き・不向きは何かなど、それらすべてに「無理」がないかを検討することも必要になるでしょう。
この「600~700万円」という数字がひとつの基準となるのであれば、それをひとりで稼げるだけの教養をつけるのか、それとも世帯年収で考えるのかにもよって、わが子に提示していく道も違ってきます。
わが子の「生きる力」をどうつけていくのかを真剣に悩むことが先で、偏差値がだだ下がりだとか、この程度の学校では費用対効果に合わないなどと嘆くことは、長い目で見ると意味がないのです。
「幸せ」のあり方は個人で違うことは明白ですが、中学受験は義務ではない以上、「親心受験」になるわけですから、この「親心」をどのような戦術を使って、お子さんの幸せに繋げていくのかを、これからご一緒に学んで行きましょう。
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