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塾の夏期講習は本当に必要かを考える

塾の夏期講習は本当に必要かを考える

鳥居りんこ

今頃は塾での夏期講習の申し込みが始まっていることでしょう。塾から「夏休みは受験生の天王山。夏を制する者が受験を制す!」と鼓舞される時期でもあります。

中学受験を目的とした塾の場合の夏期講習日程はとても長く、平均すると25日間ほどになるのが普通です。受験学年である6年生ともなると、その拘束時間は朝から晩までに及ぶのも特に珍しい話ではありません。

大手の進学塾で推奨される勉強時間は、6年生ともなると夏休みは1日あたり約10〜13時間。もちろん、これは塾にいる時間も含まれますが、それにしてもこの勉強量は大学受験並みですから、相当多いと言えます。
これを是とするか否かは各ご家庭の判断になりますが、中学受験を経て進学校に進もうとする場合には、この数字はむしろ当たり前とされている現状があります。
やはり、塾が言うように夏休みの過ごし方が合否を左右するというのは当たらずとも遠からず。学校がない時期に勉強時間を確保して、しっかりと知識を定着させることで実力がグッと上がるというのも、また事実なのです。

塾の「この夏をどう過ごすかが合否を分ける!」というご指導をプレッシャーに感じる保護者の思いは複雑です。受験のためとは言え、本来は楽しい夏の思い出を作れるはずの夏休みを勉強漬けにしてしまうのも抵抗がある、さりとて塾の方針に逆らう勇気もないという狭間の中で揺れやすくなるのです。よって「塾の夏期講習は本当に必要なのか?」と悩む保護者は多いかと思います。

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夏期講習の5大メリット

こういった状況を踏まえて、まずは夏期講習に行くメリットをお話ししましょう。メリットは主に下記の5つになるかと思います。

① 1日の使い方にメリハリが出る

最近の夏は特に暑いですから、何となくやる気が起きずにダラダラと過ごし、気付けば夜になっていたということは大人でもよくある話です。仕事があるから仕方なくでも会社に行き、業務をこなしているうちにエンジンがかかるという人も少なくないかと思われます。

それと同じで「塾」という場所でカリキュラムをこなす「タスク」を持つことで、1日の中でこの時間は学ぶ・この時間は休むというメリハリを付けやすくなります。

夏休み前までの子どもは、学校と塾のタイムスケジュールをこなしていたはずですので、いきなり「何もない」という毎日にしてしまうよりは、ある程度は規則正しい毎日にしたほうが受験対策という意味では成果が出やすいでしょう。

② 学習時間の確保

①で語ったように、学校がない夏休みは生活リズムが乱れやすくなるので、時間割が決まった夏期講習を軸にすることで生活が整えやすくなるのがメリット。同時に、半ば強制的にでも学習時間が確保できるのも大きいといえます。

やはり、人間は弱い生き物ですので、楽なほうに転びやすいのですが、カリキュラムで「この時間は算数の比をやる時間」と決まっているとやらざるを得ない環境になります。「学習するのは当然」という習慣化が、合格への大きな鍵になることもまた確かなのです。

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③ 苦手単元の復習ができる

夏休みの大きなメリットのひとつに「苦手単元の克服」があります。
多くの塾は夏期講習を総復習のためのカリキュラムに充てています。6年生になると1学期の終わりには一通りの学習を終えていますので、夏の間に抜けている単元を埋めていくという意味で行うのです。

塾の先生もこのことは熟知されているので、多くの子たちが苦手とする分野に関しては丁寧に指導していくはずです。

このように夏期講習はわが子の苦手分野を掴み、得意にならずとも“人並”といえるところまで持っていける絶好のチャンスになります。
もし、ここで「解った! できた!」という「知の扉」を自力で開けられたという体験ができれば、それは「やる気スイッチ」のボタンを押したも同然。時間がある夏休みに、ゆっくりと確実に「穴の修復」をしていき、自信を付ける夏にできたらしめたものです。

④ 塾で友人たちと触れ合える

今の子どもたちは受験しようがしまいが忙しいのがむしろ普通ですから、夏休みともなるとなかなか、友だち同士で遊ぶということも難しいようです。
しかし、塾に行きさえすれば、そこには友だちがいますから、休み時間などで交わす会話は貴重なコミュニケーションとなります。「塾が楽しい」という子どもたちの多くが「友だちと話すのが楽しい」と言います。
塾は勉強だけの空間ではなく、子どもたちにとっての楽しい社交場という役割もあるのです。

⑤ 皆で頑張るという気運に触発される

進学校や中学受験塾の先生たちがよく口にする言葉に「受験は団体戦」というのがあります。
周囲の友だちの頑張りが刺激になり「一緒に皆で合格しよう!」というムーブメントが起こりやすいという意味で使われます。ライバルという存在が「自分も負けられない」という気持ちにさせ、共に頑張るという相乗効果を生むそうです。
ひとりでは挫折しそうなことでも、皆で取り組めば乗り越えられるというのは、教室では「ある・ある」なのだそうです。

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わが子に合った“わが家流”で夏期講習を使う

以上5項目を挙げました。
それならば、「塾の言う通りの講座を受講したほうがいいのか?」という気持ちになるかもしれませんが、申し込みの前に一旦、冷静になって「わが子に合った夏の対策」を考えることをお勧めします。デメリットも当然あり得るからです。デメリットとして、よく指摘されるのがこちらです。

「量が多過ぎて消化不良になりやすく、結局、身につかない」

先述しましたが、6年の夏ともなると朝から晩までの講習+大量の宿題となるケースは稀ではありません。子どもによって、このやり方が合う・合わないが当然、出てくるわけです。

夏期講習の間中、長時間、塾に籠っていれば合格するという話ならば、親たる者、喜んで行かせたくなるというものですが、そうではないから難しいですよね。

言葉を選ばずに言うならば、中学受験塾はビジネスです。よって特に通塾生には一律に必須講座と称して、当然のように受講申し込みを呼びかけます。塾によってはさらに「おススメ」として単科講座を推奨するでしょう。ここで塾の言いなりになっていないかを一旦、冷静に考えることも必要です。

もちろん、受講料もそれなりにするので家計にとっては大問題になるのですが、それよりも問題なのは、わが子にとって体力的にも精神的にも「ツーマッチ」にならないかです。
「おススメ」だからといってあれもこれもと受講してしまうと、子どもはパンクしかねません。それこそ“お客さん状態”になって、ただ座っているだけになると本末転倒。わが子にとって本当に必要な講座なのかを吟味して厳選するのは親にしかできないことです。

子どもともよく話し合いをして、夏休みに何を重点的に仕上げていくのかを検討してみてください。本当に必要な講座なのかをよく見極めて受講するほうが実力は上がります。

さらに、親は「塾に行っているから安心」と思いがちなのですが、これは危険な発想です。「塾に行きさえすれば何とかなる」という考えは、ややもすると自宅学習や復習の計画が抜け落ちてしまう可能性があります。受験には講義↔復習の両方が必要です。

夏期講習は受験のための頼もしいペースメーカーになりますが、「夏の時間をどう設計するか」が本質です。それには、やはり「わが家流」が大切です。

競争で燃えるタイプであれば、集団塾の夏期講習を軸にし、自宅学習で復習していく方法もありですし、マイペース型のお子さんであれば夏期講習は午前中のみにして、午後は自宅、あるいは個別塾等で講習の復習と宿題の時間とする。さらに夜は暗記系や過去の単元の小テストの振り返りに充てるというほうが好循環になるケースもあります。
小6から受験に参入したというように学習習慣がまだ弱い場合であれば、短期間のみ通うなどの方法で「勉強のリズム」を作ることに主眼を置くのも有効です。

まだまだ受験勉強が始まったばかりである小4・小5の子どもについては、学習習慣を崩さないという目標を持つことが重要ですので、全部を受講するというよりは主要科目+弱点に絞り、家庭での夏を謳歌するというのも「有り」です。
家族の時間は子どもが中学生になると思うようには取れなくなるのがむしろ普通なので「お盆休みだけは勉強から離れてリフレッシュする!」でもOK。これもとても大事なことだと思います(蛇足ですが、自然と触れ合うなどといった実体験ベースの入試問題はとても多く出題されているのです)。

受験学年の小6生については、多くの大手塾が夏期講習を「前提」としてカリキュラムを組んでいるので、先ほど申し上げたことに留意しながら、わが子のメンタルと体力に応じたコマ数で調整してみてください。

このように大切なのは「夏期講習そのものよりも使い方」です。充実の夏を過ごすべく、各ご家庭で無理のない範囲でわが子に合った計画を立ててくださいね。
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著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)、『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)など多数刊行。最新刊は、取材・執筆を担当した『黒い感情と不安沼 「消す」のではなく「いなす」方法』(やまざきあつこ著・小学館)。

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