


終身雇用ではなくなった時代に 「続ける経験・やり通す経験」だけでいいのか?
子どもが何かをやめたいと言ったとき(習い事・塾・部活・学校など)、「やめさせたくない」と思う親御さんが多いようです。
理由は「やめ癖がつくのでは? 困難から逃げる癖がつくのでは?」と考えるからだと思います。さらには「大人になってから仕事を転々と変わるようになるのでは?」と、先々のことが心配になるということもあるかもしれません。
日本には、以前から、一度始めたことはやり通して道を究めることが美徳という価値観が根強くあります。また、これまで企業などによる終身雇用制が長く続いてきたという事情もあります。
そうした価値観の中で今の親世代は育てられました。ですから、無意識のうちに「続ける=美徳」「やめる=逃げる=不徳」という思い込みがすり込まれています。
戦略的に撤退する能力は必要
でも、長い人生を生き抜いていくためには、やめたり逃げたりすることが正解になることもあると思います。というのも、世の中には、困難からうまく逃げることができずに、抜き差しならない状態になっている大人もたくさんいるからです。
ですから、適切なタイミングで戦略的に撤退(やめる・逃げる)する能力も必要なのです。つまり、「これは無理だ。自分には合わない。このままでは自分は大変なことになる」と思ったら、ちゃんと逃げたり拒否したりできる能力です。
そのためには、子どものときからそういう経験を何度かしておくことも必要です。失敗の経験が大事なように、やめる経験・逃げる経験も必要なのです。それが自分を守るためにNOと言って逃げる訓練になります。
「やめる経験」は適性を知る貴重なデータ
もう1つ留意しておくべき大事なことがあります。
「途中でやめてはいけない」という呪縛が強すぎると、子どもは「一度やり始めたら簡単にはやめられない。軽い気持ちで始めるのはやめたほうがいい。最初から絶対に失敗しない無難なことしかやらないでおこう」と考えるようになるということです。
これは非常にもったいないことです。チャレンジの機会が減るからです。
逆に「やってみて違ったらやめてもいいんだ」「合わなかったら別のものを探せばいいんだ」という心理的な安全性が確保されていれば、新しいことに積極的にチャレンジすることできます。
そうすれば、自分が本当に好きなものや向いているものに出会える可能性が高まります。こうしたチャレンジの機会を増やすためにも、「やめる自由」を保証することが不可欠です。
そして、「やめる経験」を自分の適性を知るための貴重なデータ収集の機会と考えればいいと思います。「やめる=失敗」ではなく、「自分にはこういうのは合わない」という自己分析データを一つ獲得したということです。
いろいろな習い事や部活を「お試し」してはやめる経験は、自分の好き・嫌い、得意・不得意を知るためのリサーチ期間と考えましょう。最初から自分に合うものに出会える確率など、ごくわずかしかないのですから。
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親御さんたちがアップデートを
これからの時代は、AI技術の急速な進化とそれに伴う社会構造の激変が確実です。
人々の価値観や生き方も大きく変わり、万事において多様性と流動性が高まります。
就職とか仕事とか働き方などのあり方も大きく変わります。
今の子どもたちは、そんな時代に生きていくことを運命づけられています。親御さんたちが従来の価値観や無意識の思い込みに縛られていると、子どもたちの足を引っ張ることになります。ですからアップデートが必要です。
余談になりますが、私は、子どもたちや若者たちの方が、敏感なセンサーと無意識の動物的本能によって、いろいろな面で来るべき時代の生き方に適応しようとしているのではないかと思います。
子どもたちがゲームに熱中したりするのも、不登校の子どもたちが増えたりしているのも、そのひとつの表れではないかとすら思えます。
“損切り”して、次に向かおう
ここまで書いて、親御さんたちが「やめさせたくない」と思ってしまうもう一つの理由があることに気づきました。それは、今まで費やした時間やお金(サンクコスト)に執着してしまうからです。
でも、このサンクコストに執着して傷口を広げてしまうことは、ビジネスや投資の世界でも最も気をつけるべきことのひとつと言われています。「これは違う」と判断したらすぐに“損切り”して次に向かうことが大事なのです。
損切りができないビジネスマンや投資家は、結局大損してしまうことになります。
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