塾の掛け持ちを考える
今年の首都圏の中学受験率は少子化が進んでいるにもかかわらず、過去最高を記録しました。近年では一般家庭での関心も高く、大手メディアでも日常的に「中学受験」が発信されているのはご承知のとおりです。
そうなると、自然と目につくことにもなりますので、就学前、あるいは低学年のお子さんを持つご家庭は「わが家はどうする!?問題」で悩まれることもあるのではとお察しいたします。
「受験すると仮定して、何を考えるべきかも分からない」というのは、むしろ普通ですので、考える一歩として、今回は「塾の利用方法」、中でも「個別指導塾」についてお話ししてみたいと思います。
集団塾から個別指導塾への「転塾組」
中学受験は当然のことながら入試ですので、その試験をクリアするための対策が必要になります。
その対策方法としては、大まかに分けると次の5つになるかと思われます。
1)参考書や教材等を入手し、自宅学習で頑張る
2)通信教育やインターネット学習で実力をつける
3)中学受験塾(集団塾)を利用する
4)個別指導塾を利用する
5)家庭教師を利用する
今や「塾なし中学受験」という言葉もあるくらい、1)と2)のような家庭内学習だけで入試を突破するお子さんも存在しますが、やはり少数派。ほとんどの人たちが塾を利用していますし、その中でも、3)の中学受験を専門とする塾を選ぶ人が多数派でしょう。
4)や5)のみで頑張っていくケースですと、「受験を決めたのが遅かった」(中学受験のスタンダードは新4年生になる2月スタートとなることが多いです)、「大手塾では習い事との両立が難しい」などといったことが挙げられますが、目立つのは、中学受験塾からの「転塾組」というケース。つまり、通っていた塾や先生の方針と合わない、成績が伸びないなどの理由で、中学受験塾(集団塾)から移動ということが多いようです。
集団塾は、教室の子どもたち全員に向けての一斉授業です。難関校狙いのクラスになればなるほど、その授業は成績上位2割に照準を合わせて進められるともいわれています。
この指導法は、学習能力が高い子にとっては、さらに成績が伸びていくという好循環につながりやすいのですが、そうでない場合は、たとえ問題が理解しきれていないとしても、授業自体はフルスピードで進んでいくので、取り残される危険性があるわけです。
特に、算数は積み重ねが大切な科目ですから、わからない問題を放置してしまうと、この積み重ねが上手くいかず、成績が伸びづらくなってしまいがちです。そうなると、人間、やる気が出なくなるのは大人も子どもも同じですよね。
せっかく塾に行っているにもかかわらず、座っているだけの、いわゆる「お客さん」になってしまうのは親としても切ないところです。
先述しましたように、その場合は次の選択肢として、個別指導塾を意識するご家庭も沢山あります。
個別指導塾というものは、その名のとおり「パーソナル」に指導してもらえることが、一番の特徴になります。
運動選手がパーソナルトレーナーの指導を仰ぐがごとく、コーチ役である講師との1対1の完全マンツーマンスタイルとなることが多いのが個別指導塾。学習プランを子どもの学力や志望校に合わせてオーダーメイドで作成できることが強みになります。
自分の不得意な分野、あるいは志望校対策をピンポイントで対応してもらえることは、何よりのメリット。先生は自分の専属という存在になりますから、信頼関係ができやすく、志望校合格までのペースメーカーの役割を担ってくれる場合もあります。
先生と合わない場合は、基本、何回でも講師の変更がきくので、その点でも安心感はありますね。
この指導方法がわが子にピッタリとハマった場合は、成績が伸びていきます。実際、「集団塾では疲れ切った顔をしていたのに、楽しそうに個別塾に行くようになった」とおっしゃるお母さんは少なくないです。
これらが1)~5)を単独で利用して志望校合格を目指す方法になるのですが、4)や5)の場合、大手塾に在籍しながら、Wスクールのような形で利用する人たちも沢山おられます。
(小学校もありますから、厳密に言えばトリプルスクールになりますね。)
集団塾と個別指導塾の“良いとこ取り”も一案
要は、集団塾(大手塾)+個別指導塾、あるいは集団塾+家庭教師という掛け持ちをしている子も珍しくないという話です。
個別指導塾というと、「集団塾について行けない子の補習のための塾」という位置付けをされている方もいるかもしれませんが、今は、難関校狙いの子どもたちの利用も多い場所であります。
もちろん、費用もその分上乗せされてしまいますが、Wスクールのように塾を掛け持ちしている子どもたちは、集団塾と個別指導塾のそれぞれの“良いとこ取り”をしているのです。
あくまで、ベースは集団塾に置きながら、個別指導塾を上手に利用するわけです。
例えば、そこで集団塾の課題をこなす。どうにも解らない時には、横に先生がいるので、理解が早くなるという利点が生まれます。
あるいは、「割合と比」に苦手意識があるといった場合に、その単元をイチから学び直し、自分のものにすることができる。さらには、集団塾での振り返りテストに向けて、対策を講じることができるなど、集団塾の講義に対応できるだけの実力を蓄えることが可能になっていきます。
中には、得意科目をさらに伸ばすために個別指導塾を利用するケースもあります。
科目によって得意・不得意が極端に出る場合、集団塾のクラス分けは総合点で決まることが多いため、不得意科目に合わせたクラスの授業ですと、稀ではありますが、得意科目の授業が退屈に感じることがあるようです。
その時に、個別指導塾を利用して、先に先に進むことも可能になります。
また、個別指導塾は、志望校の過去問に特化した対策を練ることにも長けているので、不得意分野を解消するだけではなく、得意分野でさらに加点することに力を入れるケースもあります。
要するに、個別指導塾にはフレキシブルな対応を求めることができるわけです。
そういえば、先日、サピックスでのアルファゼロ(入塾からずっと最上位クラスであるアルファ1クラスをキープすること)を目標に、個別指導塾にも席を置く子の母に話を聞いていましたが、彼女がこのようなことをおっしゃっていました。
「息子が、私がそばにいると、うるさいからやる気が失せるって言うんですよ。
自分のペースで勉強したいから、個別に行く! と言い出して…。
特に何も言ってないんですが、私の体から“大丈夫?オーラ”が出てるらしく、それが嫌なんですって。
正直、お安くはないので大変ですけど、まあ、私もラクですし、家庭内の平和のためなら仕方ないですね(苦笑)」
「なるほど! 個別指導塾は親の負担削減と家庭平和に一役買っているのか!」という新発見をした次第です(笑)。
お話してきたとおり、近年では、集団指導塾に加え、個別指導塾を併用する人も多くなってきました。ただ、中には思うような効果を生まないケースもあります。
山あり谷ありの中学受験は長丁場です。勉強は負荷をかければかけるほど伸びるわけでも、塾での拘束時間を長くすればするだけ偏差値が上がるわけでもありません。
親は、子どもの様子をよく観察しながら、受験勉強に伴走しなければなりません。
集団塾と個別指導塾をWスクールのような形で利用するならば、子どもの心身のストレスを軽くするための併用になるように、注意してあげてくださいね。
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