たとえ残念な結果であっても、置かれた場所で咲いてみる
今年度の中学受験もほぼ終了。「百聞は一見に如(し)かず」とは言いますが、実際にわが子の受験を経験すると、「自分の受験よりも疲れた」と感じた親御さんは多いことでしょう。
第一志望校合格で満面の笑みで受験終了となれば、疲れも癒えようというものですが、今や第一志望校に合格する子は3割とも言われる時代。「努力は裏切らない」という言葉に裏切りを感じているご家庭も決して少なくありません。実際、受験から、数週間が過ぎてなお、ふさぎこんでいるお母さんが沢山いるのが現実です。
悔しい思いをした子は「打たれ強い」
しかしながら、私個人は「人間、一度は番号がない合格発表を見たほうがいい」派でして、人生という長い目で見ると、やはり「努力は裏切らない」ものだなぁと思っています。
それどころか、12歳での悔しい体験は一生もののような気さえしています。
それというのも私は、もうカレコレ20年以上、中学受験のアレコレを見聞きしているので、ありがたいことに、様々な人たちのビフォー・アフターを自然と知ることができるようになりました。
その経験から言わせていただけば、中学受験で悔しい思いをした子のその後の人生は「打たれ強い」という印象を持っているのです。
不本意入学者を早期に立ち直らせることから「再生工場」の異名を持つ学校の先生は、こう教えてくれました。
「確かに本校は、入学者のほとんどが第一志望ではなかったかもしれません。最初は挫折感でいっぱいかもしれませんが、それも数日のこと。僕らはプロなんでね、絶対に生徒に後悔はさせませんよ」
このように「後悔させない」と教師陣が口を揃える学校は多いです。
ある学校の校長先生は入学後はじめての新入生保護者会で、こうおっしゃいました。
「お子様をお預かりしたのもご縁あってのこと。絶対に後悔はさせません」と。
ご来席のお母さんたちがハンカチで目元を拭っていた光景は忘れられません。
トップオブトップと呼ばれる学校以外は、「不合格」という悲しい通告を受けた生徒が入学する場合があります。「頑張ったけど、報われなかった」という結果を12歳で受け止めて春を迎えた子たちです。
このような中高一貫校では、教師陣も、先輩たちも、そして同級生も、その12歳の痛みを肌で知っているのですね。私は、ここがたまらなくいいなぁと思っています。
痛みは痛みとして受け止めるけれども、その傷は、グチュグチュ期を過ぎ、かさぶたとなり、やがて、必ず、新しい皮膚が生まれてくる。「人にはこういう再生のサイクルがあるから、急がない」という空気を学校全体から感じることが多々あります。
長い目で未来を見つめよう
先ほどの「再生工場」出身の大学生が話してくれたことがあります。
「僕らの先生は本当に僕らのことを支えてくれました。そのことも影響して、ごく自然と『大学くらい、第一志望に行こう』って決意しました。自分は残念組で入学しましたが、今では、逆にこの学校で本当によかったと思っているんです」
彼は、大学受験では念願かなって、第一志望校である超難関大学に通っています。
その学校の先生方が口を酸っぱくしておっしゃる「『自分の得意分野で社会に貢献しろ!』という教えを実行できそうな学部に進学した」と語る彼の笑顔が印象に残っています。
今、長い間の努力が報われず、意気消沈しているお母さんがおられるとしたら、ぜひ、長い目で未来を見つめてほしいと思っています。
私の持論ではありますが、子育ての結果は子どもが30歳くらいになって、ようやく分かるものです。しかも、中学受験が本当に良かったかどうかなんていうものは、親には一生分からないかもしれません。そのジャッジは子ども自身がするものですし、30歳も過ぎた子たちは、もはや年を取った親には、気を遣って本音を口にできないかもしれませんから(笑)。
今、残念感満載のお母さんは無理に立ち上がらなくてOK。急に立つと立ちくらみを起こしますから、ゆっくり、ゆっくりですよ。
ボーっとしながらでも、「そうだね、賽(さい)は投げられたのだから、今度は置かれた場所で幸せになればいい。あの子には、その力がある!」と自信を持っていいですからね。
なぜなら、あなたが手塩にかけて育てたお子さんだから、「めげない」力は人一倍でしょう。人間、本当に欲しい力は、これかもしれません。
極論するならば、親に出来ることは、いつの日も、ただひとつ。わが子の幸せを祈ることだけ。中学受験に参入したのも、わが子の幸せを願ったからですものね。
これからも、親に出来るのは、ただ祈ることだけです。「幸せな人生を歩めますように」「わが子が自分の翼で社会に羽ばたいていけますように」と。
さあ、桜の花が咲く頃には、残り6年間しかない子育てを思い切り楽しむ準備を始めていきましょう。
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