大学入試から、未来を予想してみる
今年度の中学受験も本番に突入しております。東京・神奈川入試も目前です。
一方で、中学受験の世界では2月が年度替わりに当たるので、来月はもう新年度となります。ここにきて、中学受験を真剣に検討するご家庭もおありでしょう。
今回は、中学受験に参入しようか迷っておられる方と、既に受験は決定事項ではあるものの、ひとつ上の学年に進むにあたって、いろいろと悩みが生じている方に向けて、この時期だからこその「中学受験の未来予想」をしてみようと思います。
未来を予測するには、今を見なければなりません。まずは、大学受験から見た直近の様子をお話ししましょう。
求められるのは、ペーパーテストでは測れない能力
文部科学省が公表した「2023年度(令和5年度)国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」によると、2023年度入試は、志願者数、入学者数ともに前年度(2022年度)より減少。一般選抜(一般入試)も同じく減少する中、大学の総合型選抜(旧AO入試)の入学者数は4年連続増加となっています。
大学全体で見ると、一般選抜(一般入試)の割合はほぼ半分。総合型選抜の割合は約2割を占め、学校推薦型選抜を含めると、いわゆる年内型入試は50.3%。私立大学の場合は、さらに比率が上がり、年内入試による入学者数は全体の6割弱という数字が出ています。要するに、一般入試よりも、推薦入試と呼ばれる各種選抜方法で入る大学生が多くなっているということです。
これは少子化の影響を受け、多くの大学が早期の入学者確保という観点から、総合型選抜や学校推薦型選抜の募集枠を拡大し、合格者を増やす傾向があるからなのですが、今後も、この流れは続くと見る識者は多いです。
さらに付け加えるならば、企業も、上からの命令を忠実にこなすのではなく、自分で考えて行動できる「自立型人材」を欲しがる意向が強くなっていることで、大学側もそれに呼応するかのように、より積極的な学生を選ぼうという方向にシフトしているのです。
実際、学業成績基準を設けない受験の代表格であったAO入試は消えつつあり、学力を担保した上で総合型選抜を突破するような「従来のペーパーテストでは測れない能力」を持った学生が求められているという現状があります。
当然、多くの大学の総合型選抜では、大学入学共通テストを受験した上で、各大学が定める一定以上の成績をとることが大前提。AO入試と呼んでいた時代とは様変わりしているのです。
要は、ペーパーテストができた上にプラスして、何かに秀でた功績が必要というわけです。
中高一貫校は当然ながら、この動きに敏感でして、これまで以上に自校の特徴をより鮮明に打ち出しています。
「塾歴社会」の中で、しっかり学力を身につける
中高一貫校を「大学受験」という観点で大雑把に分けるならば、東大を代表とする一般選抜が主流の学校(難関男子校・難関女子校に多いです)、海外大学も含めた総合型選抜に力を入れている学校(国際系と呼ばれる共学校に多いです)、「学校推薦型選抜(公募制)」や「学校推薦型選抜(指定校制)」が多い学校(女子校に多いです)、大学附属校(下記のように3種類に分かれます)の4つになります。
大学附属校は、主に「附属校(高校卒業生の70%以上が系列大学に進学)」、「半附属校(30~70%未満が系列大学に進学)」、「進学校(30%未満が系列大学に進学)」に分かれます。
一口に大学附属校と言えど、内部進学基準や人数は各校によって異なるのが特徴。大抵の大学附属校では、希望通りの学部に進学できるかどうかは校内成績次第ですし、推薦基準があるので、系列大学に行けないというケースも少なくありません。また、内部進学率が高い高校ほど、他大学への受験指導は不十分ということも。他大学を目指す場合は、塾や予備校での対策はマストになりやすいです。
しかも、今は「塾歴社会」とも呼ばれており、どういう形態の学校であっても、難関中高一貫校になればなるほど、学校と塾(予備校)の2足の草鞋は延々と続くという実態があります。
「中学に入れば、塾とは『おさらば』できると思ったのに!」と嘆く保護者の声は、実際、多いのです。
大学受験に話を戻しますと、先述したように、大学側が「中高時代にしっかりと学力をつけた上で、本学で積極的に学びたいという意欲がある学生」を強く求めているということです。
それは厳しくも思えるのですが、別の角度から見れば、中高生活を勉学も含めて充実させてきた生徒に大学の門戸を開くということ。知の伝承、知の創造、そして、社会貢献という役割がある大学ですが、今後は欧米の大学同様に、優れた研究機関という位置付けがより鮮明となり、学生はそれぞれの専門分野の研究者としての自立を求められていくのだと考えます。
要は、難関大学になればなるほど、入るのも、出るのも、今まで以上に大変だということですね。
「どこの学校で?」よりも「何をどう学んだのか?」
未来は誰にも予測できるものではありませんが、我が国が知識を伝えることを主軸にしていた教育から、社会変革をしていく人物の育成に舵を切ったことは明白で、今はちょうど、その過渡期にあたります。
これからの中学受験は、20世紀スタイルである知識偏重型教育から探究型教育に華麗に移行し、国際社会で生き抜く力をつけられるという結果を出した学校が、ますます支持されるでしょう。
もちろん、世の中の全員が社会変革を担う人物である必要はないですし、知識を重視する従来型教育のすべてが悪いわけではありません。事実、日本の難関大学合格者はここ最近もずっと、伝統ある難関中高一貫校出身者の割合が高いことに変わりありません。
ただ、今はどこの学校に入るかよりも、そこで何をどう学んだのかが問われている社会です。大切なのは、それぞれのご家庭でわが子の特性や長所を見抜き、その子に合った教育方針を導き出すということ。適材適所という視点も本当に大切になると思います。
もし、わが子に強い課題意識と自ら学び続ける姿勢を身につけさせることができたならば、どんな社会が訪れようとも、また、どんな学び舎で過ごそうとも、力強く己の道をまい進する人物になれるのではないでしょうか。
受験・就活と様々な取材をしておりますが、その中で感じるのは「君なら出来る!」という環境の中で育った子は人生を謳歌しているということ。
それゆえ、これからの子育ては、わが子が夢や希望を持った時に、親がどういう言動で応援していくのかが、いっそうの鍵になると思っています。
さあ、子どもが小学生の今の時期だからこそ、楽しい未来を想像しながら、一生懸命、悩んでください。それこそが、わが子への「応援」の第一歩になると信じています。
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