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インプット学習とアウトプット学習。効果が大きいのはどちら?

インプット学習とアウトプット学習。効果が大きいのはどちら?

親野智可等

教育に熱心なユダヤ人

ユダヤ人は優秀だとよく言われます。

例えば、ユダヤ人が世界人口に占める割合は0.2%だけなのですが、ノーベル賞受賞者の約22%がユダヤ人です。

また、アメリカでのユダヤ人の割合はわずか3%未満ですが、企業のCEO(最高経営責任者)の20%がユダヤ人です。

アメリカの一流大学の学生のうち25~30%がユダヤ人であり、弁護士、大学教授、医師などの割合も非常に高いそうです。

なぜ、ユダヤ人は優秀なのでしょうか?
もちろん理由は複数あるようですが、ひとつは歴史的な背景です。

ユダヤ人は自分たちの王国を失ってから世界中に散らばり、そのどこにおいてもマイノリティとして生きてきました。それゆえ、自分たちの未来は不安定であるという危機感を常に持っていました。

そんな中で子どもたちが明るい未来を切り開いていけるようにするには、教育に力を入れるしかなかったわけです。

ですから、ユダヤ人は教育に非常に熱心で、そこにお金も時間もかけますし、心くばりもするのです。

ユダヤ人に伝わる「ハブルータ勉強法」とは

二つ目の理由として考えられるのは、ユダヤ人の間で伝わる伝統的な勉強法が非常に理にかなったものだったということです。

それはハブルータ勉強法と言われるもので、内容をひと言で言うと、教え合い、質問、議論を大事にする勉強法です。
これを、学校の授業でも家庭でもやっているのです。

日本では、子どもを学校に送り出すとき「先生の話をしっかり聞いて勉強するんだよ」と言うのが伝統的なスタイルです。

一方、ユダヤの家庭では、「今日も先生にいっぱい質問するんだよ」と言って送り出すそうです。

ラーニングピラミッドでもアウトプット学習が高評価

ハブルータ勉強法は効果が高いというのは、アメリカ国立訓練研究所が出したラーニングピラミッドという学習モデルを見るとよくわかります。

ラーニングピラミッドでは、学習法を七つの階層に分けて序列をつけています。

一番効果がある学習法は「他の人に教える」で、二番目が「自分で体験する・練習する」、三番目が「議論する」です。

これら三つは、いずれもアウトプット学習、言い換えるとアクティブラーニングです。
つまり、受動的に受け取るだけでなく、能動的にアウトプットしながら、自分で表現しながら学ぶということです。

インプット学習はこれらの次に位置し、四番目が「実演を見る」、五番目が「視聴覚を使って学ぶ」、六番目が「読書」、七番目が「講義」という順番です。
詳しくは「ラーニングピラミッド」で検索してもらえればと思います。

インプット学習よりアウトプット学習の方が効果大

要するに、耳で講義を聴いたり、目で読書したりするだけの受動的な方法よりも、人に教えたり、自分で体験・練習したり、あるいは人と議論したりする方が身につきやすいということなのです。

もちろん、この順番が大人も子どもも含めて全ての勉強に無条件に当てはまるかはわかりません。勉強の内容によっても違ってくるはずですので、一律に全部に当てはめるのは問題だと思います。

でも、インプットするだけの勉強よりも、アウトプットしながらの方が身につくというのは、私の経験からもかなり当てはまると思います。

それに、教科書や参考書を使ってのインプット的な勉強より、問題集を解くというアウトプット的な勉強の方が身につきやすいのは誰でも経験することだと思います。

「○○を教えて」でアウトプットさせてみよう

勉強のやり方のこういった違いを意識して、活用してみてはいかがでしょうか。

例えば、子どもに「今日は学校で何を勉強したの? お母さんに教えて」とか、「弟に教えてあげて」と言うのです。

親や兄弟に話す、つまり教えること(アウトプットすること)で、学んだ内容が定着するわけです。

もちろん、急に言っても乗ってこない子もいますし、そういうこと自体を嫌がる子もいますので、無理強いはよくないです。

アウトプットさせるなら、学校で勉強したこと以外でもできます。
テレビのニュースを見ながら、新聞を読みながら、あるいは図鑑を見ながら、親子で「ああだこうだ」と議論するのもいいですし、または「○○を教えてくれない?」と言うのもいいでしょう。

YouTubeでのアウトプットは効果が大きい

もうひとつおすすめしたいのがYouTubeの活用です。
勉強した内容を、視聴者に向けて教える動画として撮影し、YouTubeに投稿するのです。

小学生がホワイトボードを使って、歴史、気象などについて講義をしている動画が、実際に投稿されています。

堂々とした講義ぶりで大したものだと思います。
本人にとって非常によい勉強になったはずです。

また、中学生が自分の勉強法、暗記法、集中力を高める方法、定期テスト攻略法などについて解説している動画もあります。

つまり、YouTubeをアウトプット学習として活用するのです。

さらに言えば、勉強のことでなくてもいいと思います。
例えば、自分の好きなこと、熱中している趣味、スポーツ、習い事など、どんな分野でもいいので動画投稿してみるといいと思います。

こういった活動は本人の励みになるので、自分の「好き」をより深掘りすることにつながるでしょう。

いろいろな形で、日ごろからアウトプットを増やすよう心がけていきましょう。
これは大人についても言えることです。
生涯学習の面からも、日々のアウトプットを意識するといいと思います。

著者プロフィール

親野智可等
親野智可等
おやのちから

教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。ブログ「親力講座」も毎日更新中。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。

教育評論家・親野智可等 公式ホームページ『親力』


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