子どもの元気とやる気が出る言葉。ウィンザー効果を活用しよう
40代の女性・F子さんの例
まず、40代の女性・F子さんから聞いた話を紹介します。
F子さんは、思春期の反抗期のとき、父親のことを避けていたそうです。
別にものすごく嫌いというわけではなかったのですが、本人も理由がわからないまま、とにかく避けていたとのことです。
できるだけ一緒に食卓を囲まないようにしていましたし、玄関やリビングでも顔を合わせないようにしていました。
そんなある日、母親から「お父さんが『F子はテニスをがんばってるな』って言ってたよ」と聞きました。
F子さんは「え、そうなんだ。見てくれてるんだ」と思って、うれしかったのを覚えているそうです。
それで、「さらにテニスをがんばろう」という気持ちにもなったとのことです。
母親の言葉で父の気持ちを知った
また、しばらくしてから、母親から「お父さんが『F子はおばあちゃんを自分のことのように心配して、優しいなあ』って言ってたよ」と聞きました。
祖母がケガで入院していたときのことで、F子さんはこれを聞いてとてもうれしかったそうです。
そして、自分が一方的に父を避けているのがなんだか申し訳ないように思えてきたのです。
あまり頻繁ではなく時々ですが、母親はこのように父親の言葉を伝えてくれました。
そのため、F子さんは「父親が自分のことを気に掛けてくれている。よく見てくれている」と感じることができました。
そのおかげか、高校の半ばくらいから父のことが嫌でなくなりました。
その後、高校を卒業してからは父と大の仲良しになり、大人になった今でもいい関係が続いているとのことです。
第三者から伝えられると信憑性が高まる“ウィンザー効果”
私は、F子さんの話を聞いて心理学でいう“ウィンザー効果”を思い出しました。
ウィンザー効果とは、第三者の褒め言葉が一番効き目があるというものです。
つまり、直接褒められるよりも、「○○さんが褒めてたよ」と第三者から伝えられたほうが信憑性が高いと感じられて、よりうれしく思えるのです。
F子さんの場合、父親に「テニスをがんばってるな」とか「おばあちゃんを自分のことのように心配して、優しいなあ」と直接褒められたわけではなく、第三者である母親から「お父さんが褒めていたよ」という形で伝えられたので、信憑性が高まったのです。
もし、同じことを父親から直接言われていたら、それほどうれしく感じられなかったかもしれません。
第三者の褒め言葉が効果的な理由
なぜ直接褒められるよりも、第三者から伝えられるほうが信憑性が高いと感じられるのでしょうか?
それは、一般的に、褒めるという行為の中には「褒めることで相手をコントロールしたい」「褒めることで、褒めた自分をよく思ってもらおう」「褒めることで、褒めた自分が得をしたい」などの動機や意図が透けて見えることが多いからです。
ですから、直接褒められると「もっとがんばらせるために褒めてるのかも?」「仲良くしたいから褒めてるのかも?」などの疑いが湧いてくる可能性があるのです。
ところが、第三者が伝えた場合は、伝えることで第三者が得をするということはないわけです。
嘘をついてまで褒める動機も必要性も感じられないので、「本当のことなのだろう」と信じる可能性が高まるのです。
ウィンザー効果を意図的に使ってみよう
ということで、私はこのウィンザー効果を意図的に使ってみるといいのではないかと思います。
例えば、「お母さんが褒めてたよ」「お兄ちゃんが褒めてたよ」「先生が褒めてたよ」などです。
具体的には、「先生が『○○さんはとてもがんばっていて、うれしいです』って言ってたよ。お母さんも先生にそう言われてうれしかった」というように伝えます。
特に、冒頭の例のように、思春期の子どもと父親あるいは母親がうまくコミュニケーションを取れない場合などには、第三者が伝えることは大きな意義があると思います。
もちろん、あまりたびたびでは信憑性が下がってしまう可能性がありますので、気をつける必要があります。
また、これは大人同士の関係でも使えます。
例えば、職場の人間関係をよくするために活用してみてはいかがでしょうか。
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