生まれつきの性格は、子供のうちには変えられない
整理整頓や片づけの上手下手は生まれつき
整理整頓や片づけが上手な人と下手な人がいます。
私は、これはほとんど生まれつきの資質だと思います。
親のしつけや指導によって、それほど変わるものではありません。
私は、小学校の教師として650人の子どもを担任し、きょうだい関係の10人を差し引いて、640件の家を家庭訪問しました。
証拠は、いたる所で見てきました。
ある家に行くと、家の中がとても整理整頓されていてきれいです。
親もきょうだいもみんな整理整頓が上手です。
でも、そんな中でただ一人だけ苦手でできない子がいるのです。
こういう子はたくさんいます。
逆もありました。
家の中はごちゃごちゃで、親もきょうだいもみんな整理整頓が苦手です。
でも、一人だけ上手にできる子がいるのです。
環境は最悪、見本も最悪、親の指導もゼロです。
にもかかわらず、ちゃんと整理整頓ができる子がいるのです。
こういう実例をたくさん見てきて、私の中では結論が出ています。
再度言いますが、整理整頓や片づけの上手下手は、ほとんど生まれつきです。
だから、同じきょうだいでも違ってくるのです。
同じきょうだいでもいろいろな面で違う
そして、事は整理整頓だけではありません。
同じきょうだいで違うことはたくさんあります。
同じきょうだいでも、やるべきことがテキパキできる子もいれば、そうでない子もいます。
朝、自分で起きる子もいれば、そうでない子もいます。
せっかちな子もいれば、マイペースな子もいます。
社交的な子もいれば、内向的な子もいます。
算数が得意な子もいれば、苦手な子もいます。
運動神経がよい子もいれば、そうでない子もいます。
同じ親から生まれたのに、まったく違います。
同じ環境で育ち、親という見本も同じで、親の指導も同じです。
にもかかわらず、いろいろな面で違います。
良いにつけ悪いにつけ、生まれながらの資質というものは大きい
これは、一体何を意味するのでしょうか?
それは、生まれつきの資質というものがいかに大きいか、ということです。
良いにつけ悪いにつけ、生まれながらの資質というものは、実に大きいのです。
そうでなかったら、きょうだいみんな同じように育つはずです。
環境が同じで、親という見本も同じで、親の指導も同じなのですから。
でも、現実はそうなっていませんね。
それは、生まれつきの資質というものが、本当に大きいからです。
それを無視して、同じような結果を求めても無理です。
その子の生まれつきの資質に合わせた対応が必要なのです。
人生は3つの要素で決まる
人生は3つの要素で決まります。
1つめは「生まれつきの資質」です。
資質とは才能と性格です。
才能とは、数字に強い・弱い、言葉による表現が得意・苦手、リズム感がある・ない、運動神経が良い・悪い、絵が上手・下手、整理整頓が上手・下手などです。
そして、性格とは、テキパキ行動できる・できない、せっかち・マイペース、社交的・内向的などです。
2つめは、「環境」です。
環境の中で最大のものは、親という存在です。
中でも親の言葉は大きいのです。
否定的に叱ってばかりの親だと、子どもは伸びません。
ほめるのが上手な親なら子どもは伸びます。
3つめは、「本人の自由意志」です。
たとえ、1つめの「生まれつきの資質」という点で恵まれていなくても……。
さらに、2つめの親という環境がひどかったとしても……。
あるとき、本人が「自分はこんなことではいけない。よし、やるぞ」と自覚して、そこで自由意志を発動して、やる気になれば伸びていけます。
でも、それは早くて思春期以降、たいていの場合は大人になってからのことです。
つまり、自分の人生を真剣に考えられるようになってからのことです。
「こんなにだらしのないままでは、自分の将来は真っ暗闇だ。なんとかしなければ」
「このままでは仕事をクビになってしまう。真剣に直さなければ」
「自分はこの夢を実現したい。そのためには、もっと時間を意識して行動しなければ」
「私はこの資格を取りたい。そのためには、もっと○○しなければ」
大人だったら、このように考えて、自覚的に方向転換することができます。
人間は、資質や環境の奴隷ではありませんから。
自由意志で自分を創造することこそが人間の尊厳なのですから。
子どもは「今・ここ」にありのままに生きているからかわいい
でも、何度も言いますが、これは大人になってからのことです。
早くても思春期以降です。
子どもに望んではいけないことです。
なぜなら、子どもという存在は、自分の人生とか将来などといったことを真剣に考えることができないからです。
子どもたちは、みんな「今・ここ」に全力で生きています。
過去も未来も関係ありません。
「今・ここ」に自分の全てを注ぎ込んで、ありのままに一生懸命生きています。
生まれつきの資質も含めて、自分のありのままということです。
だから、子どもはかわいいのです。
親が曇りのない目でよく見れば、本当に美しく素敵な人たちです。
でも、親はそのかわいらしさや美しさを味わうことができません。
なぜなら、親の目が腐りきっているからです。
親には、「こうなってほしい。これをさせなければ。ここまで引き上げなければ」という「親の願い=親の欲」があります。
でも、現実の子どもは、遙か下を低空飛行しています。
とてもじゃないけど、目の前の子どもたちのありのままをかわいいなどとは思えないのです。
これは親の業病のようなものです。
「子どものうちなら直る」はウソ
子どもたちは、「将来のために、自分の生まれつきの資質を変えなければ」などと思うはずがありません。
本当にそう思ったら、その時点で、もう子ども時代は終了です。
思わないから子どもなんです。
だから、かわいいのです。
だから、直らないのです。
これが子どもの本質です。
コインの表と裏です。
表だけもらっておくということはできないのです。
表も裏も丸ごと受け入れるほかありません。
「子どものうちなら直る」とよく言われてきましたが、これはウソだったのです。
全人類の大人たちの集団的勘違い、迷信、作り話だったのです。
子どものうちには直りません。
先ほど言ったように大人になってからの話です。
自己肯定感があれば自由意志を発動できる
でも、大人になって、自由意志を発動できそうな状況になったときにも、イマイチ発動できないままになってしまう人もいます。
それは、自己肯定感がない人、言い換えると自己否定感に凝り固まってしまった人です。
なぜなら、自己肯定感がない人は、「自分はこんなことではいけない。なんとかしたい」と思っても、「でも、ダメだろうな。どうせ自分なんかには無理だ」と考えてしまいがちだからです。
子どもの生まれつきの資質を受け入れることができずに、子どものころに直そうと思いすぎて、親が叱ってばかりいるとそうなります。
「片づけしなきゃダメでしょ。何度言ったらわかるの」とか、「先にやることやらなきゃダメでしょ。なんでちゃんとやらないの」などと、叱ってばかりいるとそうなります。
生まれつきの資質が直らないだけでなく、将来も自由意志を発動できないようにしてしまうのです。
親は子どもの自己肯定感を育てながら待つことが大事
こうなってしまうケースが、本当に多いのです。
そうならないようするには、目の前の子どものしょうもない姿を受け入れて、許してあげてください。
何度も言いますが、それはその子のせいではなく、生まれつきの資質なのです。
もちろん、親のせいでもありません。
ですから、親が自分を責める必要もありません。
それは誰のせいでもなく、ただそういうものなのです。
親としては、ひたすら自己肯定感を育てながら待つことが大事です。
やがて子どもが自分で「がんばらなきゃ」と思うときが来ます。
そのとき、実際にがんばれる人にしてあげればいいのです。
親に短所に見えることが実は長所。なが~い目で見てあげよう
それに、だいたいにおいて、だらしがない子やマイペースでテキパキできない子は、癒やし系であることが多いのです。
そういう子は、自分にも他人にも優しいことが多いのです。
やるべきことはやらずに、自分がやりたいことを最優先する子は、自分らしく生きられる子です。
自分の世界というか、自分の得意分野を育てることができるのです。
自分というものがあり、他の人とはちょっと違う発想もできます。
そういう子は、将来仕事でもプライベートでも自分らしく生きていけます。
親にとって短所に見えることが、一生生きていく上ではかえって長所であることも多いのです。
ですから、なが~い目で見てあげてください。
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