子育ての罰の影響~親が子どもを罰でおどすと、子どもも友達を罰でおどしてしまう
罰で脅しても効果がないばかりか弊害が多い
「机の上の物を片づけないと、捨てちゃうよ」
「早く着替えないと、連れて行かないよ」
「テストで80点以上とらないと、今度の旅行に連れて行かないぞ」
「おはしセットを出さないと、洗ってやらないよ」
「全部食べないと、テレビ見せないよ」
このような罰でおどして、子どもをしつけようとする罰則型の親はたくさんいます。
でも、このやり方には効果がないばかりか、多くの弊害があります。
子育てや教育についての研究で常に世界をリードする「エール子育てセンター」。
その責任者で、世界的に著名な児童臨床心理学者のアラン・カズディン博士も、次のように言っています。
「罰を言い渡した親は気分がよくなるかも知れない。だが、それで子どもの行動が変わることはない」
「親が子どもに罰を与えていると、その子は友達に対しても罰を与えるようになる。親が子どもに暴力的な振る舞いをしていると、その子は友達に対しても暴力的な振る舞いをするようになる」
罰でおどしても内面的な成長にはつながらない
私の経験でも、まったく同じことが言えます。
親が子どもを罰でおどせば、子どもは従います。
それは罰が恐いからであり、いやいや従っているのです。
そうすることのよさや必要性を、心から納得しているわけではありません。
ですから、子どもの内面的な成長にはつながらず、「今度は自分から進んでやろう」という気にはなれません。
同じ状況になる度に、親が何度も同じことを言わなければならなくなります。
さらには、同じ罰だと効きめがなくなってくるので、だんだん罰がエスカレートするということにもなりかねません。
これが弊害の1つめです。
子どもは「罰でおどすのは効果的だ」と学んでしまう
弊害の2つめ。
親が罰でおどして子どもを従わせていると、子どもは罰でおどすのは効果的だということを学んでしまいます。
そして、兄弟や友達に対して、その方法を使うようになります。
実際、私が教えた子どもの中にも、「お片づけしないと遊んであげないよ」「ちゃんと並ばないと、後回しにするよ」「帽子持ってこないと入れてあげないよ」などと、罰則型の言葉で友達を従わせようとする子が何人かいました。
その子たちの親は、やはりそういう言葉を使うタイプでした。
「表の教育」は失敗し、「裏の教育」は成功する
これを私は「裏の教育」と呼んでいます。
親は「片づけをさせたい」「着替えができるようにさせたい」「進んで勉強する子にしたい」という意図で言っているわけで、これはいわば「表の教育」です。
「罰でおどすのは効果的だ」ということを教えたいなどとは思っていません。
これは、意図していないので、「裏の教育」です。
表の教育は、だいたいにおいて失敗します。
でも、裏の教育はかなりの確率で実現されてしまいます。
なぜなら、親が実際の行動で見本(モデル)を見せているからです。
心理学でいうところの「モデリング効果」が働いてしまうのです。
言葉や文字などで教えられることよりも、見本(モデル)になる人の実際の動作や行動を自然にまねして身につくもののほうが、はるかに大きいのです。
まさに、「言うことは聞かないが、することはまねる」という言葉の通りなのです。
そして、モデリング効果について研究した心理学者アルバート・バンデューラによると、いろいろな行動の中でも、攻撃的な行動は一番よく学び取られるそうです。
罰でおどされていると親に対する嫌悪感が高まる
弊害の3つめ。
子どもにしてみれば、罰でおどされるのは非常に不愉快です。
当然、反発したくなりますし、よけいにやる気がなくなってしまうのが普通です。
「やってたまるか!」という気持ちになったり、わざと逆の行動をしたくなったりもします。
それでも、子どもは無力ですから、従わなければなりません。
それは非常に大きなストレスであり、不満や反発心が子どもの中にくすぶりつづけます。
そして、だんだん親に対する嫌悪感が高まっていきます。
つまり、親のことが嫌いになってしまうのです。
そうすると、ますます反発したくなってしまいます。
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