おかあさんの参考書
親からの人格否定。否定ばかりされて育った子どもは、自己否定感と人間不信にとらわれる?

親からの人格否定。否定ばかりされて育った子どもは、自己否定感と人間不信にとらわれる?

親野智可等

人格や能力を丸ごと完全否定する言葉

どんなに腹が立っても、絶対に言ってはいけない言葉というものがあります。

人格を否定する言葉もそのひとつです。

これは、相手の人格や能力を丸ごと完全否定してしまいます。

例えば、親が子どもに「また弟を叩いて! どうしてそんなに意地悪なの!」と言ったとします。

これは、子どもを「意地悪」と決めつけて、その人格を完全否定しています。

本当は、そこまで言わなくても「叩いてはいけません」と言えばいいだけなのです。

親子の場合では、ほかにも次のような言葉が考えられます。

「勉強していないんじゃないの! あなたは、ホントに口ばっかりなんだから」

この中の「口ばっかり」は、人格を否定する言葉です。

「また片づけてない。出せば出しっぱなし。なんでこんなにだらしがないの?」

この中の「だらしがない」は、人格を否定する言葉です。

「お父さんに言われたこと、半分もやってないじゃないの。ずるい子ねえ!」

この中の「ずるい子」は、人格を否定する言葉です。

自己肯定感が持てず自己否定感にとらわれる

このような人格を否定する言葉をぶつけられた子は、深く傷つき、トラウマになる可能性があります。

ほかならぬ自分の親に、「意地悪」「口ばっかり」「だらしがない」「ずるい」と思われているのですから。

子どものころ、親からこのような言葉をぶつけられて、大人になってからも、それがずっと心に引っかかっている人はたくさんいます。

つまり、「自分は意地悪なんだ」「ずるい人間なんだ」などの意識がずっと心に残り、なかなか消すことができないのです。

頭では「そんなことはない」と否定しても、完全に打ち消すことができません。

こういう状態が進むと、自分のよい点は見つけられなくなり、強い自己否定の気持ちにとらわれるようになります。

大人になってからも、自己肯定感がぜんぜん持てないで、自己否定感のかたまりのようになっている人はたくさんいます。

親に対して不信感を持ち、そして人間不信に

さらに、自分を否定する気持ちと同時に、親に対する不信感もわいてきます。

「親は、自分のことを意地悪だと思っているんだ」と感じれば、親に対する不信感がわいてくるのは当たり前です。

やがて、子どもは、「親は自分のことを大切に思ってくれていない。どうせ自分なんか愛されていないんだ」と感じるようになります。

親に対して不信感を持ってしまうと、これが他者一般に対する不信感、つまり他者不信感(人間不信)にまでつながります。

というのも、親子関係は子どもにとって、最初の人間関係だからです。

そこで不信感を土台に人間関係を作ってしまうと、その後の人間関係も同じ不信感という土台で作るようになってしまうのです。

すると、人が信じられない、被害妄想的になる、うまくコミュニケーションが取れない、よい人間関係が作れない、などの状態になりかねません。

表面はニコニコしていても、無意識の部分で傷ついている

親の中には、「うちの子は打たれ強いから大丈夫」と言う人もいます。

でも、それは大きな勘違いです。

もちろん、そのときに子どもの様子を見ても、その場ではそれほど深く傷ついたようには見えないことがあるかも知れません。

もしかしたら、ニコニコして平気な顔でいるかも知れませんし、1時間くらいしたらまた親に近寄ってくるかも知れません。

それを見て、親は「うちの子は打たれ強いから大丈夫」と思ってしまうのです。

でも、実は、本人もわからない心の奥の深いところ、無意識の部分で傷ついているのです。

だからこそ、トラウマになるのです。

人格を否定する言葉はたくさんある

人格を否定する言葉は、ほかにもたくさんあります。

みなさんは、次のような言葉を子どもにぶつけていませんか?

もし心当たりがあるなら、今日を限りにやめてください。

  • 「やる、やる」って言ってやってない。なんでそんなにウソつきなの?
  • またサボって遊んでいる。卑怯な子だね。
  • こんなことで泣いて。弱虫だな。
  • それでもお兄ちゃんなの?
  • お前にはがっかりだよ。
  • いつもそうなんだから。いつまでたってもダメだね。
  • 何度言わせるの? 何度言ってもダメね。
  • 時間にルーズだな。
  • おまえは根性がないんだよ。
  • おまえにできるはずがない。
  • あんたには無理なんだね。
  • 何やっても遅いねえ。のろまだねえ。
  • 頭が悪いね。バカじゃないの?
  • ホントに不器用だな。
  • 運動神経ゼロじゃん。
  • お前は忘れ物大王だ。
  • あいさつもできないなんて、情けない子だよ。
  • こんな点数じゃ、お母さんも恥ずかしいよ。
  • 何をやってもダメだな。

反抗期のときは要注意

特に、子どもが反抗期のときは気をつけましょう。

反抗期のときは、子どもの言葉もひどいので、それを聞いて腹を立てた親が、つい言ってはいけない言葉をぶつけてしまうことがあります。

そうすると、反抗期が終わって、子どもの気持ちがまた戻ってくるころになっても、気持ちは永遠に戻ってこないままになってしまうでしょう。

受験の時期も要注意

また、もうひとつ気をつけて欲しいのは、受験の時期です。

受験の時期は、子どもよりも親の方がイライラしていることがよくあります。

いくら言っても勉強しない。

テストの成績が上がらない。

試験が近づいてきても、一向にエンジンがかからない。

「やる、やる」「がんばる」と口では言うくせに、いざとなると何もやらない。

親ばかりが焦って、子どもはスイッチが入らない。

こういうとき、親はつい言ってはいけない言葉をぶつけてしまうことがあります。

その結果、子どもはますますやる気がなくなります。

たとえ合格したとしても、その後もずっと親のひどい言葉を忘れられないまま引きずるということもあるのです。

著者プロフィール

親野智可等
親野智可等
おやのちから

教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。ブログ「親力講座」も毎日更新中。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。

教育評論家・親野智可等 公式ホームページ『親力』


親野先生 記事一覧

ALL

オススメ記事

記事一覧

ALL

お近くのTOMASを見学してみませんか?

マンツーマン授業のようすや教室の雰囲気を見学してみませんか?
校舎見学はいつでも大歓迎。お近くの校舎をお気軽にのぞいてみてくださいね。

首都圏駅前105校 校舎検索はこちら

校舎名をクリックすると、詳細をご覧になれます。

ひばりヶ丘校 大宮校 阿佐ヶ谷校 柏校 本八幡校 二子玉川校 津田沼校 錦糸町校 千葉校 成増校 北浦和校 川越校 南浦和校 所沢校 志木校 西日暮里校 池袋本部校 教務本部 八王子校 川口校 練馬校 大泉学園校 松戸校 高田馬場校 メディックTOMAS 市ヶ谷校 立川校 荻窪校 巣鴨校 三鷹校 府中校 赤羽校 飯田橋校 国分寺校 中野校 渋谷校 三軒茶屋校 調布校 笹塚校 目黒校 麻布校 聖蹟桜ヶ丘校 成城学園校 大森校 自由が丘校 町田校 本厚木校 武蔵小杉校 たまプラーザ校 蒲田校 横浜校 川崎校 門前仲町校 新百合ヶ丘校 千歳烏山校 青葉台校 藤沢校 新浦安校 下北沢校 上大岡校 千歳船橋校 葛西校 東戸塚校 日吉校 日吉校 南大沢校 四ッ谷校 田町校 浅草橋校 戸越校 センター北校 国立校 戸塚校 向ヶ丘遊園校 武蔵境校 メディックTOMAS横浜校 白山校 大崎校 石神井公園校 市川校 吉祥寺校 綱島校 海浜幕張校 下高井戸校 桜新町校 学芸大学校 多摩センター校 宮崎台校 スペックTOMAS自由が丘校 上尾校 メディックTOMAS大宮校 大船校 流山おおたかの森校 二俣川校 浜田山校 尾山台校 海老名校 大井町 中目黒校 勝どき校 月島校 メディックTOMAS渋谷校 御茶ノ水校 船橋校 用賀校 スペック勝どき校 市が尾校