反抗期の子どもへの話の聞き方~上手な話の聞き方で、反抗期の子どもでも話したくなる
反抗期は親にとっても苦難の日々
子どもが11歳くらいになると、それまでの児童期から少し抜け出して、次の段階の思春期前期に入ります。
この思春期前期は、小学校高学年から中学生前半まで続き、その後は思春期後期が18歳くらいまで続きます。
ただし、発達段階の区切り方は学説によって違いますし、男女差や個人差も非常に大きく、一概には言えない部分もかなりあります。
思春期というのは、精神的な独立をめざして親に反抗する「第二反抗期」でもあり、親にとっても苦難の日々が続くことになるでしょう。
親の聞き方が下手だと、ますます話さなくなる
この年代を迎えたとき、親が戸惑うことのひとつとして、「子どもが話をしてくれなくなる」ということがあります。
それまでは、聞いてもいないのに自分から学校のことや友達のことをぺらぺらしゃべっていた子が、人が変わったように何も話さなくなるということもあります。
そこで焦った親が子どもに根掘り葉掘り聞き出そうとし、子どもは尋問のように感じてかえって嫌がる、などということがよく起こります。
そうならないために、親としては「こういう年頃なのだ」ということを頭に入れておく必要があります。
そして、子どものほうから気が向いていろいろ話してくれたとき、親が上手な聞き方をすることがとても大事です。
親の聞き方が下手だと、子どもはそれ以降さらに話さなくなってしまいます。
そこで、今回は上手な「話の聞き方10のコツ」をご紹介しましょう。
(1)「ながら聞き」をやめる
まず大切なのは、子どもが何かを話しはじめたら、ちゃんと手をとめてしっかり聞いてあげるということです。
何かをしながらの「ながら聞き」はNGです。
子どもは、親の状況などを考えずに話しかけてきます。
親としては、「忙しいときに限って話しかけてくる」と感じるかも知れませんが、そもそも子どもとはそういうものです。
せっかくのこのときに、親が何かをしながら適当な気持ちで聞いていると、子どもは「私の話は聞いてくれないんだ。私のことなんかどうでもいいんだ」と感じてしまいます。
(2)話の腰を折らない
子どもの話の中に、自分が興味のあることが出てきたとき、それについて話したくなってしまうことがあります。
例えば、子どもが「合唱の練習で声が出ていないと叱られて嫌だった」という話をしていたとします。
ところが、その話を聞いている途中で「『モルダウ』って曲、いいよね。ママも中学生のときに歌ったわ」などと話し出して、そのまま自分の思い出話をしてしまう、などということが起こり得ます。
おしゃべり好きの人は、日頃からこのように相手の話の腰を折っていることが多いので気をつけてください。
(3)否定しない
子どもの話をすぐ否定してしまう親はけっこう多いのですが、これは絶対にNGです。
例えば、子どもが「監督に○○って言われて、それは無理って思ったから無視した」と言ったとき、すぐに次のような返事をしてはいけません。
「やる前から無理って思っちゃダメでしょ」
「でもね、監督には監督の考えがあるのよ」
「だけど、やるだけやってみたら?」
「そうはいっても、無視はいけないでしょ」
親は「指導しなければ」という思いが強いので、このような否定をしがちです。
「でも」「だけど」「しかし」「そうはいっても」などの言葉がすぐ出る人は、気をつけてください。
否定ではなく、常に「共感」を心がけるようにしましょう。
(4)うなずきながら聞く
「共感的に聞く」ために大事なのは、「うなずきながら聞く」ということです。
この「うなずき」は、話している側にとっては「聞いてくれている。共感してくれている」と感じられて、うれしいものです。
私も講演をするときに、うなずきながら聞いてくれる人がいると、「ああ、聞いてくれている。共感してくれている」と感じて励まされます。
(5)相づちを打つ
うなずきと同じく、「うん、うん……」「へえ~」「ええ?」「ほんと?」「うそでしょ?」「そうかあ……」「そうなんだ……」などの相づちもとても効果的です。
こういう相づちを打ってくれると、話している方はとても話しやすくなります。
(6)オウム返しをする
話し手の言葉をオウムのように繰り返す聞き方を、「オウム返し」と言います。
子どもが「○○が□□でホント疲れる」と言ったら、「疲れるよね」と返します。
「○○ちゃんて、□□だから笑っちゃったよ」と言ったら、「笑っちゃうよね」と返します。
「理科の授業のときにね、先生が水をこぼして、そのあと自分で滑って転んでた」と言ったら、「自分で滑って転んだんだ」と返します。
「Aさんが○○してたから、私とBさんが注意したら『関係ないでしょ』って言われた。頭にきてふたりでぶつぶつ言ってたら、先生に怒られた」と言ったら、「あんたたちが先生に怒られちゃったんだ」と返します。
話し手は、「聞いてくれている。共感してくれている」と感じて、うれしくなります。
(7)言い換えをする
「オウム返し」は効果的ですが、いつもこればかりだとマンネリ化してきます。
話し手もだんだん気づいてきて、「ママ、いつも私と同じことばかり言う」と言いたくなるでしょう。
そこで、少し高度なコツの「言い換え」も身につけておく必要があります。
これは、話し手の言いたかったことを少し言い換えて返す方法です。
「Aさんがズルをしてたから、私とBさんが注意したら『関係ないでしょ』って言われた。頭にきてふたりでぶつぶつ言ってたら、先生に怒られた」と言ったら、「ズルを注意して怒られるなんてひどいわね」と言い換えてあげます。
このように、言いたいことの意を汲んだ「言い換え」をしてもらえると、話し手は「聞いてくれている。共感してくれている」と感じて、とてもうれしくなります。
言葉による表現が苦手で、自分の気持ちをうまく言えない子の場合には、その意を汲んで「代弁」してあげることも必要です。
ここまで書いた「うなずき・相づち」「オウム返し」「言い換え(代弁)」は、いずれも共感的に聞くための基本なので、日頃からぜひ心がけるようにしてください。
(8)ほめられる部分を見つけてほめる
子どもの話の中から、ほめられる部分を見つけてほめてあげましょう。
「がんばったね」「がんばっているね」「いいことしたね」「よく気がついたね」などのほめ言葉や、「ありがとう」「助かるよ」「うれしいよ」などの感謝の言葉は、反抗期の子どもにとってもうれしいものです。
もちろん、反抗期の子は児童期のときのように、ほめられてもうれしそうな顔はしないかも知れません。
まったくの無反応だったり、たとえ反応したとしても「別に……」などという冷たい反応だったりするかも知れません。
だからといって、「どうせほめてもムダだからほめない」などと思わないでください。
たとえうれしそうに見えなくても、心の中では、悪い気はしていません。
(9)質問をして話を膨らませる
子どもの話を聞きながら、上手に質問してあげると話が膨らみます。
例えば、「○○君は何でそんなこと言うんだろうね?」「それで○○さんはどうしたの?」「何で□□したの?」などです。
質問するときに大事なのは、親が聞きたいことよりも子どもが話したがることを質問するということです。
親が聞きたいことばかり聞いていると、詰問のようになってしまいます。
質問をするのは、子どもに気持ちよく話をさせるためだ、ということを意識しましょう。
ですから、子どもが何を話したがっているかを汲み取って、子どもの話が弾むような質問が大事です。
そこで効果的なのは、子どもの気持ちを聞いてあげることです。
例えば、「そんなこと言われて嫌じゃなかった?」「それは懐かしかったでしょ?」「それってめんどくさくなかった?」「そんなことまでやるのは大変じゃない?」などです。
このように聞かれると、人は誰でもそのときの気持ちを思い出して、もっと話したくなるものです。
(10)ミラーリングを効果的に行う
ミラーリングとは、最先端の心理学「NLP」(神経言語プログラミング)の基本的なテクニックで、相手の仕草や動作を鏡(ミラー)のようにまねることです。
人は自分に似ている人に好意を持つ、という傾向があります。
ミラーリングは「私はあなたに似てますよ」というメッセージを伝えるテクニックなのです。
例えば、相手が早口なら自分も早口で話し、低い声なら自分も低い声で話します。
相手が暗い顔だったら自分も暗い顔になり、眉をひそめたら自分も眉をひそめます。
相手がお茶を飲んだら自分も飲み、髪の毛を触ったら自分も触ります。
もちろん、あまり露骨にやると、相手が「まねしてるな」「わざとらしいな」と気づいて、逆に不愉快になってしまうことがあり、ここが難しいところです。
しかし、それを回避する「クロスオーバーミラーリング」というテクニックも開発されています。
これは、まったく同じ仕草や動作ではなく、似ている仕草や動作をするというものです。
例えば、相手が髪の毛を触ったら、自分は鼻を掻いたり眼鏡を上に上げたりしてみます。
相手がお茶を飲んだら、自分はお茶菓子を食べたり顎の辺りを触ってみたりします。
ほかにも、すぐにまねるのではなく、少し遅れてまねをするというテクニックも効果的です。
10のコツの根本にあるのは「相手への共感」
ここに挙げた「話の聞き方10のコツ」は、反抗期の子だけではなく、すべての人間関係において有効です。
夫婦、家族、職場、ママ友など、いろいろな場面でこれらのコツを意識してください。
聞き上手になれば、すべての人間関係がうまく回りはじめます。
最後に付け足しですが、これらの10のコツの根本にあるのは、「相手への共感」です。
10のコツをすべて覚えなくても、「共感的に聞く」という姿勢だけは忘れないようにしましょう。
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