否定的な言葉で子どもを叱り続けることで起こる7つの弊害(2)
子どもの自己イメージが悪くなるとどうなるか
前回の続きです。
弊害の4つめは、子どもの自己イメージが悪くなるということです。
人間は誰でも、「自分はこういう人間だ」という自己イメージをもっています。
はっきりいってただの思い込みに過ぎないのですが、人間の成長においては大きな役割を果たします。
なぜなら、この自己イメージという思い込みは、人間が自分をつくっていくときの青写真、つまり設計図になるからです。
人間は、自分自身をつくっていくただ一つの生き物です。
そのとき、ただ闇雲につくっていくのではなく、はじめに漠然とした自己イメージを持ち、そのイメージに合うようにつくっていきます。
もし、「自分はできる。がんばれる。やりとげられる」というように、自己肯定感が高くて、よい自己イメージを持てれば、いろいろなことにチャレンジできます。
たとえちょっとした壁があっても、「自分はできるはずだ」と思えるとがんばり続けることができ、最後には達成できるようになるのです。
反対に、「自分はダメだ。どうせボクなんてダメな子だよ」というように、自己肯定感が低くて、まずい自己イメージを持ってしまうと、いろいろなことにチャレンジできなくなります。
仮にチャレンジしたとしても、ちょっとした壁があると「やっぱりダメだ。どうせダメだよ」となってしまい、結局できないようになっていくのです。
子どもの自己イメージは親の言葉によってつくられる
では、この自己イメージというものは、どのようにしてできあがるのでしょうか。
子どもは、自分で自己イメージをつくることはできません。
自分がどういう人間かは、自分ではわからないからです。
その多くは他人の評価、つまり他人の言葉によってできあがります。
中でも一番大きいのは親からの言葉であり、次が周りにいる人たち、先生、友だちなどの言葉です。
もちろん、大人になれば、自分で意識的によい自己イメージをつくっていくことはできなくはありません。
そういう技法もありますし、自己啓発のメインテーマの一つでもあります。
しかし、子どもが自分で意識してよい自己イメージをつくっていくことは不可能です。
ほとんどの場合、親から自分に向けられる言葉によって、無意識のうちにつくられていくのです。
恐るべし! すっぱい葡萄効果
弊害の5つめは、叱られてばかりいると、子どもの中でその叱られた物事の価値が下がることです。
つまり、勉強について叱られてばかりいると、その子の中で勉強の価値が下がり、片づけについて叱られてばかりいると、片づけの価値が下がるのです。
なぜそうなるかというと、心理学でいうところの「すっぱい葡萄効果」が働くからです。
この心理学用語は、イソップ物語の「すっぱい葡萄」というお話がもとになっています。
キツネがおいしそうな葡萄を見つけて、ジャンプして取ろうとします。
でも、高いところにあったので、何度やっても取ることができませんでした。
最後にキツネはあきらめるのですが、そのとき「あの葡萄はすっぱいからいらないよ」と負け惜しみを言います。
つまり、葡萄の価値を下げることで、自我を守ろうとしたのです。
このような心の働きを心理学で「すっぱい葡萄効果」と呼んでいます。
勉強で叱られると「勉強なんてそんなに大事なことではない」と思うようになる
親に「なんで勉強しないの! ちゃんと勉強しなきゃダメでしょ」と叱られてばかりいると、子どもの自我が傷つき、何とか自分を守ろうとします。
すると、子どもは「勉強、勉強って……。なんでお母さんは勉強のことばかりムキになるの? 勉強ってそんなに大事なの? もっと大事なことがあるんじゃないの? 勉強なんてできなくても、立派に生きている人はいっぱいいるよ」と考えるようになります。
このように、子どもの中で勉強の価値が下がってしまうことで、勉強へのモチベーションが下がるのです。
恐るべし! 脳の勘違い
弊害の6つめは、叱られてばかりいると、子どもは叱られた物事がますます嫌いになるということです。
なぜそうなるかというと、脳がちょっとした勘違いをするからです。
これについては、まず「脳の勘違い」について説明します。
わかりやすいのは、心理学でいうところの「吊り橋効果」です。
男女が一緒に吊り橋を渡ったとします。
吊り橋は揺れて怖いので、心臓がドキドキします。
すると、脳が勘違いして「あれ、今自分はドキドキしている。もしかして、この人のことが好きなのかも」となり、恋愛に発展する可能性が高まります。
この吊り橋効果は、統計学的に有意な数字で確認されているそうです。
勉強で叱られると「勉強って不愉快だな」と思うようになる
以前、脳科学者の池谷裕二先生の講演で伺ったところによると、脳は常にこういう勘違いをしているそうです。
例えば、「何で勉強しないの! ちゃんと勉強しなきゃダメでしょ」と叱られると、子どもは不愉快です。
親が自分をとがめる、その否定的な言葉遣いが不愉快なのです。
でも、勉強に関して不愉快にさせられているので、脳が勘違いして「勉強って不愉快だな」と思ってしまいます。
本当は勉強そのものを不愉快に感じたのではなく、親が自分をとがめる否定的な言葉が不愉快だったのです。
しかし、勉強に関して不愉快な気分になったので、「勉強って不愉快だな」と感じて、勉強が嫌いになってしまうのです。
ということで、すっぱい葡萄効果と脳の勘違いによって、親が否定的に叱ったことはすべて、子どもの中で「価値が低いもの」「不愉快で嫌いなもの」になってしまうのです。
子どもは親の否定的な言葉遣いを真似するようになる
弊害の7つめは、親が否定的な言葉で叱り続けていると、子どもはその否定的な言葉遣いそのものを身につけてしまうということです。
子どもは親の言葉を真似することで、言葉を身につけます。
親が日本語で話すなら子どもも日本語で話すようになり、親が関西弁なら子どもも関西弁になります。
親が肯定語弁なら子どももそうなり、親が否定語弁なら子どももそうなります。
こういうものは全て無意識のうちに身につけてしまうものです。
当然、友だちと話すときも、そのような否定的な話し方をするようになります。
私が教えた子どもの中にも、よく友だちに「○○しないと遊んでやらないよ」などと、罰則型の話し方をする子がいました。
その子のお母さんが「勉強しないとおやつ抜きだよ」という話し方をする人でした。
子どもも自然に身につけてしまったのですね。
否定的に叱ることの弊害を心に刻もう
以上、子どもを否定的に叱り続けることによって起こる7つの弊害について書いてきました。
ここで、7つの弊害を再度まとめておきましょう。
弊害1 「やらなきゃ」という気持ちすら摘み取ってしまう
弊害2 親に対する愛情不足感が出てくる
弊害3 自分に対する自信を持てなくなる
弊害4 子どもの自己イメージが悪くなる
弊害5 子どもの中で叱られた物事の価値が下がる
弊害6 叱られた物事がますます嫌いになる
弊害7 否定的な言葉遣いそのものを身につけてしまう
否定的に叱り続けることには、良いことは一つもありません。
このことを深く心に刻んで欲しいと思います。
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