Profile
筑波大学附属駒場中学校副校長
梶山 正明先生
かじやま・まさあき●1983年から都立高校教諭として10年間勤務後、1993年に筑波大学附属駒場中学校・高等学校へ。理科・化学を担当。2017年4月より現職。
第14回 筑波大学附属駒場中学校・高等学校 林 久喜 校長
-2019.07.23
筑波大学附属駒場中学校・高等学校校長
筑波大学生命環境系教授
林 久喜先生
はやし・ひさよし●筑波大学附属駒場中学校・高等学校で校長を務める傍ら、現在も筑波大学生命環境系教授として学生たちの指導にあたっている。農学博士として多くの論文発表、受賞歴をもつ。
筑波大学附属駒場中学校副校長
梶山 正明先生
かじやま・まさあき●1983年から都立高校教諭として10年間勤務後、1993年に筑波大学附属駒場中学校・高等学校へ。理科・化学を担当。2017年4月より現職。
昨年70周年を迎えた筑波大学附属駒場中学校・高等学校。
東大進学率、東大理Ⅲ合格者数ともに日本一の学校だが、受験指導は基本的にしないという。
卒業後、華々しい活躍を見せる筑駒生は枚挙に暇がない。そんな彼らの強さの原点をさぐる。
※この記事はTOMAS会員誌「冊子版Schola」第8号(2019年春号)の特集を再編集したものです。
昭和22年に東京農業教育専門学校の附属校として設立されました。その後専門学校が東京教育大学(現筑波大学の母体)に包括され、専門学校の閉校に伴い筑波大学直属の附属校になったという経緯があります。
中1生が1年間、米づくりを経験する水田学習というものがあります。稲刈りや餅つきなど一部だけを体験するのではなく、除草などのメンテナンスを含めた全工程を責任もって担当する。実際に汗水たらして、泥だらけになりながら米をつくることで、食糧の大切さについて学ぶのです。
先輩が苦労してつくった大切なお米は、1学年下の新中1生の入学式でお赤飯として振舞われるのが本校の伝統行事になっています。
本校には音楽祭、体育祭、文化祭、地域研究、さらに中学生は弁論大会など、様々な行事があります。これだけあれば、どこかで必ず自分がリーダーに回る機会があります。一方でサポート役に回る行事もあるでしょう。これがとても重要なのです。自分の得意分野では率先して動き、自分より得意な仲間がいる場面では素直に認めて力を借りる。6年間そういった経験を積み重ねていくことで、真のリーダーシップを学んでいきます。
本校に入り自分よりはるかに優れた能力をもつ同級生と出会うことで、最初はショックを受けることもあるかもしれません。しかし、「敵わない」と仲間の優秀さを認める一方で、別の場面では自分の優秀さを周りが認めてくれる。自分の強み弱みを理解するので、自信を失う生徒はいません。良いと思ったことは素直に認めて称える価値観も自然と身についていきます。
授業でも生徒が斬新な解法を発表したり、教員がすばらしい講義をしたりしたときなど、拍手や歓声が起こるのです。校長に赴任し、初めてこの場面を見たときに、良い学校だなと思いました(笑)。
音楽祭は毎年6月、各クラスで課題曲と自由曲を披露する行事です。本番は昭和女子大学の人見記念講堂をお借りし、審査はプロの方にお願いしています。会場も審査員も「本物」。やはり本物に触れる経験は大切ですね。厳しい評価に落ち込むこともありますが、だからこそ「来年こそは認められたい!」と燃えるのです。
高3生も全力で取り組みますよ。夏休みは勉強に集中させますが、9月10月は文化祭の準備に全力投球するのが本校の伝統です。大学生のOBを招いて行う進学懇談会では「これで受験は間に合うのか」という質問が必ず出ますが、OBの返事は決まって「まずは文化祭を全力でやりきれ」。受験の結果を見ても、文化祭で活躍していた生徒は志望校に合格していることが多いですね。忙しい中で受験勉強を進めるので、時間の使い方も上手になります。
本校では先生方の創意工夫により、知的好奇心をくすぐるような面白い授業が展開されています。生徒が面白いと感じ興味をもてば、「やらされる」のではなく、自ら進んで学ぶようになります。
また、先取り学習をしないことも特徴です。中高一貫教育では進度の速い学校も多いですが、本校では各学年で学ぶべき内容をじっくり深く扱います。中学で3クラス、高校も4クラスと少なく、全クラス同じ教員が指導を担当するのでクラス間での進度のばらつきも出ません。
高校で新たに40人が加わり、各クラスに10人ずつ合流します。行事が盛んであることに加え、5月に3泊4日の合宿もあるので、打ち解けるのは早いですよ。学習進度については高入生(高校から入学した生徒)のほうが進んでいることもあるので困ることはないでしょう。
学力については、ペーパーテストの出来だけを見れば、高校受験に照準を絞って仕上げてきている高入生のほうが高い傾向にあります。しかし、卒業時の結果を見ると差は全くありません。
毎年、筑波大学の教育実習生を受け入れているほか、中3と高2の二回、研究室訪問を行っています。20以上ある特別講座の中から生徒は興味のある講座を2つ受講できます。「ips細胞の実用化に向けて」など最先端技術の講座が人気が高いですね。
申請して認められれば大学の設備を使用することもできます。先日も自分が発見した定理が正しいか検証するために、大学のスーパーコンピューターの使用を申請した生徒がいました。
2017年度から4期目として「国際社会に貢献する科学者・技術者の育成をめざした探求型学習システムの構築と教材開発」がスタートし、課題研究のための情報教育などにも力を入れています。
また、理系に限定せず幅広いテーマを扱ってきたのも本校の特徴です。社会科学に関するテーマでは、水俣病の研究のために現地でフィールドワークに取り組んできました。
中2は東京、中3は東北、高2では関西の地域研究を行っています。話を聞く方へのアポ取りから、300~500ページに及ぶ報告書の編集まですべて生徒主体。7~8名程度の班に分かれてテーマや調査内容も自由に設定できます。放っておくとグルメ関連のテーマにしようとする班が多いので担任の先生はかじ取りが大変なようです(笑)。
今年度は1月にタイの国際サイエンスフェアに本校の生徒3名が招待され研究成果を発表しました。印象的だったのは、他国の参加者はリーダー1人がまとめて発表をすることが多い中で、本校は3人それぞれが自分の得意とする所について交代で発表していたことです。リーダー役サポート役の両方を経験してきた筑駒生の個性が表れているシーンでした。
毎年12月に台湾の台中市立第一高級中学、3月には韓国の釜山国際高校を訪問し、生徒間の研究交流会を行っています。そこで知り合った外国の優秀な学生たちとその後もインターネットで連絡を取り合っているようです。彼らの今後の活躍が本当に楽しみですね。
知識の詰め込みが必要な問題は出さないようにしています。小学校の教育課程で習った知識があれば解ける、しかし、文章をよく読みよく考えなければ答えにたどり着けない。そのような練った問題を出題するようにしています。時間配分は難しいかもしれませんが、満点を求める試験ではありません。自分の得意不得意なども考慮して臨んでいただければと思います。
素直な子ですね。やると決まったらまずは全力で取り組んでみる柔軟さ・素直さが大切だと考えています。好き嫌いをせずにまずやってみることで自分の得意不得意が見えてきます。知らず知らず様々な力もついてくるものです。大学受験の通過点として中高生活をとらえるのではなく、勉強も行事も部活も学校生活すべてを全力で楽しみたいと考えている方にぜひめざしていただきたいと思います。
進学実績の高さにばかり注目が集まりがちですが、「筑駒」が大事にしてきたのは、一見志望校合格からは遠回りな指導でした。学校生活を全力で楽しみながら、6年間力を溜めた彼らの活躍が楽しみですね。
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校舎見学はいつでも大歓迎。お近くの校舎をお気軽にのぞいてみてくださいね。