有名中学校 校長先生ロングインタビュー

第18回 浅野中学・高等学校 古梶 裕之 校長

-2020.01.09

浅野中学・高等学校 古梶 裕之 先生

Profile

浅野中学・高等学校 校長
古梶 裕之先生
こかじ・ひろゆき
●浅野中高第61期生。大学卒業後、平成元年より浅野中高にて数学科教諭として
勤務。学年主任、教務部長、教頭を経て2020年4月より現職。

今年の1月に創立100周年を迎えた神奈川の名門、浅野中学・高等学校。
新型コロナウイルス感染防止措置による休業が続く中で行った対応や、
文武両道で名高い浅野のカリキュラムや施設、教育方針などについて
古梶裕之新校長にお話を伺った。

※この記事はTOMAS会員誌「冊子版Schola」第13号( 2020年夏号)の特集を再編集したものです。

我らは百難 打越し行かん
苦難に負けず、諦めずに挑戦を続ける

緊急事態宣言が発令されてから、どのような対応をしていましたか?

 発令直前まで、4月初旬に予定していた入学式を開催しようと準備を進めていました。卒業式にも参加できずに4月を迎えることになってしまった新入生たちに、なんとか新しいスタートの区切りをつける場を設けてあげたいと考えていました。しかし、入学式の前日に緊急事態宣言が発令されたため中止が決定し、新入生たちにはweb画面上で、初めての挨拶をしました。
 休業中の学習指導については、当初は緊急事態宣言が連休明けに解除される予定だったため、多くの科目で1カ月分の課題を出しました。オンライン授業を実施したのは、事前に準備が済んでいた一部の授業のみで、時間割などもなく不定期配信でした。連休明けからは、一日4時間の時間割を事前に発表し、朝のHRもオンラインで実施するようになりました。ゲスト教員と担任が日替わりでHRを担当するのですが、生徒たちは今日は誰が話をするのかと楽しみにしてくれていたようです。第一回目は私、二回目は副校長が話をしました。
 授業は6月から再開します。6月1日に入学式のかわりとなるセレモニーを企画しておりまして、新入生全員の名前を読み上げるというWebではできなかったことを実施する予定です。校長の挨拶の一言目は決めています。「みなさん、ようやく会えましたね! 」

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オンラインでメッセージを伝えた。

2カ月待ってようやく初登校できた日というのは、一生の思い出になりそう
ですね。
ところで、貴校にとって2020年は、コロナ対応以外にも特別な年だと聞いて
います。

 2020年1月をもって、本校は創立100周年を迎えました。実業家であった浅野總一郎翁が73歳のときに、世の中に奉仕・貢献できる人材を育てたいという想いから当時の浅野綜合中学校を設立しました。努力を重んじた方で「努力」という書が校内に掲げてあります。当時は工場実習なども行っており、今のような進学校ではありませんでした。

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校内に今も掲げられている直筆の書。

進学実績については1980年代後半から伸びてきた印象がありますね。

 その時期から伸びてきたのには理由がありまして、80年代半ばに試験日をそれまでの2月1日から2月3日に変更したのです。公立ではなく私立に通わせたいご家庭が増えた時期とも重なり、受験者数が一気に増えた結果、優秀な生徒が多く入学してくるようになりました。
 進学校といえる実績が出るようになってからは、先輩たちの背中を見て後輩たちもやる気になるという文化が根付いています。これは学校案内にも載せていないことなのですが、本校の伝統の一つに、掲載の許可が取れた生徒については合格先と名前を職員室の前に貼り出すということがあります。この掲示を一番熱心に見に来るのが、部活動の後輩たちなんですよね。全力で部活動に打ち込みながら自分たちを引っ張ってくれた先輩たちが、引退後に受験でも結果を出したということを中1から高2まで5年間見続けることで、自分も部活や受験を全力でやりきろう! と思えるようになります。そして受験学年を迎えると、今度は自分が後輩たちにかっこいい背中を見せようと励んでいます。

部活動が盛んな貴校らしい素敵な伝統ですね。話を100周年に戻しますが、記念の式典などは行われたのですか?

 AOHAfes(Asano OneHundred Aniversary festival)というイベントを実施しました。3年前に生徒会に日程と予算だけを伝えて、全生徒が楽しんで参加できるイベントを企画してくれるよう依頼しました。当時の中3の代が中心となって、3年かけて準備を進めてくれました。当日は映像と身体表現を融合させたプロのパフォーマンス団体をゲストに招き、生徒もステージに上がって一緒に楽しんだり、浅野のスター発掘企画やクイズ大会を行ったりするなど、教員が企画する式典とは異なるイベントになりました。生徒が主体となってこれほどのイベントを企画運営する姿を見て、彼らには無限の可能性があると改めて感じましたね。
 AOHAfesとは別に、3月に教員が運営する100周年記念式典も準備しており、目玉コンテンツとしてさまざまな分野で活躍する浅野のOBたちからのメッセージ動画を作成しました。しかし、式典中止のため、まだお披露目できていません。機会を設けてぜひ、生徒たちに見せてあげたいと考えています。

今年は学校見学などが実施されず、校内のようすが気になっている受験生も多いと思います。今回敷地内を拝見して、運動施設の充実ぶりが印象的でした。

 部活動の環境整備には力を入れています。屋外では人工芝のグラウンド、100mの陸上走路、3面のテニスコート、ハンドボールコート、野球練習場。体育館にはアリーナ、ボクシング場、柔道場、剣道場、トレーニングルーム、室内プールなどがあります。また、図書館にも拘りがあります。選書は図書委員と司書教諭が協議しながら行っており、難しいタイトルの書籍が並んで圧迫感が出ないように間隔を空けたり、奥の棚の本のタイトルも見渡せるようにするなど工夫が多くなされています。

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屋内プール

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ボクシング場

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器具はOBが寄贈したトレーニングジム

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拘りが詰まった推薦図書コーナー

先ほど拝見しましたが、利用したくなる仕組みが至るところに詰まっていると感じました。続いてカリキュラムについてお聞きします。

 説明会などでも聞かれることが多いのは中3から導入される英数の選抜クラスですが、選抜クラスに入ることに捉われすぎて、英数にばかり時間を割いたり、部活動や実技系科目を疎かにするようではいけません。大事なのはバランス感覚です。高い学力を養う一方で、理社や芸術分野の学習も大切にして欲しいと考えています。
 教科指導については、特に英数理の3教科は基礎を固めた上で、中3年からは高校で学ぶ内容にも踏み込んで学習をします。高2からは希望進路に応じた授業体系に移行し、高3では各大学の入試に対応した演習を中心とした授業を行います。また、本校の特徴として、担任は職員室ではなく各学年のフロア内にある控室にいるので、学習面の質問や進路相談まで気軽に話しに行きやすい環境となっています。

グローバル教育についても多くのカリキュラムが組まれていますね。

 今後グローバル社会で活躍するうえで、文化や価値観の異なる人たちと協働することもあるでしょう。そのために必要なのは語学力だけではなく、相手の話をしっかりと聞いて、相手の立場や気持ちも汲んだ上で自分の意見を伝えるコミュニケーション力です。「ベーシックコミュニケーションプログラム」では中2の終わりにこの2年間で学んだ英語がどの程度通用するのか、10人程度のグループに分かれてネイティブの英語講師18人と、1日6時間、3日間かけて全講師のプログラムに参加します。「YISH Academia」では横浜市国際学生会館に滞在する外国人留学生と身近なテーマについてディスカッションをします。留学生は英語圏以外の出身者もいるため、お互いに“勉強中の英語”を使ってコミュニケーションをとることの大変さを知ることができます。「Global Day-trip」では成田国際空港に行って、日本での観光や活動を終えて出国を控えている外国の方にインタビューをします。安全のため各グループに外国人スタッフが1名付き添いますが、質問内容を考え、インタビューの交渉を行うのは生徒自身です。実際、話しかけてみないと何語を話す方かわからないので、ジェスチャーを交えてコミュニケーションをとるケースも出てきます。インタビュー後には生徒たちが折った折り鶴を御礼にプレゼントしたりしており、なかなか好評なようです。
 短期留学ではスタンフォード大学やオックスフォード大学を訪問するカリキュラムがあります。オックスフォード大学では現地の学生たちとのグループワークやディスカッションをする2週間のカリキュラムに、中3~高2の生徒約36名が参加しています。ここでも現地の学生引率のもとで、イギリスの街に出て街頭インタビューを行っています。

学校再開直前で大変お忙しいなか、貴重なお時間をいただきありがとうございました。最後に貴校を志望する小学生と保護者の方へ向けて、メッセージをお願いします。

 「浅野は運動部が盛ん」というイメージをおもちの方もいらっしゃるようで、説明会で「運動が苦手なのですがついていけるでしょうか?」とご質問いただくことがあります。文化部に所属して活躍する生徒もたくさんいますので、ご安心ください。今はまだ学校見学会などの実施は難しいですが、6年間を過ごす大事な場所ですので、落ち着いたらぜひ親子で学校を見に来ていただきたいと思います。

取材を終えて―

TOMAS入試対策本部 本部長 松井 誠

p8休講措置がとられる中で、オンライン配信や時間割を急ピッチで整えたり、毎日リモートHRを実施するなど、教員の方々が情熱をもって生徒たちのために創意工夫されていたお話が印象的でした。


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