子どものやる気を奪う親を考える
お母さんたちが中学受験で抱える悩みの中で大きなウェイトを占めるのが「子どものやる気がない」というものです。「どうしたら、やる気になってくれるのでしょう?」「もういっそ、中学受験から撤退したほうがいいのでしょうか?」というご相談は後を絶ちません。
中学受験にはこの「やる気」問題が付きまとうといっても過言ではありません。大人であっても「今日は仕事に行きたくない」とか「お皿を洗うのが面倒くさい」という気持ちになるのは日常茶飯事。日常生活の様々な場面で「やらなくては!」という気持ちはあっても、常にミッションコンプリートというのは相当、ハードルが高いと言わざるを得ません。
ましてや、中学受験をするのは小学生です。目標に対する意志が相当強い子でない限りは、勉強漬けの毎日、しかも長丁場ですから息切れするのも無理はないというものです。
しかし、そうは言っても、志望校合格のためには学習は必須。これについては、以前「やる気を引き出す方法を考える」というコラムを綴っていますが、今回はその逆で「やる気をなくす方法」を考えてみたいと思います。
中学受験に挑む子どもたちは親の立場から言えば「子ども自身の未来のため」に日々を頑張っていると思われがちです。しかし、実際はどちらかと言えば「親のため」、特に「お母さんの期待に応えたい!」と思っている子どもも少なくないのが実情です。
つまり、「親のために頑張る!」ということがモチベーションになるケースがあるということ。逆に言えば子どものやる気は、上がるも下がるも親次第とも言えなくもないのです。
子どものやる気を失せさせる親の特徴は以下の5つに分けられます。
1 比較する親
塾の友人、兄弟姉妹、親戚の子、あるいは親自身の学歴。子どもよりも実力が上の人を持ち出して成績や進学先などを比較する行為は、子どものやる気を一瞬にしてなくさせます。
同級生の子と比較して「A君、クラス上がったそうじゃないの?」という言葉は親にとっては世間話のつもりでも、子どもにとっては「それに比べてあなたは…」と言われているのと同じ。「クラスが上がらない自分はダメな子」というメッセージに聞こえてしまいやすいのです。
親がわが子を発奮させようとして「〇〇学園に行っているB君みたいに頑張れ!」という言葉も、「ヨシ! 僕も頑張るぞ!」にはなりにくいものです。子ども自身が強烈にB君や〇〇学園に憧れの気持ちを持っているならば別ですが、そうでなければ単なる親の願望の押し付けと捉えられがちです。
「B君」と「B君みたいになれない自分」との比較で、やる気のバロメーターが低下しかねませんから注意が必要です。
また、「勉強しないとパパみたいになっちゃうわよ!」といった比較もやる気の効果は生み出しません。人は“脅し”では、なかなか、本気にはなれないからです。
受験に限らず子育てで大切なことは「比較しないこと」なのですが、数字での評価が明確に出てくるのが中学受験です。数字は親の焦りを誘発しますので、ついつい、周りが気になるというものですが、ここは堪え時です。
比較をしたくなったなら「横ではなく縦」という言葉を思い出してください。横は塾仲間などのわが子以外の人物、縦はわが子の成長です。一昨年のわが子、去年のわが子、3ヶ月前のわが子という形で、わが子自身の過去と比べて、その成長を喜べる親のほうが、子どものやる気は上がります。
2 頑張りを認めない親
大抵の場合、中学受験は小4から小6までの3年間、塾に通い受験勉強をすることになります。当然、学校の授業を受けた後になりますし、特に6年生ともなると土日も模試や課題に追われるようになるのが普通です。
このようなハードな毎日を送っているだけでも、相当、頑張っているわけです。
やる気が見られないと思うと、親もイライラして、つい叱責したくなりますが、そこは北風と太陽作戦。「頑張ってることはお母さんも分かっているよ」という具合に、今の子ども自身の頑張っている気持ちを認めてあげるほうが、結果的に“やる気アップ”に繋がります。
どうしたって、受験直前(あるいは本番が始まった際)には、子どもも本気になります。最後は1点にかける気力の勝負になりますので「自分はやれる!」という自信を付けさせていくという戦略が有効になったりするもの。少しでも頑張っている点(日々の漢字課題に取り組めたなど)があれば、「頑張っているね」と声をかけてあげてください。
3 もっともっとと煽る親
例えば、子どもが100点満点中98点を取ってきたとして、「あと2点で満点だったのに」と口に出す親御さんは要注意です。
あるいは「偏差値46? せめて50はないと、どこにも受からないわよ」などという親の期待値が先に出てしまう親御さんも、子どものやる気を奪いやすい親になります。
親から「もっと!もっと!」と追い立てられるように感じてしまう子どもは、息切れしやすいのです。中学受験での親の役割は「点数を伸ばす」ことに注力するのではなく、中高6年間で子どもが伸び伸びと成長していける学校を探すことです。
4 成績にしか関心のない親
中学受験は数字で判断されやすいものなので、親の関心も偏差値や志望校への合格確率、クラス順位などに集中しやすいのですが、そこにしか関心がなくなると、子どものやる気が下がるケースが多くなります。
昨年の話ですが、ある女の子が塾のトイレに小テストの解答用紙を流してしまい、大問題になったことがありました。
自宅に帰っても、お母さんが常にテスト結果を気にするので、持ち帰りたくなかったそうです。女の子からすると、追い詰められての行為だったのですが、結果的にその子は退塾。受験はしたものの、満足いく結果にはなりませんでした。
せめて食卓では、成績の話はせずに楽しい雰囲気にしてあげてください。勉強以外の自由時間や息抜き、楽しみを持つことは受験勉強期間中だからこそ、より重要です。
5 中学受験への意見が異なる親
子どもは大人と比べて圧倒的に力がありませんので、基本的には親に従うことになります。
中学受験はご家庭の教育方針で「やる・やらない」が決まるものですが、ご家庭が一致団結しているほうが、結果が良いという傾向があります。
両親の教育方針が合致していない場合(例えば、父親は中学受験反対派で、母親は賛成派で通塾がスタートしたケースなど)は、些細な問題で夫婦間での諍いが起こる可能性が出てくるのです。
子どもはどちらに付いていいか分かりませんから、戸惑うばかりでしょう。それは、勉強面でもマイナスにしかなりません。
受験攻略法はコツコツと努力を重ねていくしかないのですが、それは落ち着いた居心地の良い家庭のほうが成し遂げられる確率が高いもの。できれば、受験を決める前に「わが家の教育方針」を話し合い、受験するとなったら、その上で夫婦の役割分担を相談することが望ましいです。
上記5項目に注意しながら、子どものやる気を奪わないように努めていくと、その後の親子関係も良いものになりますし、なにより、子ども自身のその後の人生がのびやかに広がっていきやすいです。
中学受験は「家族の受験」。人生で1回しか体験できない中学受験をぜひ、家族全員で楽しんでほしいと願っています。
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