おかあさんの参考書
受験生のゲームや動画視聴を考える

受験生のゲームや動画視聴を考える

鳥居りんこ

中学受験は言うまでもなく小学生の受験なので、どうしても親の出番は多くなります。
親の役割としては「時間管理」「プリント管理」「健康管理」さらに「情報管理」といったものがあり、親の負担感が少なくない世界ではあります。

親、大人としての「秘書」業務

「時間管理」は塾に子どもを送り届けたり、帰宅時すぐに夕飯を食べられるように準備をしたりといった日々のスケジュールに合わせた細かい作業。「そろそろ、過去問のお時間ですよ」といった声掛けも含まれます。敏腕秘書並みの働きを要求されるかのようですが、これは粛々とやるしかないものです。

「プリント管理」も親の仕事の範疇に入ります。もちろん、子どもが自分でやれるならば一番いいのですが、そこまでのスキルが育っていないのがむしろ普通、そして、プリント量が膨大過ぎて子ども自身に整理する時間がないなどの理由で、こちらも大人である「秘書」の仕事になります。

「健康管理」は受験生であろうがなかろうが親の務めです。しかし入試は真冬に行われますので、小6生の親は、受験本番前は特に、様々な感染症に負けない体作りに腐心しなければなりません。睡眠時間を削らないようにさせる、なるべく栄養のある食べ物を摂らせるなど、基本的なことを淡々とやっていきましょう。

そして、「情報管理」。こちらは学校情報を入手したり、願書提出方法を熟読したりと、親の出番! という部分です。情報は発信源が信頼できるものかどうかを確かめた上で、「わが家に真に有益」なものだけを上手に取り入れるようにしてください。

ゲームや動画視聴、SNSの危険性

最近では「情報管理」に親の新たなミッションが加わっております。それは「子どもの情報管理」です。

今の時代は小学生であっても高学年であればスマホを持っている子も珍しくはありません。ましてや通塾生ともなると、親の安心感のために親のほうから携帯電話やスマホを買い与えるケースは多いでしょう。
フィルタリングは法律で義務付けられていますが、これだけで安心はできません。インターネットにつながることで事態は複雑化。大きな問題になってしまうこともあり得ます。

ひとつは動画視聴。ゲームや動画コンテンツは確かに魅力的なので、長時間視聴につながってしまうケースがあります。
中学受験生の毎日はとても忙しいものです。平日は学校の日程をこなした上での塾通いになりますし、高学年になるにつれて土日休みも模試だ、振り返りテストだとなり、勉強時間は大幅にアップしていきます。ただでさえ時間がないのですが、ここに「誘惑の魔の手」が入ると、それを断ち切るには大変な労力を費やしてしまいかねません。

パソコンやタブレットによる「勉強動画ならいいのでは?」とおっしゃるお母さんもおられますが、塾の先生方の10人中10人が反対なさる行為です。何故ならば、動画ではひとつの正答を解説することが多いので、そのやり方に固執してしまう。さらには、動画の勧める解き方を真似するだけになりかねないので、肝心な自分の頭で考えるという「勉強の基本」がおざなりになるということです。

中学受験は正答を求めるためにやるのではなく、自分の頭で考えて、その考えを言葉にして書くという「生きるスキル」を身につけるためにやるもの。特に「復習型」の塾に通っているお子さんの「予習」のための動画利用は、理解した気になっているだけにつながりかねないので避けたほうが、長い目で見ると有益だと思います。

さらに「SNS」(ソーシャルネットワークサービスの略。インターネット上のコミュニティサイトのこと。代表的なものに「LINE」「Facebook」「Instagram」がある)の存在があります。
大人であっても、このコミュニケーションツールとの付き合いは難しいのですから、子どもであればなおさらです。息抜きのために始めたつもりが、大きなストレスの元になりやすいです。

実際に上記のようなリスクがある「ネット」なのですが、適度に楽しむためには、やはりルールが必要です。

子どもも親もルール厳守で

「スマホ、パソコンなどを買い与える前に、夫婦で話し合った『我が家のルール』を明確に文章化しておき、子どもに納得させること」
これが大前提ですが、既にスマホやタブレットを買い与えている、あるいはネット視聴をしている場合は大至急、ルール作りをしましょう。

動画視聴やゲーム、SNSの危険性について、まずは親が十分に認識することが先ですが、子どもには分かりやすい言葉で客観的に伝えることが大切です。

その際、ルール違反は「即刻没収」を明言しておくこと(そもそも保護者の資産の一部であるので、貸与者(子ども)には権利がないことを伝えておく)や、使用はリビングのみ、自室に持ち込まない、いつでも親が中身をチェックすることが出来るなど、親の管理下に置くことを徹底できるかということも、中学受験を成功させるか否かの重要な鍵になります。

子どもにルール厳守を求めるのですから、親自身にもある程度の規制は必要です。親自らゲームを無限にやってしまうなどは問題外の行為です。

少し厳しめかなとも思える内容ですが、ほんの少し前の世の中にはなかった機械です。つまり、子どもにとっては、なくても生きていけないほどに困る類のツールではないということです。一度、ルールを緩めると際限なく例外が広がるのもよく聞く話です。

中学受験は真剣勝負。機械に時間を乗っ取られている暇はないのです。本当に大事な問題だと思いますので、今回は敢えて強めなアドバイスをさせていただきました。

中学受験保護者をやるのも、なかなかにしんどい業務が沢山あるのですが、きっと未来は家族全員が笑顔であると信じて、日々、できることを頑張っていきましょう。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)など多数刊行。最新刊は『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)

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