おかあさんの参考書
親の言葉づかい! 2つのことに気をつければ、親子関係がよくなる

親の言葉づかい! 2つのことに気をつければ、親子関係がよくなる

親野智可等

親子関係をよくすることは、一般的に親御さんたちが思っている以上に大切です。
親子関係は、子どもにとって自己肯定感と他者信頼感の土台であり、親子関係が悪いと自己肯定感も他者信頼感も育ちません。

親子関係がよければ、思春期に何か悪い誘惑があっても、大事な親に心配をかけたくないという気持ちが働いてブレーキがかかります。

逆に親子関係がよくないと、「どうせ僕なんか(私なんか)どうなってもいいんだ」「親に心配させてやれ」「本当に心配してくれるか見てみよう」などの気持ちが無意識のうちに働いて、ブレーキがかからなくなる可能性があります。

親子関係がよいと勉強にも運動にも集中できます。
親子関係が悪いと気持ちが不安定になるので、当然、勉強にも運動にも集中できません。

こういった親子関係の大切さについては、こちらに詳しく書いてありますので、ぜひ参考にしてください。

では、親子関係をよくするうえで大事なのは何でしょうか。
いろいろなことが挙げられますが、私が強調したいのは、やはり「言葉」です。

なかでも、次の2つに気をつけることが大切です。

1. 否定的な言葉をやめて、肯定的な言葉や共感的な言葉を使う
2. 言葉の順番を意識する

いくつかの具体的な場面で考えてみましょう。

不十分なところを直してほしいとき

子どもが玄関を掃除するのを見て、いきなり「隅にまだゴミが残ってる。ちゃんと掃かなきゃダメ」では、子どもとしてはつらすぎます。

言葉の順番として、まずは「いつもありがとう。助かるよ」という肯定的なひと言が大事です。
その後で、「ついでにその隅のゴミも取っておいて」と言えば、子どもも喜んでやってくれます。

このように、最初に肯定的な言葉があれば、そこで子どもの気持ちがオープンになります。その後で、こちらが言いたいことを言うようにすれば、気持ちよく受け入れてもらえます。

Yさんの経験談です。
子どもが洗濯物をたたんでくれたのですが、Yさんは「ちゃんと端と端を合わせなきゃ」と言ってしまいました。

すると、子どもは「もうやらない」とつまらなさそうに言いました。
Yさんは「しまった」と思ったのですが、後の祭でした。

まずは、「ありがとう。助かるよ」のひと言があるとよかったですね。
その次に、「これ、端と端が合っていて気持ちいいね」とうまくできている部分をほめるなどして、最後に「じゃあ、これも端と端を合わせてみよう」と言えばよかったと思います。

子どもが食器をテーブルに並べてくれたら、「お箸は箸置きに置かなきゃダメ」ではなく、「ありがとう。助かるよ」と言いましょう。

その後で、「ここに箸置きがあるから、使ってね」と言えば、子どもも気持ちよくやってくれます。

子どもが書いた字で、どうしても直させたい字があるなら、いくつかほめた後で「これを直そう」と言いましょう。

ほめられた後なら、子どもは喜んでやってくれます。

子どもに片づけてほしいとき

夕食の時間になったのに、食卓が子どもの玩具でいっぱいだったとします。
このとき「これじゃ食べられないでしょ。片づけなきゃダメ」では、子どもは嫌な気持ちになりますし、反抗したくもなります。

まずは、「いっぱい遊べたね」とほめてあげるといいですね。

あるいは、
親「これ、どうやって作ったの?」
子ども「これをこうして作ったんだよ」
親「よく考えてるね!」
というように、楽しくおしゃべりするのもよいでしょう。

その後で、「さあ、片づけて夕飯だよ」と言います。
この順番ならおたがいに幸せな気持ちになります。

子どもが「見て見て」と言ってきたら

子どもが「できた。見て見て」と言ってきたのに対して、「今、手が離せないでしょ。ちょっと待ってなさい」では悲しすぎます。
そこは、「できたねえ。すごい」とひとまず受け入れましょう。

それから、「これだけやっちゃうから、ちょっと待っててね。後でよく見せて」と言ってあげてください。
この順番なら、子どもも安心して待つことができます。

子どもの帰宅が遅くなったとき

子どもが習い事からいつもより遅く帰ってきたとき、いきなり「こんなに遅くまで何してたの!?」と言ってしまいがちだと思います。
でも、これでは子どもの心が閉じてしまいます。

まず「何かあったんじゃないかと心配になっちゃったよ」と言ってから「何をしていたの?」と言えば、かなり違ってきます。

何かを買ってほしがるとき

子どもが「○○を買いたい」と言い出したとき、「ダメ、買えないよ」「この前□□を買ったばかりだから無理」など、門前払いするような言い方では子どもの不満がたまります。

まずは、共感的に「確かにあれ、かっこいいよね」「ほしくなるよね」と返してあげましょう。
あるいは、「どうしてそれがほしいの?」と返して、ほしい理由を聞いてあげるのもよいですね。

すると、
子ども「だって、~なんだもん」
親「そうか、確かに~だよね」
子ども「みんな持ってるんだよ」
親「みんなが持ってるとほしくなるよね」
などの会話で、子どもの気持ちを共感的に聞いてあげることができます。

そのうえで、「買ってあげよう」と思えば買ってあげればいいですし、「やはり買えない」と思えば「でも、□□だから無理だよ」と答えればよいでしょう。

これなら、子どもとしても一応気持ちは聞いてもらえたので、むげに断られるよりも、はるかに受け入れやすくなります。

子どもが「叱られた」「ケンカした」と言ってきたとき

子どもが、「先生に叱られた」とか「友達とケンカした」などの話をしたときも、すぐ「ちゃんと先生の話を聞いていないからでしょ」とか、「ケンカしちゃダメでしょ。明日、仲直りしなさい」などとお説教するのはNGです。

まずは、子どもの気持ちを聞いてあげて、「嫌だったね」「それは頭に来るよね」と共感しながら話を聞いてあげることが大事です。

何かアドバイスしたり励ましたりしたい場合は、子どもの話をたっぷり聞いた後にしましょう。
たまっていた不満を外に吐き出した後ならば、親のアドバイスや励ましも受け入れる余地ができます。

「部活をやめたい」と言ってきたとき

子どもが、「部活をやめたい」と言い出したとしても、すぐに「何言ってるの。もう少しだからがんばりなさい」と頭ごなしに言ってはいけません。

まず「どうしたの。何かあった?」と聞いて、子どもの話に耳を傾けましょう。
相づちを打ちながら共感的に聞けば、子どもも話しやすくなります。
そうして子どもがたくさん話してくれれば、いろいろな事情がわかってきます。

それによって、「先輩とうまくいっていないんだな」「ほかにやりたいことがあるんだな」「先生と馬が合わないのかも」「体力的に無理なのかも」など、やめたいと言い出した理由がわかる可能性も高まります。

そうすれば、その後の対応について、やめるにしても続けるにしても、より的確に判断することができます。

あれこれ言う前に、子どもの話に耳をかたむける

子どもの話をろくに聞きもしないで、すぐ断ったり叱ったりするのはやめましょう。
また、すぐにアドバイスしたり励ましたりするのもやめましょう。

親はよかれと思っていても、ろくに話を聞かないままアドバイスしたり励ましたりすると、子どもは「そんな簡単なことじゃないんだよ。なんで話を聞いてくれないの? この人に言ってもダメだ。もう言わないほうがいい」と思ってしまいます。

どんな対応をするにしても、まずは子どもの話を共感的に聞くことが大事なのです。

最後に、冒頭に紹介した大切なこと2つを、もう一度確認しておきましょう。

1. 否定的な言葉をやめて、肯定的な言葉や共感的な言葉を使う
2. 言葉の順番を意識する

著者プロフィール

親野智可等
親野智可等
おやのちから

教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。ブログ「親力講座」も毎日更新中。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。

教育評論家・親野智可等 公式ホームページ『親力』


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