親子関係をよくすることがどれほど大事か、わかっていない親が多い
万引きに誘われても回避できた理由
知り合いの編集者Mさんに聞いた話を紹介します。
Mさんは30代の男性です。
彼は、中学生のとき、クラスメート2人に「一緒に万引きをしよう」と誘われたそうです。
Mさんは戸惑いながらも断れず、ちょっとした興味もあったりして、あるドラッグストアの入り口まで一緒に行きました。
でも、そこで急に両親の顔が頭に浮かんできて、「やっぱり、やめる」と宣言して帰りました。
それにくじかれてか、ほかの2人もそのまま店を後にしました。
しかし、その後、別の日にその2人は万引きをして警察に捕まりました。
Mさんは、「振り返ってみると、あのときはちょっとした人生の分かれめでした。両親のことが大好きだったから万引きをしないで済んだんだと思います。大好きな両親を悲しませたくなかったんだと思います」と言っています。
Mさんが子どものころ、両親はいつも笑顔で優しくて、Mさんを慈しんでくれていたそうです。
日頃からよくほめてくれて、叱られた記憶は全くないそうです。
ですから、Mさんも両親が大好きだったのです。
親子関係がよければブレーキがかかる
このMさんのように、思春期にはこういう悪い誘惑を受けることがあります。
そういうギリギリの選択を迫られるときに、ブレーキがかかるか否かは、Mさんの言うように人生の分かれめといっても過言ではありません。
Mさんのように親子の関係がよい場合、「大好きな両親を悲しませたくない。泣かせたくない。心配させたくない」という意識が働いて、正しい選択ができるようになります。
ところが、親子関係が悪い場合、そのブレーキが効かなくなってしまう可能性が高まります。
場合によっては、ブレーキどころか「親が自分のことを心配するか見てみたい」という気持ちすら生じて、アクセルになってしまうことすらあります。
このように、親子関係をよくしておくことは、普通に親たちが考えている以上に大切なことなのです。
親子関係がよい子は、いじめを止める側になる
次の研究も、親子関係をよくすることの大切さを示していると思います。
大阪市立大学の故・森田洋司名誉教授の研究によると、自分の学級にいじめがあるとわかったとき、生徒の行動は次の3群に分かれるそうです。
1)傍観者群
2)いじめを止めようとする群
3)いじめを増大させる群
この研究では、2の行動をする生徒たちは親子関係がよくて、3の行動をする生徒たちは親子関係が悪いという顕著な相関関係があることが明らかになりました。
この研究でも、親子関係を良くすることの大切さがわかります。
親子関係がよいと「他者信頼感」が育つ
私は長年教壇に立って数多くの親子を見てきましたが、その経験からも親子関係の大切さを強調したいと思います。
親子関係は、子どもにとって最初の人間関係であり、そこでよい関係を築くことができると、「人は信頼していいんだ」という認識を持つことができます。
それによって、他者一般に対する信頼感、つまり「他者信頼感」を持つことができるようになります。
これがある子は、一生涯に渡って良好な人間関係を築くことができます。
逆に、親子関係が悪いと「他者不信感」を持ってしまいます。
これは言い換えると「人間不信」であり、良好な人間関係を築けなくなる可能性があります。
また、親子関係がよい子は、よくほめられて自己肯定感が育っています。
ですから、勉強や運動やイベントなどでも「おもしろそう。やってみたい。自分はがんばれる。できる」と感じることができます。
それによって、積極的なチャレンジが可能になります。
さらに、自己肯定感がある子は、何かで挫折したり失敗したりしても立ち直ることができます。
「親子関係をよくする」をもっと大切に
このように、親子関係をよくすることはとても大事なのですが、肝心の親たちの関心は別の所にあることが多いようです。
多くの親たちの関心は、おもに次の3つだと思います。
1)勉強ができるようにしたい。学力を上げたい
2)しっかりしつけをして自立できるようにしたい
3)よい学校に行って欲しい。よい仕事に就いて欲しい。勝ち組になって欲しい
親たちは、無意識のうちにこういった願いを持っています。
中には、こういったことを達成するためには、多少親子関係が悪くなっても仕方がないと思っている人すらいるようです。
でも、私はこの3つよりも、もっともっと親子関係をよくすることを大切にして欲しいと思います。
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