「アサーション」で相手を傷つけずに 自分の言い分を伝えよう
アサーションは要注目のコミュニケーション・スキル
大人でも子どもでも、私たち人間の悩みの中で一番多いのは、「人間関係」です。
ですから、他者と上手にコミュニケーションを取るスキルを身につけることができれば、それは一生の財産と言えます。
現代では、そのための具体的かつ体系的な方法もいろいろと開発されています。
その中でも、特に実践的で取り組みやすいのが「アサーション」です。
アサーションとは、自分も相手も大切にする自己表現の方法です。
もともとアメリカで開発され、1980年代に日本にも紹介されました。
最近では、コミュニケーションのスキルを高めるために、アサーション・トレーニングを取り入れる企業や学校も増えているようです。
自己表現には3つのタイプがある
アサーションでは、コミュニケーションのための自己表現を、次の3つのタイプに分類しています。
1)アグレッシブ(攻撃タイプ)
自分を中心に考え、相手のことは考えないまま、言いたいことを言う。
命令する、指示する、押しつける。強がる、怒鳴る、脅すなど。
いばり屋タイプであり、漫画『ドラえもん』のジャイアンのような感じ。
2)ノン・アサーティブ(非主張タイプ)
自分の気持ちを抑えて、相手の言いなりになってしまう。
言いたいことや言うべきことを言えない。
消極的、引っ込み思案、口ごもる、卑屈な感じなど。
おどおどタイプであり、漫画『ドラえもん』ののび太のような感じ。
3)アサーティブ(調和的タイプ)
相手の気持ちに共感したり尊重したりしながら、自分の言いたいことも上手に言える。
断るときも相手を傷つけずに断れる。
代案や妥協案を提案したりなど柔軟な対応ができる。
まさに目指すべき理想的なタイプ。
漫画『ドラえもん』のしずかちゃんのような感じ。
誘いを断るときの伝え方
次に、具体的な場面を想定して考えてみましょう。
例えば、「○○しようと誘われたけど、都合が悪い」ときの答え方です。
アグレッシブだと、「ダメ!」「ムリ!」「ダメダメ。もっと早く言ってよ」「こっちの都合も考えてよ」などの答えになってしまいます。
これでは、せっかく誘ってくれた相手を傷つけてしまいます。
ノン・アサーティブだと、「え? どうしようかな……」「えーと、えーと、あのう……」という感じではっきり自己表現できません。
このように、断るでもなく応じるでもない態度では相手も困りますし、「自分とは遊びたくないんだ」と誤解されてしまう可能性もあります。
アサーティブだと、「ありがとう! 楽しそうだね。でも、ああ、今から□□に行かなきゃならないんだよ。また今度誘ってね」「え! 行きたい、行きたい。と思ったけど、今日は帰って□□しなきゃならないんだ。明日はどうかな?」となります。
この対応では、まず相手の気持ちを受け入れて、その後で断る理由や状況を説明しています。
さらには、「明日はどうかな?」などと代案も出しています。
これなら、相手も傷つきませんし、自分も困りません。
何かを貸してほしいときの伝え方
次は、相手が使っている何かを貸してほしいときの伝え方です。
アグレッシブだと、「○○貸してよ」「早く貸してよ」「いつまで使ってるの? 私も使いたいんだけど」などになります。
ノン・アサーティブだと、「あのう……、その○○だけど……」となります。
アサーティブだと、「○○貸してくれる?」「ぼくも使っていい?」「○○を使いたいんだけどいいかな?」「使い終わったら言ってね」などになります。
親自身がアサーティブになろう
ということで、まずは、親であるあなた自身が、前述の3つのうち、どのタイプに近いかを考えてみてください。
もし、親が1のアグレッシブ(攻撃タイプ)であるなら、自分自身から直す必要があります。
なぜなら、親がアグレッシブだと、子どもは親に対して何も言えなくなってしまうからです。
それが身についてしまうと、子どもは2のノン・アサーティブ(非主張タイプ)になってしまいます。
それでいながら、自分より弱い相手には1のアグレッシブ(攻撃タイプ)に変身する可能性も高いと思います。
親がそういう見本を見せているので、モデリング効果が働いてしまうからです。
親自身がアサーティブな自己表現を心がけていると、子どもにも多大なるよい影響があります。
子どもは自分の気持ちが尊重されていると感じて、親の愛情を実感できますし、親に対する信頼も育ちます。
また、モデリング効果が働いて、子ども自身もアサーティブな伝え方ができるようになります。
親が関西弁なら子どもも関西弁になり、親が関東弁なら子どもも関東弁になります。
同様に、親がアサーティブなら、子どももアサーティブになるのです。
日頃からアサーションについて親子で考えよう
その上で、子どもにもアサーションについて教えてあげるといいと思います。
まず、自己表現には3つのタイプがあることを教えます。
次に、アサーティブな表現について教えます。
「アサーティブ」という言葉はわかりにくいので、「上手な伝え方」という言葉の方がいいかもしれません。
先ほどの2つの状況をそのまま使って、「上手な伝え方」(アサーティブ)を子どもとたくさん出し合ってみてください。
できたら、それらをホワイトボードに書いていくといいですね。
ちょっとしたミニ授業のような感じです。
さらには、日常的にテレビのアニメやドラマを見ながら、本や漫画を読みながら、「こういうとき、どう言ったらいいのか?」と親子で考えるようにするといいですね。
あるいは、親自身の仕事や生活の中で、上手な伝え方について考えさせられる状況があったら、それも話題にしましょう。
そうしていると、子どもからも話題が提供されるようになるかもしれません。
いろいろな場面や状況をきっかけに、上手な伝え方を親子でたくさん出し合うようにしてください。
すると、実際の場面でも、たくさんの選択肢からよりよい伝え方を選べるようになります。
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