第12回 慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部 会田一雄 部長
-2018.12.03
国際社会の先導者を育てるための
異文化・情報教育
Profile
慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部 部長
会田 一雄先生
あいだ・かずお●慶應義塾大学経済学部卒業。1991年より総合政策学部助教授、1999年より教授を務める。2013年より慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部長。
昨年で開校25周年を迎えた慶應義塾湘南藤沢中等部。
新校舎も完成し、来春には横浜初等部の第1期卒業生たちが進学してくる。
SFCの見据える未来について会田一雄中等部長にお話を伺った。
※この記事はTOMAS会員誌「冊子版Schola」第7号(2018年冬号)の特集を再編集したものです。
湘南の地に新しい学校を
情報教育の先駆者SFC
設立の経緯をお伺いできますか。
慶應義塾が創立125年を迎え、今までにない学際的な新しい学部を作ろうということになり1990年に湘南藤沢キャンパス(SFC)、そして総合政策学部と環境情報学部の2学部ができました。中等部・高等部ができたのはその2年あとになります。すでにある一貫教育校との差別化を図り、男女共学、中高一貫教育である本校が創設されました。慶應義塾には3つの中学校と、5つの高等学校がありますが、同じ敷地内で6年間の一貫教育を提供しているのは本校だけになります。
御校が特に教育上大事にされていることとは?
設立当初から情報教育に注力してきました。高校で取り入れているところは他にもありましたが、中等教育での導入は先駆的でした。
本校の情報教育は「情報科」の授業だけではありません。例えば英語の授業でプレゼンツールを用いて発表し、国語の授業で編集ソフトを活用して論文を作成し、社会や理科でグラフ作成やシミュレーションを展開し、数学ではデータ解析や統計技法について学ぶなど、あらゆる学問の中で日常的に情報処理能力や情報リテラシーを高める指導をしています。
英語教育についてはいかがでしょうか。
グローバル社会の先導者になれる力を身につけるうえで、やはり語学力は重要だと考えています。生の英語に触れる機会を多くもてるように、ネイティブ教員は10 名、その多くは英語の授業を担当するだけでなくクラス担任も務めています。
授業においても、よりきめ細かい指導ができるよう、中等部1年では従来の2クラス制(アルファ、ベータ)から、中間のアドバンスドベータを加えた3クラス制にしました。
帰国子女も多いそうですね。
中等部、高等部の両方で帰国生入試を設置しており、中等部で2割、高等部では3割弱の生徒が海外での生活を経験しています。最近テニスで大活躍されている大坂なおみ選手のように日本での生活経験がほとんどない、あるいは全くない生徒もいます。そういった生徒が各クラスに一定数いることで多様性が生まれます。育った国の文化や価値観を日本育ちの生徒に教えたり、逆に日本の文化や価値観を日本育ちの生徒から学んだりするなど、互いに異文化を理解する良い機会になっています。大人のいうことには耳を貸さない年ごろですが、友だちのいうことは素直に聞くものです(笑)
また、2013年に開学した横浜初等部の第一期卒業生が来春から本校に進学してくるので、今まで以上に多様性溢れるクラスになっていくと思います。
留学制度はどのようになっていますか。
アメリカ、イギリスの名門ボーディングスクールに1年間派遣する制度があります。慶應義塾の他の高校の生徒と合同で選考が行われ、派遣生には奨学金として学費・寮費・渡航費が支給されます。毎年本校からも数名が派遣されています。
本校独自の留学制度としてはアメリカ、イギリス、韓国、シンガポール、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの7カ国12校に1~3週間の短期留学ができるプログラムがあります。この制度では昨年度64名が留学しました。交換留学生も多く受け入れており、留学していない生徒が外国の学生と触れ合う機会もあります。
クラブ活動も盛んだと聞いています。
弓術部、フェンシング部、スキー部、テニス部などがインターハイや全国大会に出場しています。テニス部は昨年の神奈川県代表に選ばれました。
文化系では歌留多(かるた)部が全国大会に出場しました。一昨年に競技かるたを題材にした映画「ちはやふる」が公開され話題になりました。小泉徳宏監督が本校の第5期卒業生ということもあり、生徒たちも結果を出さねば!と気合いが入ったようです。
クラブ活動以外にも、スピーチコンテストやディベートコンテストでも多くの結果を残しています。海外で活躍し世界大会に出場した生徒もいました。
2019年度よりカリキュラムの見直しを検討しているそうですね?
真のエリートを育成するためには、早くから専門性を磨くような指導だけではなく、名著と評価される古典を学び、しっかりとした価値観、思想に触れ、教養を身に付けさせることが必要です。また、国際感覚を養うために、早い段階で第二外国語を学ぶ機会を設けることも望まれます。このような共通認識のもと、現在、中等部、高等部全体のカリキュラムの見直しを検討しています。
内部進学についてお聞きします。
他の一貫教育校も同様ですが、基本的に全員が慶應義塾大学に進学することを想定しています。獣医学や芸術系など慶應義塾が設置していない学部や、海外の大学への進学を希望する生徒もおり100%にはなりませんが、ほぼすべての生徒が慶應義塾大学へ進学していきます。
進学者数が多い学部は経済学部と法学部です。SFCに設置された高等部だからといって、同一キャンパス内の総合政策学部、環境情報学部、看護医療学部への進学者が大半を占めることはありません。6年間の中で自分が学びたい学問を見つけ、希望する学部へ進学していきます。
大学見学、大学の教授による授業などはあるのでしょうか?
4年次に理工学部の教授陣による模擬授業を受ける科学入門講座があります。5年次では各キャンパスの見学会・説明会を設けています。また、学部懇談会という全学部の大学生を招待し学生生活について話を聞く機会もあります。
また、医学部のある大学なので、保健室には内科・小児科の医師が常駐。健康管理には万全の体制を敷いています。
調査書や筆記試験にはあらわれない部分を見たい
活動報告書ではどのようなところを見ているのでしょうか?
記入いただいた内容にはすべて目を通しています。調査書ではわからないこと、家庭や地域など教室以外でどのように過ごしてきたのかを見たいと考えています。記入がないとどんなことをしていたのかがわからないので、しっかりと書いてほしいですね。
ただし、たくさん書いた方が良いということはありません。伝えたいことを書いていただければ大丈夫です。
体育実技ではどのようなところを見ているのでしょうか?
特定の種目の能力の高さを見ているわけではありません。特に対策する必要はないと考えています。
面接も気にされているご家庭が多いようです。
本校の面接は受験者本人と、保護者の2回あります。話が上手いかどうかはあまり重要ではありません。自分の言葉で自分の考えていることをしっかりと語れるようにしてください。筆記試験ではあらわれない部分を見たいですね。知名度や偏差値ではなく、本校の教育方針を理解し納得の上でご入学いただきたいので、ミスマッチを防ぐためにも保護者への面接を行っています。
受験生へのアドバイスがあればお願いします。
まずは心と体を養うこと。6年間でのびのびと成長していくために必要なことです。受験にしばられて健康を害してもいけません。自分をコントロールできるような心の強さももって受験に臨んでほしいと思います。
本校に入学した生徒には6年間で大きく成長し、今後どう活躍したいのか、どんな形で社会に貢献出来るのかを探ってほしいですね。
2019年度は横浜初等部の卒業生の受け入れ開始初年度となるため、大きな変化の年になります。新校舎も完成しました。本校で学びたい!という強い意志をもった方からの挑戦をお待ちしています。
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