おかあさんの参考書
受験を通して幸せな人生を考える

受験を通して幸せな人生を考える

鳥居りんこ

数々舞い込む受験相談の中でも多いのが「子どもを怒ってばかりで、自己嫌悪になる」というものです。先日も「塾の宿題をやらない子どもにイライラしてしまい、思わず怒鳴ってしまいました」という母からの声が届きました。

メールには「分かってはいるのです。ウチの子は偏差値も低いままですが、それでも、中学受験をしない子に比べたら、ものすごく勉強をしているってことは。でも、なぜなのか、いつもいつも子どもに『もっと!もっと!』と急かしているかのようで、ダラダラされると無性に腹が立ってしまうのです。こんな私は母親失格です。もう消えてなくなりたい…」というようなことが書かれていました。

これは子どもの中学受験を経験した人ならば感じたことがある“心の痛み”ではないでしょうか。中学受験は「親子の受験」ともいわれていますから、親がイライラしたり、ヤキモキしたりするほうが、むしろ当たり前なのですよね。

母たちも何も好き好んで怒っているわけではないので、冒頭のご相談者のように、自己嫌悪に苛まれることも多いです。怒鳴ってしまったり、心ない対応をしてしまった日の夜は、子どもの寝顔を見ながら「ごめんね、こんなお母さんで…」って謝ることも実際あると思うのです。

先のご相談者は「中学受験をさせることが、果たして子どもの幸せになるのかが分からなくなってきました」と結んでいました。

「誰かに必要とされる幸せ」のために

子どもに中学受験をさせようと思う親の動機はご家庭により様々です。

  • 中高一貫校のほうが大学受験に有利だから
  • 地元の公立中学には行かせたくないから
  • 設備が整っている良質な教育環境で学ばせたいから
  • 中高6年間をのびのびと過ごして欲しいから
  • 子どもに合った環境が選べるから
  • 中高一貫校の教育方針に惹かれたから

上記のような理由が多いですが、その大前提に「子どもに幸せになってもらいたい」という親の願いがあります。

しかし、思いとは裏腹に、いざ踏み出してみると、親子で全然幸せじゃないと嘆き悲しむ母は沢山います。受験というのは定員がある関係で、椅子取りゲームのような側面も否定できず、偏差値や塾内順位、合格の可能性のパーセンテージといった数字に支配されがちです。それらの数字は己の実力を計る物差しでしかないのですが、渦中にいるとついつい忘れてしまう──これは「中学受験あるある」かもしれません。

もしも、中学受験を続ける自信がなくなった時は、ぜひ、原点に立ち返ってみてください。

「そもそもウチはどうして中学受験をさせようと思ったんだっけ?」って。

私個人は中学受験を否定も肯定もしないのですが(なぜなら、子どもの向き不向きによるし、家庭の教育方針によるし、生活環境によるからです)、小学生であっても、頑張ることや目標を持つことは素敵なことで、 勉強もその選択肢のひとつになると思っています。

「人間は考える葦」と言われていますが、考えるにしても一定の知識は必要で、そのベースとなる基礎教養は一生ものの価値。誰にも奪われない財産です。 中学受験は、その智恵を得るためのキッカケになると思っているのです。

これから先の未来は「答えが存在しない社会」だと言われています。それゆえ現在は“自ら課題を見つけ前進する力”の育成に力を入れている中高一貫校が多いです。

大多数の学校が「社会で活躍するリーダーの育成」を目標に掲げていますが、実はこれこそが私立中高一貫校の共通理念とも言うべきものです。私立中高一貫校に設立当初から流れている理念は各校で言葉の違いはあれども、源泉は同じ。つまり「社会貢献」なのです。

中高一貫校で学ぶということは社会全体から見ると、それだけで恵まれた環境にいるということ。それゆえ、中高一貫校では、学んだのちには「ノブレス・オブリージュ」(「高い社会的地位には義務が伴う」ということを意味するフランス語)の精神を発揮しなさいと教えているわけです。

学校が生徒に対して、時に口うるさく「知識を付けなさい」「学びなさい」と言う理由はこれです。智慧がなければ、人を救う術がないということなのでしょう。

私は「人生の終末期に人は何を思うか」という介護関連の取材も多くしていますが、最近はつくづくと思います。人間の幸せは「誰かに必要とされること」ではないかと。世界に変革をもたらすイノベーションを起こす人になれたら、それはすごいことだと思います。

しかし、ほんの小さなことでも、誰かの何かのお役に立つという人生も捨てたものじゃありません。

人との競争に全精力を傾けて、偏差値の数字にしか興味がなくなる子に育ててしまうと、目の前にいる人を「誰かが決めたに過ぎない数字」で判断してしまうかもしれない。
これから先の長い人生、「受験の価値観」に囚われてしまうとすれば、あまりにもったいないような気がしますし、先述した中高一貫校の理念からは外れた生き方にもなりかねないのです。

どうせならば、中学受験を楽しもう

多くの場合、母が煮詰まってしまう理由は「成績が上がらない」「やる気が見られない」ということです。もし、そうなったならば、一度、立ち止まって考えてみてください。

わが子が受験勉強を、あるいは塾を楽しんでいるか、否か。

もし、楽しんでいない、ツラそうだという場合はふたつの方法があります。

ひとつは、高校受験にシフトする方法。
わが子が受験生活に完全に嫌気が差しているならば、潔く撤退し、高校受験をするというのも決して悪い選択ではありません。それまで得てきた知識や経験はなくなりませんし、中学受験は強制ではないからです。

もうひとつは、問題の量と質を検討する方法です。
中学受験を続けるモチベーションは、本来は単純なことで「問題が解けるって楽しい!」「〇がもらえるって嬉しい!」というものです。ぜひ、この感覚を取り戻していただきたいのです。

ある進学塾の先生から教えてもらいました。
「スランプに陥った際は塾の勉強は一旦、置いておいて、市販の薄い問題集で1学年下のものを購入しなさい。そして、1冊やりきり、正解するという快感を得なさい」

人は「楽しい!」という気持ちが持てれば(多少の面倒くささはあったとしても)目標のために頑張れる生き物だと思います。

親は社会に必要な子に成長させるために、様々な援助をしながら子育てをしていきますが、中学受験はそのひとつの選択肢に他なりません。 どうせならば、親子で楽しみながら、取り組んで欲しいと願っています。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)など多数刊行。最新刊は『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)

ブログ:湘南オバちゃんクラブ

Facebook: 鳥居りんこ

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