過去問を考える
「過去問」は「神の使い」
このコラムをご覧の方の中には、今まさに「過去問演習」に余念がないというご家庭も多いかと思います。
この「過去問」は、中学受験において大変重要なポジションを占めるものです。
なぜなら、これは志望校からやってきた「神の使い」にほかならないからです。
「過去問」は言うまでもなく、過去、志望校で出題された問題です。
これは、塾の先生や中学受験のコンサルタントなどが作成しているわけではありませんし、万人用に作られている模試の問題でもありません。
つまり、出題者はその学校の先生であり、その学校に特化した問題ということがいえるでしょう。
入試問題は、最終的に合議制で作成されることが多いのですが、やはり各教科でその年のキーマンとなる先生が中心になって作られるのが一般的です。
逆から見れば、各校によって出題傾向が違うということを指しますが、同じメンバーが毎年関わっているということが最大のポイントとなります。
つまり、嫌でも「特徴」が出てきやすいのが、各校の入試問題なのです。
入試問題には、各校からの強烈なメッセージが2つ込められています。
それは、すなわち「本校はこういう教育をし、子どもたちをこう育てたい」「それゆえ、この問題は理解している状態で入学してほしい」ということです。
その学校の教育レベルに合った子を迎え、預かった生徒たちの学校生活を充実させ、さらに成長させて社会に送り出すのだ、という強い意志に溢れている場所が中高一貫校なのです。
私たち受験生の側から見ると、過去問があるというだけで、大変な恩恵を受けることになります。
なぜなら、「神」とも思い、恋焦がれる人(志望中学)からのリアルなメッセージを知ることができる=「対策可能」ということにほかなりません。
過去問演習後に分析すべきこと
過去問をやる意味は、2つあります。
- 自分の実力と志望校が求めている理解度の差を知る。
- 志望校の出題傾向を知り、これからの時間を対策に費やす。
まだ晩秋なので、合格最低点には遠く及ばなくても、第1志望校を諦める必要はありません。
今は何の教科にどのくらいの差異があって、それをどう埋めていくのかを考えましょう。
具体的にはこうです。
(1)あと何点合格最低点に及ばなかったか。
(2)それは、どの問題が解ければ良かったのか。
(3)「捨て問」(受験生のほとんどが正答しないので、合否に関係ない問題)の取捨選択はできていたか。
(4)「マスト問題」(受験生のほとんどが正答するので、落としてはいけない問題)は正答しているか(不正解ならば解き直しは必須)。
(5)「合否の分かれ目問題」(この問題を取れたら、合格にグッと近づく問題)に気付き、なおかつ正答まで辿り着けたか(不正解ならば、理解できるようにする)。
(6)何に苦手意識があり、相性が悪いと思ったか。
(7)時間配分は的確であったか。
それでは、各項目について説明しましょう。
(1)と(2)は4科(関西圏は3科)あるいは2科合計で考えます。
中学受験は4科(3科)、あるいは2科合計で6割の正答率を出せば合格となる学校がほとんどです。
つまり、満点は必要ではなく、さらに1教科でミスをしたとしても、それが0点でない限りは、ほかの科目で挽回できるシステムなのです。
これらを踏まえて、得意科目で「合否の分かれ目問題」を正答し、苦手科目では「マスト問題」を落とさないようにするといった対策が必要になってくるでしょう。
(3)~(5)の見極めも必要です。
市販の過去問題集には、合格最低点をはじめ、正答率が掲載されているものもありますので、それを参考にしてみましょう。
また、志望校からそれらの資料を含めた、現実に使われた学校オリジナルサイズの入試問題がいただける場合もありますので、学校説明会にはおっくうがらずに出かけてみてください。
事前に、学校オリジナルサイズの入試問題に触っておくだけでも、受験本番の際に、見覚えがあるということだけで、お子さんの緊張が緩和されます。
入手できるのであれば、ご家庭への強力な援軍となってくれますので、お勧めしておきたいと思います。
(6)は、例えば、記述問題ばかりが出題される学校なのに、記述問題が苦手ということが分かっていれば、この対策が必要です。
逆に、選択肢問題が苦手というケースでは、取捨選択するスピードが要求されているのかもしれません。
合格戦略として、苦手な部分を見極めるという作業をするのです。
(7)は、何に時間を奪われてしまったのかを考えましょう。
この(1)から(7)までをふまえ、何が必要で、何が足りなかったのかを分析していくことが、「過去問演習」の使い方なのです。
この「分析作業」は、小学生にはハードルが高いので、親の出番となります。
そして、親は何がどうあれば「合格最低点」にたどり着けたのかを、冷静に分析してみましょう。
受験校の過去問は、すべて1回は解いておく
過去問は、第1志望校だけでなく、受験校すべての過去問を少なくとも1回は解いておくことが望ましいのですが(多くの塾の先生は、第1志望で過去5年分、第2~3志望で過去3年分という目安を掲げておられます)、その時間を確保することも、とても大切な親の仕事となります。
進め方、あるいは問題の答えがよく分からなければ、塾の先生に相談しましょう。
先述しましたが、過去問は「神(志望校)の使い」です。
神が言わんとしていることを掴むために、じっくりと問題を読み込み、我が子に合わせた傾向と対策をしっかりと立てていくことが、6年生の親の責務なのです。
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