おかあさんの参考書
大学受験から中学教育を考える

大学受験から中学教育を考える

鳥居りんこ

「大学附属校」人気は、「親の不安解消」が理由

前回、少子化で小学6年生の数が減っているにもかかわらず、中学受験者数は逆に増加している、というお話をしました。

その理由のひとつに、2020年の大学入試改革に端を発した「親の不安」があります。

不安解消のために、「先手必勝」とばかりに中学受験を選ぶ家庭が多い、ということなのです。

中学受験にも、その時々で流行があり、現在は「共学」ブームの真っ最中なのですが、多くの民間教育機関が出している2018年の中学受験分析でも、やはり「大学附属」と「共学」という学校に人気が集まったことが、はっきりと見て取れます。

「共学」人気の理由は諸説あり、保護者の「社会に出たら男女で一緒にいることが自然だから」という声が大きくなったためだとか、多くの学校が少子化対策で生徒確保を目的に共学校への転換に踏み切ったためなどと言われています。

そして、「大学附属校」人気の理由をひと言で申し上げるならば、「親の不安解消」のために中学受験に参入した保護者の需要を見事に捉えているから、ということになります。

私立大学の定員厳格化がおよぼす影響とは?

大学附属校ブームが起こっている背景には、主にふたつの出来事があります。

ひとつは、首都圏の主要私立大学の「定員」という問題です。

皆さんも報道などでご存じのとおり、政府は2016年度から私大の「定員厳格化」の方針を打ち出し、入学定員超過に対する私学助成金(私立大学等経常費補助金)の交付基準を厳しくしております。

このため、私大は合格者数を絞ることになり、結果として受験生にとっては厳しい入試が続いているのです。

さらに文部科学省は、2018年度から、東京23区内の私大・短大の定員増、ならびに学部・学科の新設を原則認めない方針でいます。

その上で、政府はすでに、23区の定員増を原則10年間認めないようにする法案を国会に提出し、今年度中には可決される見通しです。

そして、2020年度や2024年度の大学入試改革があります。

こちらは、まだ詳細が決定していない部分もあるということで、余計に中学受験を考える保護者の方の不安感を煽る要因になっています。

そこで、それならば先に大学の入学先を確保しておきたいという親御さんが増えた、つまりは大学への「約束手形」を早い段階で欲する層が激増しているという事実が、ここ最近の中学受験での「大学附属校」ブームとなっていると言えるでしょう。

中学受験を通して、我が家の教育方針を決定しよう

では、我が子にどこまでの教育を受けさせたいのかということを、かかる費用も含めて、考えていきましょう。

大学教育にかかる費用としての学費ですが、ものすごく大雑把に言えば、私立文系4年間で360万円くらい、私立理系で490万円くらいになります。年で割れば、私立文系が90万円くらい、私立理系が120万円くらいでしょうか。

もちろん、医薬芸術系などはもっと高額になりますし、理系であれば、大学院に行くケースも多々あります。

その前の段階での私立中高一貫校にかかる6年間の総支出ですが、大雑把に言えば、大学附属校で600万円から750万円ほど、附属校以外で400万円から600万円ほどがかかります。

この学費面での目途がついていると仮定して、さらに、次のような考察をしておく必要があります。

大学教育に何を求めるのか?

それは我が子の自己実現の選択肢を増やすためなのか?

今の我が国の大学進学率から見て、同学年の半数以上が大卒であるという流れに乗らないといけないからなのか?

はたまた、良質な学習環境を求めてのことなのか?

一生ものの人間関係を得るためか?

自由な時間の確保のためか?

これらについて、保護者は一旦、冷静になって考えなければならないのです。

さらには、こういう考察も必要になります。

高卒よりも大卒の方が生涯賃金は上回る、という現状が今後も続くと予想するか?

日本の中で生きる術を得るか?

それとも海外に出ることを考えるか?

まずは大学という教育機関への意義をどう捉えるかを考えた上で、その下に当たる中高教育に意味付けをするという、時間軸を逆に捉えていく必要が出てきます。

どういう道のりを提示することが、我が子にとっての幸せに繋がるのかを、我が子の特性と家庭の事情とを照らし合わせて考えるということです。

今後、我が子の成長によって変更することがあるとしても、第一段階としてじっくりと夫婦で話し合いを重ねる、ということが大切です。

つまり、中学受験を通して最終学歴までの我が家の教育方針を決定するということなのです。

「先行き不透明」と言われる時代に、先を見通すということはとても難しいことではありますが、もはや中学受験は、行き当たりばったりで何となくやり続けるというものではなくなっています。

それぞれのご家庭で、夫婦の考えが一致するまで話し合い、我が子にとって最善と信じる道を選ぶということが、中学受験でも重要なことなのです。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)など多数刊行。最新刊は『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)

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