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イライラする親とイライラしない親。その違いとは?

イライラする親とイライラしない親。その違いとは?

親野智可等

イライラする原因は子どもにではなく、親自身にある

進んで勉強する子もいれば、そうでない子もいます。
片づけができる子もいれば、そうでない子もいます。
親がやって欲しいことをテキパキやる子もいれば、そうでない子もいます。
育てやすい子もいれば、そうでない子もいます。

さて、子どもはこのようにいろいろですが、親もまたいろいろです。
子どもが勉強しないことにすごくイライラする親もいれば、そうでない親もいます。
子どもが片づけしないとき、すごくイライラする親もいれば、そうでない親もいます。

このように「イライラする親」と「イライラしない親」の違いは何でしょうか?
子どもに原因があるのでしょうか?

実は、イライラする原因は子どもにではなく、親自身にあるのです。
その正体は、親の持つ「must思考」であり、これが強い人はイライラしがちです。

「must思考」がイライラの原因

「must思考」は、「べき思考」「ねばならない思考」「しなければならない思考」とも呼ばれています。その名の通り、「人は○○すべきだ」「○○しなければならない」という思い込みが強いということです。

例えば、「掃除は毎日すべきだ」と思っている人は、自分が掃除できなかったときにイライラしますし、掃除をしない人に対してもイライラします。

「食べたらすぐ食器を洗わねばならない」と強く思い込んでいる人は、それができなかったとき自分にイライラしますし、すぐ洗わない人に対してもイライラします。

「店員は笑顔でいなければならない」と強く思い込んでいる人は、ブスッとした店員を許せないと感じます。

親の場合でいうと、「子どもは勉強しなければならない」「受験に合格しなければならない」「親である自分は、子どもを合格させなければならない」などの思い込みが強いと、子どもが勉強しないのを見て、子どもにも自分にもイライラします。

「must思考」が生きづらさにつながる

must思考は、人間ならみんな持っているのですが、人によって程度が違います。
その人の全体的な傾向としていろいろな物事にmust思考が強い人もいますし、逆の人もいます。

また、全体的な傾向としてはmust思考が強くないけれど、特定の物事についてだけ強くなるという人もいます。

このmust思考は、10種類あるとされる認知の歪みのひとつであり、生きづらさにつながるものです(最近では、「認知の歪み」という否定的な表現を使わず、「認知の特性」「認知の癖」という表現を使うようになってきているようです)。

なぜ生きづらくなるのでしょうか。
must思考が強いと、自分の思い通りにいっていないと感じることが多くなり、ストレスがたまりやすくなります。
また、相手をとがめることで人間関係が悪化するうえ、自分をとがめることで自己肯定感が下がってしまうからです。

「must思考」から抜け出すには?

では、そうならないために、どうすればいいのでしょうか?

まず大事なのは、イライラするのは子どもを含めた他者に原因があるのではなく、自分の中のmust思考が原因だと理解することです。

このコラムをきっかけにしていただき、さらに「must思考」「べき思考」「認知の歪み」「認知行動療法」などのキーワードで検索して、情報を得てみてください。
それらを読むことで、自分の認知の歪み(特性・癖)への理解が進むはずです。

同時に、日ごろの生活でイライラした瞬間に、「あ、自分は今イライラしている」と気づくように心がけましょう。

これは、イライラしている自分をもう一人の自分が客観的に見ているイメージであり、メタ認知と呼ばれるものです。

無意識の思い込みに光を当てることが大事

このようにすれば、「子どもが勉強しないのを見て自分がイライラしているのは、自分のmust思考が原因なのではないか?」という視点で、自分をみつめることができます。

そして、自分の持っているmust思考について、改めて考えることができます。
「本当に子どもは毎日○時間も勉強しなければならないのか?」「本当にこの学校に絶対合格しなければならないのか?」「別にこの学校でなくてもいいのではないか?」などと、問い直すことも可能になります。

これは、自分の無意識の思い込みに光を当てることでもあります。

思い込みから解放されれば、子どもを許せるようになり、不必要にイライラすることもなくなります。
こういったことに気づかないままでいると、いたずらに子どもをとがめてしまうことになります。

著者プロフィール

親野智可等
親野智可等
おやのちから

教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。ブログ「親力講座」も毎日更新中。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。

教育評論家・親野智可等 公式ホームページ『親力』


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