
医学部に合格するための具体的勉強法
study tips to pass medical school
医学部入試では、とくに単科医科大を中心として、応用レベル・発展レベルの大変な難問がたびたび出題されます。たしかに、一部の最難関校では、このような難問でもある程度までは得点できなければなりません。しかし、そのような例外を除けば、医学部入試では難問の出来で合否が決まることはありません。医学部の受験戦略としては、「難問をとる」ことではなく、「基本問題・標準問題で落とさない」ことが必要なのです。
ここでは、「医学部という進路」「学習計画と学習戦略」「もっと知りたい医学部受験」のカテゴリで述べてきた「総論」からもう一歩踏み込み、「各論」として教科・科目別の対策と、個別対策を超えたより実践的な対策に触れていきます。医学部用の受験勉強に必要なステップである「入試基礎固め」「典型問題演習」「過去問演習」「共通テスト対策」「面接対策」「小論文対策」の具体的な方法論を確認し、日々の受験勉強に落とし込んでください。

【医学部受験用 教科・科目別対策⑧】化学の勉強法(入試基礎固め・典型問題演習)
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この記事では、「医学部に合格するための具体的勉強法_物理・化学・生物に共通する学習上の大前提」の記事で触れた内容にもとづいて、化学の「入試基礎固め」「典型問題演習」に関する勉強法を述べていきます。
化学の「入試基礎固め」
一問一答集は「逆に使う」
「理解」の側面が強い物理と異なり、化学は、「理解」の側面以上に「暗記」の側面を強く持ちます。化学の受験勉強開始期には、ある程度までは「暗記」をともなう基礎知識の定着が不可欠です。
基礎知識の定着用として、多くの化学受験生が一問一答集を使います。一問一答集は、用語を覚えるという目的に適した教材です。ただし、使い方には注意を要します。
一問一答集には、たとえば、設問として「物質を構成する基本的粒子を何というか」という文章が、正解として「原子」という用語がそれぞれ載っています。つまり、一問一答集は、用語の意味・概念から用語を解答させるという構成をとっているのです。たしかに、このつくりなら、クイズを解くのと同じ感覚で用語が覚えられます。しかし、化学の学習で重要なのは用語よりもむしろ、「~を何というか」の「~」の部分で説明される、その用語の意味・概念のほうです。
一問一答集は、「意味・概念☞用語」の順番で使うだけでなく、「用語☞意味・概念」の順番でも使ってみましょう。上で挙げた例に即すると、「物質を構成する基本的粒子を何というか」☞「原子」と答えられるだけでなく、「原子とは何か」☞「物質を構成する基本的粒子」と口頭や文章で答えられるようトレーニングしてください。このように、一問一答集は、暗記用だけでなく、意味・概念の理解・定着用にも役立てていきましょう。
一問一答集の定番書には、『化学基礎早わかり一問一答』『化学早わかり一問一答』(以上、KADOKAWA)、『化学基礎一問一答【完全版】』『化学一問一答【完全版】』(以上、ナガセ)などがあります。
実験の理解には前提知識が不可欠
化学に限らず、理科という教科では実験が命です。実験は、「条件」「展開」「結論」の要素によって構成されます。入試問題では、あらかじめ与えられている「条件」にもとづき、「展開」と「結論」を自分で導出できなければなりません。しかし、何の知識もなくいきなり分析・考察を行うことは不可能です。
じつは、化学の実験にも、分析・考察を進めるための前提知識があります。たとえば、「物質の名称・性質」「物質の反応の種類」「実験器具の名称・用途」「実験器具の操作手順」などです。このような「武器」を装着してから、分析・考察のトレーニングに入っていきましょう。
「思考実験」で「イメージ」をシミュレーション
実験の前提知識をおさえたら、次に必要なステップは実験の「映像化」です。
実験は器具や施設を必要としますから、受験生が自前で行うことはできません。そこで、リアル実験に代わる「思考実験」という脳内シミュレーションを行いましょう。
「思考実験」として行うのが、上に挙げた「映像化」です。実験の視覚的な「イメージ」を頭の中に浮かべてみましょう。たとえば、「炎色反応」の学習では、「リアカーなきK村で、動力に馬力借そうとするも、くれない」という語呂で表されるLi(リチウム)・Na(ナトリウム)・K(カリウム)・Cu(銅)・Ba(バリウム)・Ca(カルシウム)・Sr(ストロンチウム)の各金属が表す色として、それぞれ「赤」「黄」「紫」「青緑」「黄緑」「橙赤」「紅」の映像が頭の中にパッと浮かばなければなりません。化学の「入試基礎固め」では、実験の様子が、まるで目の前で見ているように脳内再生できることをめざしましょう。
実験の「イメージ理解」には、資料集が最適です。『視覚でとらえるフォトサイエンス化学図録』(数研出版)などを使い、実験を視覚的にとらえていきましょう。
化学の「典型問題演習」
計算問題対策では、「型」と「解法」の両方をおさえる
高校の化学は、理論分野・無機分野・有機分野の3つからなります。簡単にいうと、理論分野はおもに「物質の現象」を扱い、無機分野と有機分野はおもに「物質の性質と変化・反応」を扱います。
化学でも、数学と同じく、計算問題が頻出します。とくによく出てくるジャンルは理論分野ですが、無機分野・有機分野にも計算問題は出てきます。
計算問題のトレーニングで意識すべきポイントは、「型」と「解法」です。「型」とは、たとえば「比例関係」など、出題単元・分野を超えて共通する思考パターンを意味します。「解法」とは、たとえば「水溶液」「pH」「ヘスの法則」などの出題単元・分野に対応する計算方法です。「型」と「解法」はワンセットでおさえましょう。
問題演習では、解答を導き出すことだけでなく、その解答を正確に・速く求めることも意識しましょう。医学部入試の化学は、試験時間に比して出題分量が多いため、高速処理が必要だからです。
問題の難度が上がるにつれ、解答へのアプローチ手段も増えていきます。問題演習では、スマートに、そしてエレガントに解くことをめざしましょう。化学の計算問題にいくつか存在する「解法」の中からベストなやり方を選び取ってください。
化学の計算問題対策に特化した参考書には、『大学入試 絶対におさえたい 化学計算問題の必修解法120』(文英堂)などがあります。条件として与えられている有効数字にも注意しながら、解答の最短ルートを探り当てていきましょう。
理論分野には、差がつきやすい要注意単元が含まれる
高校化学を構成する3分野(理論・無機・有機)のうち、出題頻度が最も高いのは理論分野です。理論分野の出題比率は難関大ほど高くなり、その割合は約6~7割にまで達します。
この3分野の中で、強い苦手意識を持つ受験生がとくに多いのは理論分野です。とりわけ、「気体」「化学反応の速さとしくみ」「化学平衡」の3単元を苦手とする受験生がたくさんいます。この3つが不得意になってしまうことには、内容が難しいという理由だけでなく、教科書の後ろに出てくるため入試までの残り期間でじっくり対策するのが難しいという理由もあります。難関大をめざす受験生であれば、理論分野で差がつきやすいこれらの単元を『鎌田の理論化学の講義』(旺文社)、『大学入学共通テスト・理系大学受験 化学の新標準演習』(三省堂)などで重点的に対策し、合格の可能性を高めていきましょう。
有機分野の出題ソースは教科書
医学部における有機分野の出題は、他学部以上に深く突っ込んだ内容を尋ねてきます。しかし、その多くは教科書から出ています。有機分野の対策には、教科書の熟読が不可欠です。「なんだ、教科書か……」と軽く見てはなりません。近年の検定教科書はページ数も記述量も多く、受験対策の入門書としてもそのまま役立つ高い充実度を誇ります。
もちろん、教科書だけでは問題を解くトレーニングは行えません。そこで、有機分野の「典型問題演習」用教材が必要です。『鎌田の有機化学の講義』(旺文社)、『ここで差がつく 有機化合物の構造決定問題の要点・演習』(KADOKAWA)などを使って、有機分野の頻出パターンをカバーしておきましょう。
実験の「理由・目的」を考えながら解く
先述のとおり、入試問題では、実験の「展開」と「結論」を「条件」から自分で設定・導出できなければなりません。そのためには、「この実験は、そもそも何のために行うのか」「なぜこの手順を踏むのか」「実験から判明した結果は、なぜほかの実験に応用できるのか[できないのか]」など、実験の「理由・目的」を考えながら解くことが必要です。
実験の「理由・目的」が把握できると、問題文中に出てくる情報の中から、正解につながる情報が絞れてきます。このようにして収集・整理できた情報を根拠とし、自信を持って設問に答えていきましょう。実験をくわしく扱っている参考書には、『化学基礎・化学の実験問題が面白いほどとける本』(KADOKAWA)などがあります。
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