
医学部に合格するための具体的勉強法
study tips to pass medical school
医学部入試では、とくに単科医科大を中心として、応用レベル・発展レベルの大変な難問がたびたび出題されます。たしかに、一部の最難関校では、このような難問でもある程度までは得点できなければなりません。しかし、そのような例外を除けば、医学部入試では難問の出来で合否が決まることはありません。医学部の受験戦略としては、「難問をとる」ことではなく、「基本問題・標準問題で落とさない」ことが必要なのです。
ここでは、「医学部という進路」「学習計画と学習戦略」「もっと知りたい医学部受験」のカテゴリで述べてきた「総論」からもう一歩踏み込み、「各論」として教科・科目別の対策と、個別対策を超えたより実践的な対策に触れていきます。医学部用の受験勉強に必要なステップである「入試基礎固め」「典型問題演習」「過去問演習」「共通テスト対策」「面接対策」「小論文対策」の具体的な方法論を確認し、日々の受験勉強に落とし込んでください。

【医学部受験用 教科・科目別対策⑨】生物の勉強法(入試基礎固め・典型問題演習)
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この記事では、「医学部に合格するための具体的勉強法_物理・化学・生物に共通する学習上の大前提」の記事で触れた内容にもとづいて、生物の「入試基礎固め」「典型問題演習」に関する勉強法を述べていきます。
生物の「入試基礎固め」
化学と同じく、「一問一答集使用」「実験重視」の方針で進める
「入試基礎固め」期における生物の勉強法は、基本的には化学と同じです(「医学部に合格するための具体的勉強法_化学の勉強法(入試基礎固め・典型問題演習)」の記事も要参照)。学習の初期段階で優先すべき事項は基礎知識の定着です。一問一答集を活用し、用語とその意味・概念をおさえていきましょう。また、実験の「流れ」と「イメージ」もつかんでいってください。
一問一答集の定番書としては、『生物基礎早わかり一問一答』『生物早わかり一問一答』(以上、KADOKAWA)、『生物基礎一問一答【完全版】』『生物一問一答【完全版】』(以上、ナガセ)などがあります。また、実験の「流れ」と「イメージ」の把握には、『視覚でとらえるフォトサイエンス生物図録』(数研出版)のような資料集を使いましょう。
用語の区別に効き目がある「ネットワーク化」
生物を勉強する受験生には、共通の悩みがあります。それは、「出てくる用語が紛らわしくて、区別しにくい」というものです。たしかに、生物には、「食物連鎖」と「食物網」のように「字面が区別しにくい用語」も、「ウイルス」と「細菌」のように「意味・概念が区別しにくい用語」もたくさん出てきます。これらの用語は、1つひとつ単独で覚えようとしてもすぐに忘れてしまいます。生物用語を長期記憶として定着させていくためには、用語どうしのつながりをおさえ、整理していくことが必要です。そのような覚え方の工夫は「ネットワーク化」と呼ばれます。
紛らわしい用語の組合せ例に、「遺伝子」「DNA」「ゲノム」があります。この3つはそれぞれの見た目は違うので、「字面が区別しにくい用語」ではありません。しかし、どれも「遺伝」にからみ、「意味・概念が区別しにくい用語」として、多くの学習者を悩ませます。これらはどう区別すればよいのでしょうか。
じつは、「遺伝子」「DNA」「ゲノム」には、「遺伝」というつながり以外に、「情報」というつながりもあります。つまり、この3つの用語は、「遺伝」と「情報」という観点から結びつけられ、「ネットワーク化」できるのです。実際に、「遺伝子」「DNA」「ゲノム」に「ネットワーク化」を適用すると、3つの用語は以下のように区別できます。
- 遺伝子:遺伝に関する情報
- DNA:遺伝に関する情報が書き込まれた物質。染色体の主要成分
- ゲノム:ある生物が持つ、遺伝に関する情報の全体
このように、用語間のつながりを意識しながら、丸暗記をともなわない体系的な理解を積み上げていきましょう。
*補足:「ウイルス」と「細菌」の区別は、「自己複製」という観点から「ネットワーク化」できる。「ウイルス」は、単独では生存できず、ほかの生物に入り込んで自己複製する。一方、「細菌」は、細胞分裂により自己複製する。
教科書を隅から隅まで読む
化学の検定教科書と同様、生物の検定教科書も大ボリュームを誇ります。この生物教科書こそ、入試対策のスタートであり、かつゴールです。
一般的な教科書は、地の文章である「本文」、本文では触れていない周辺的なトピックを扱う「コラム」、本文掲載内容を補足する「参考」、学習指導要領範囲外ではあるものの入試には出てくる可能性があるトピックを扱う「発展」などの要素によって構成されます。
受験勉強の初期段階では、「発展」の理解は後回しでもかまいません。その代わり、それ以外の要素は、たとえ時間がかかってもすべてじっくり目を通しましょう。生物では、易しめの入試問題の場合には、教科書の記述からそのまま出てくる場合すらあるからです。
もっとも、ページ数が多いとはいえ、教科書の記述は淡泊ですから、多くの場合、一読しただけではよくわからない箇所が出てきます。その際には、『生物合格77講【完全版】』(ナガセ)のような「調べ物用の辞書的な本」を使い、不明点を解決していきましょう。
苦手な人が多い単元で差をつける
化学と同様、範囲が広い生物には、受験生が不得意とする単元・分野がいくつか存在します。たとえば、「生物の進化と系統」は、教科書の後ろに出てくるため、十分な学習時間が確保できず苦手になってしまう受験生が多い単元です。
また、「植物」も、多くの受験生が強い苦手意識を持つ分野です。「植物」分野は、生物基礎の「生態系」、生物の「発生」「環境応答」など、科目全体に散在しています。このように、「植物」分野には、科目内のあちこちに出てくるためまとめて勉強しにくいという難点があります。
生物で高得点をねらおうとする人は、『生物問題集 合格177問【入試必修編】』(ナガセ)などを使ってほかの受験生が苦手とする単元・分野の対策に時間をかけ、ライバルたちに差をつけていきましょう。
生物の「典型問題演習」
「考察問題」の長い文章に含まれる「キーワード」を見抜く
標準レベルを超える生物入試問題の多くは、「考察問題」という形態をとります。「考察問題」とは、資料集や教科書ではあまり扱われておらず受験生にとってなじみの薄い実験が、長い問題文つきで出てくるというタイプの出題です。医学部生物に出てくる「考察問題」の題材は、多くの場合、大学で扱われている実験にもとづきます。もっとも、大学で教わる内容をまともに出してしまったら、受験生はだれも解けません。そこで、入試問題として成立させるため、出題には「手心」が加えられるのです。
その「手心」は、問題文中に散りばめられた「キーワード」として表れます。たとえば、「刺激の大きさと筋収縮」というテーマを扱った「考察問題」に「神経」という用語が出てきたら、それが「キーワード」です。この場合、「神経」は「多数の神経細胞の集合」と読み替えられます。生物の「考察問題」を解くカギはこのような「キーワード」探しにある、といっても過言ではありません。
入試問題は、必ず解けるようにつくられています。医学部入試の生物に出てくる問題文の長さは圧倒的ですが、ひるんではなりません。「典型問題演習」では、ヒントとなる「キーワード」を問題文の中から粘り強く見つけていきましょう。対策用の参考書としては、『大森徹の生物 実験・考察問題の解法』(旺文社)などが適します。
生物でも計算問題が出る
物理・化学だけでなく、生物でも計算がらみの問題が出てきます。生物の計算問題対策としては、計算のもととなる「単位」をしっかりおさえておきましょう。たとえば、対物ミクロメーターの1目盛りは10μmです。また、1μmの大きさは1mmの1000分の1です。
これらの「単位」は、基本中の基本です。しかし、たとえ難関医学部であっても、生物という科目では、このような初歩的な知識が正確に運用できるかどうかで合否が分かれます。けっして侮らず、基本に忠実な勉強を心がけましょう。生物計算問題が演習できる参考書には、『大森徹の生物 計算・グラフ問題の解法』(旺文社)などがあります。
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