学習計画と学習戦略

study plans and learning strategies

ここでのテーマは、「学習計画」と「学習戦略」です。「学習計画」とは、いつまで・どこまで・どれくらい勉強すればよいかを示す指針です。一方、「学習戦略」とは、どのような方法で勉強すればよいか、あるいは学習計画どおりに勉強が進まなかった場合にどう立て直せばよいのかを示す指針です。勉強の方向性を決定づける大切な2つの考え方を身につけていきましょう。

【医学部受験に関する「学習計画」の立て方と進め方③】高3生モデルプラン(合格逆算ルート)

【医学部受験に関する「学習計画」の立て方と進め方③】高3生モデルプラン(合格逆算ルート)

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高3は、高2までに終えている「入試基礎固め」で身につけた「知識」「解法」などを駆使し、高2から着手している「典型問題演習」と「過去問演習」を行う、受験勉強の仕上げ期です。以下、教科ごとの取り組み方をお話しいたします。

英語は、新学期から「過去問演習」を開始する

高3でも、高1・高2で行った「語彙」「文法」「読解」の学習を継続しましょう。
「語彙」については、高1・高2で使った英単語集のほかに、「基本単語の深い意味」の理解用として別の英単語集を追加してください。
「文法」については、「語法」「イディオム」「会話表現」などの設問が項目別配列ではなくランダム配列になっている問題集を使用してください。
「読解」については、医学部入試英語特有の対策が必要です。次項で述べます。
先ほど述べたとおり、英語の「過去問演習」には高3新学期が始まると同時に着手してください。この時期には、解いた結果を気にする必要はありません。最初は解けないのが当たり前です。解いたとしても、せいぜい2・3割しかとれないはずです。ではなぜ新学期開始期から過去問に取り組むかというと、それは、出題傾向・出題形式を把握するためです。
前述のとおり、学習計画を練るうえで最も大切な方針は「逆算の思考」です。受験勉強は、志望校の過去問に出ている内容からさかのぼって組み立てていかなければなりません。高3になった段階で過去問に目を通しておかないと、志望校の出題傾向・出題形式から逸脱した勉強のみで試験本番に臨まざるをえなくなります。
英語は、数学・理科以上に大学ごとの出題傾向・出題形式の差が激しい教科です。「記述式」なのか「マーク式」なのか、英作文は「和文英訳」なのか「自由英作文」なのか、などの出題傾向・出題形式によって、志望校対策はガラッと変わります。高3の早いうちに、過去問に目を通しておきましょう。

「時事英語」に慣れる

先ほど、近年は多くの医学部で英語の入試改革が進められていると述べました。その一環として、最近は、医学専門誌に掲載されている論文からの出題が増えています。このような文献では最新情報が扱われます。したがって、近年の出題傾向に合わせ、「読解」対策の一環として「時事英語」にも慣れておく必要があります。
「時事英語」対策には、通常の「読解」参考書・問題集とは別に、専用の参考書・問題集を使いましょう。
なお、「医系テーマ」用の英語長文については、志望校の過去問に出ていれば対策が必要ですが、そうでない場合にはとくには対策不要です。

数学では、単元・分野の「抜け漏れ」をすべてふさごう

数学Ⅲまで勉強し終えた段階で「典型問題演習」を本格化させましょう。やや矛盾した言い方ですが、少し難度の高い参考書・問題集で「手ごたえのある典型問題」を解いてください。高2までの学習が順調であれば、まったく太刀打ちできないということはないはずです。
典型問題演習で大切なのは、全範囲をカバーすることです。先ほども述べたとおり、医学部受験における数学は「守り」の教科です。大胆にいえば、数学を「得意」にする必要はありません。その代わり、「苦手」にしてはなりません。「得意」でこそないが「苦手」ではないという状態、つまり、「まあまあ解ける」という状態にもっていくためには、解けない単元・分野を出してはならないのです。単元・分野の「抜け漏れ」をすべてふさぐよう意識し、典型問題を潰していってください。
典型問題演習用としては、各科目に分かれていて単元・分野別に学習できる参考書・問題集と、全科目を1冊で扱っていて総合的に学習できる参考書・問題集の両方を使いましょう。

数学は、「典型問題演習」と「過去問演習」の同時進行が可能

高3に入ったら、上で述べた「典型問題演習」を本格化させるとともに、志望校の過去問にも目を通し、どの単元・分野がよく出ているのか、あるいは出ていないのかを分析しましょう。
数学では、よく出るところが「決め打ち」できます。そのような特性があるため、典型問題演習でその志望校の過去問によく出てくる単元・分野をおさえつつ「過去問演習」を行うことも可能です。ですから、全範囲を勉強し終えてから「過去問演習」に入ることは、志望校があまり出さない単元・分野まで勉強してしまうおそれがあるため、きわめて非効率的なのです。「守り」の教科である数学の対策は、効率最優先で取り組んでいきましょう。

数学の「捨て問」対策には時間をかけるな

数学の「過去問演習」を進めていくと、志望校の過去問が求める学力と、現時点の学力との大きなギャップに気づくはずです。
医学部の数学入試においては、他の理系学部との共通問題となることが多い総合大学の入試問題は標準的である一方、単科大学の入試問題には難問が出やすい、という傾向があります。もっとも、それはあくまで一般論であり、当然、総合大学でも難問が出ることは十分にありえます。
最難関校入試では、難問が出ていてもある程度は高得点がとれなければなりません。一方、それ以外の大学では、難問のうち解ける必要がない問題、いわゆる「捨て問」ができなくても、十分に合格できます
受験生の中には、志望校の過去問に出ているからといってこのような「捨て問」対策にやたらこだわり、難問ばかりを集めた参考書・問題集を使おうとする人が一定数います。しかし、繰り返し述べてきたとおり、数学はあくまで「守り」の教科です。数学の難問対策にかける時間は、英語や理科などの勉強に回しましょう。
とはいえ、自分の志望校に出ている入試問題が「捨て問」であるかどうかを受験生が見きわめることは難しいはずです。その場合には、プロの指導者に判断を仰ぐことも検討してください。

化学は、「典型問題」が出やすい

前項にて、数学には難問が出やすいと述べました。一方、理科では難問に交じって「典型問題」も多く見られます。とりわけ、解法パターンがある程度決まっていることの多い化学では、標準レベルの出題を見かける可能性が高いのです。
理科は努力量に比例して得点力が伸びる教科です。過去問が求める学力と現在の自分の学力との間のギャップを埋めるのに膨大な時間がかかる英語・数学とは異なり、理科は、「入試基礎固め」「典型問題演習」と「過去問演習」とのレベル差はさほど大きくありません。「得点の最大化」の観点から、理科の対策に多くの時間を確保してください。

高3生使用参考書例

☞「過去問演習」は、「赤本」(教学社)・「青本」(駿台文庫)など、志望校の過去問集を使って実施。
英語 語彙
  • 『鉄緑会東大英単語熟語 鉄壁』(KADOKAWA)
文法
  • 『竹岡の英文法・語法ULTIMATE究極の600題』(Gakken)
読解(時事英語)
  • 『難関大合格に必須の最新テーマ20 FINAL時事英語』(朝日出版社)
  • 『日経LissN 最新時事英語キーワード』(InteLingo)
数学 典型問題演習
  • 『1対1対応の演習』[数学1/数学A/数学Ⅱ/数学B/数学Ⅲ/数学C](以上、東京出版)
  • 『新数学スタンダード演習』(東京出版)
物理 典型問題演習
  • 『名問の森 物理』[力学・熱・波動Ⅰ/波動Ⅱ・電磁気・原子](以上、河合出版)
化学
  • 『大学入学共通テスト・理系大学受験 化学の新標準演習』(三省堂)
生物
  • 『生物問題集 合格177問【入試必修編】』(ナガセ)

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