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リアルとバーチャルが融合する20年後の科学技術とは?
日進月歩で進む科学技術が、今後、どのように形を変えていくのか。政府はこのほど、令和2年度版の『科学技術白書』を閣議決定し、今後20年で実現できるとされる技術を大胆に予測しています。「AIに仕事を奪われる」と言われますが、今の子どもたちが大人になるころには、リアルとバーチャルの調和が進んだ、よりしなやかな世界が広がっているかもしれません。
2040年の未来社会の姿とは?
20年後、どのような未来が待ち受けているか、それは誰にもわかりません。
世界中で猛威を振るい、今なお収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症を例にとっても、未来は予測不可能だと言っていいでしょう。
しかし、私たちが日ごろ接し、使っている様々な技術は、突然、どこかから降ってきたものではなく、地道な研究を重ねて生み出されてきたものです。
そうした科学技術の現在とその進歩を見据えて、未来を予測しようというのが、2020年の『科学技術白書』のメインテーマです。
『科学技術白書』とは、文部科学省が毎年発行する、科学技術の振興に関する年次報告書です。
今回は、不確実な未来を見通す方法の一つである「未来予測」の手法を取り上げて、2040年の未来社会の姿を描いています。
今の小学生が30代前後を迎える社会のあり方を考えることで、今後、子どもたちが学ぶべき方向性も見えてきそうです。
完全自動運転、無人農業も可能に
白書では、2040年に目指す社会の姿を、「無形―有形」「個人―社会」のマトリックスで4つに分け、それぞれ社会のイメージをイラストで紹介しながら、今ある科学技術の発展形とその実用時期を例示しています。
一つめは、「人間らしさを再考し、多様性を認め共生する社会」です。
感情や体験の共有、コミュニケーションにより相互理解を深め、互いを尊重できる共生社会をイメージしています。
あらゆる言語をリアルタイムで翻訳・通訳できるシステムは、すでにある画像認識と音声認識の技術が融合すれば、2027年には技術的な環境が整い、2029年には実用化されるといいます。
オンラインで認知症などの治療や介護ができる「超分散ホスピタルシステム」は、技術的な実現を2028年、実用化を2030年と見込んでいます。
また、患者の身体を傷つけない超小型の診断機器が開発されれば、病気をより早期に発見することができるようになります。手のひらサイズの「超軽量センサー」が実用化されれば、感染の有無などを、どこにいても検知し判断できるようになるといいます。
二つめは「リアルとバーチャルの調和が進んだ柔軟な社会」の実現です。
その場に居合わせない人同士が活動する働き方や遊び方が、ロボットや拡張現実(AR)の技術でできるようになる社会です。
場所を選ばずに走行できる自動運転システム、無人で農業ができる自動運転トラクター、過去の自分自身や歴史上の人物、ビデオゲームのキャラクターなどとプレイできる拡張現実スポーツなど、現在、少しずつ話題になっている新技術がより洗練され、2030年前後に製品化されると予測しています。
これらは膨大なデータを蓄積し活用することで、「仮想空間」と「現実空間」を自在に使いこなせる技術と言えます。
三つめは「人間機能の維持回復とデジタルアシスタントの融合による“個性”が拡張した社会」です。
専門技能を持ったロボットの支援で、誰もが高度な専門性を身に付け、逆にロボットも人間の技術を学ぶといった、お互いのよいところを学び合う社会です。
3次元的なデータをもとに物体を作り出せる「3Dプリント技術」を用いて、移植可能な人の臓器を製造する、橋などの構造物の自動組み立てといった高度な専門技術を無人化する、「匠(たくみ)」と言われるような職人技をマスターできる人工知能(AI)など、驚くような技術も予測されています。
子どもたちの夢を科学の力で膨らませよう
四つめは「カスタマイズと全体最適化が共存し、自分らしく生き続けられる社会」で、個人のニーズを満たしながらも、資源や環境の持続可能性を両立する新技術が生まれるといいます。
ドローンを有人で大型化し「空飛ぶ車」にする技術は、2029年に登場すると予測されています。
もし実用化されれば、移動手段として、自動車よりも環境にかかる負荷が軽くて済むかもしれません。
また、今ある電気自動車をよりエコにするための、交換不要で長寿命のバッテリー、太陽光や風力発電を用いた水素の製造、効率のよい人工光合成技術など、新しいエネルギーや資源活用の技術も登場するといいます。
まるで夢のような世界ですが、白書に登場する新技術はどれも100%実現するわけではなく、あくまで予測です。
文部科学省が定期的に行なっている「科学技術予測調査」では、専門家に「30年以内の実現が期待される科学技術」をアンケートしています。そこで1970年代から1992年までに取り上げられた4,300件の科学技術を文科省が検証したところ、実現したのは部分的なものを含め約7割だったそうです。
惑星無人探査機や壁掛けテレビ、携帯電話、デジタルカメラ、ヒト染色体のDNAの全塩基配列の解析など、的中した技術もあれば、がん細胞の転移を阻止する技術、深海底にある鉱物資源の採取技術のように、いまだ実現していない技術もあるとしています。
実現可能性が7割とはいえ、夢のある科学技術は、子どもたちに知的好奇心を持たせ、学習意欲を高め、将来の生き方のきっかけにもなります。
大学や大学院に進学して何を学び、その後、どのような仕事につきたいのか、どのような生き方をしてみたいのか、どのような社会を創っていきたいのか、と想像力をふくらませる原動力にもなるでしょう。
リチウムイオン電池の開発者の一人で、2019年にノーベル化学賞を受賞した、旭化成名誉フェローの吉野彰氏は、これからの科学技術は、地球環境問題を解決し、持続可能な社会の実現を目指すべきと、白書にメッセージを寄せ、子どもたちにとって「活躍の絶好のチャンス」と励ましています。
私立中高一貫校の中には、科学技術のポジティブな側面に着目し、早期から、最先端の技術にふれたり、研究者の話を聞いたりできる機会を、キャリア教育の一環として設けている学校もあります。
白書は2040年の技術をイラスト付きで楽しく紹介しており、親子で見ても楽しいものになっています。
親子で未来の技術について語るのもいいですし、興味のある分野と、私立中学校の取り組みとの接点を探っていくのも、志望校、受験校選びのポイントになるかもしれません。
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