おかあさんの参考書
塾の行き渋りを考える

塾の行き渋りを考える

鳥居りんこ

中学受験を目指す場合、小3の2月からスタートするのが一般的ですが、なにせ受験本番までは丸3年もある長期戦です。それゆえ、大抵のご家庭に紆余曲折があるものです。まさに一筋縄ではいかないのが中学受験なのですが、その中でも「やる気がない」「成績が上がらない」「塾に行き渋る」という問題は親の悩みベスト3といえましょう。
今回は、その中でも「塾の行き渋り」にフォーカスして語ってみます。

「塾に行きたくない」と言うとき、まず大切なこと

お子さんが「塾に行きたくない」と言い出す、あるいは明らかに通塾が楽しくなさそうだというとき、お母さんの頭の中は心配と不安で一杯になりがちです。
その気持ち、私自身にも覚えがあるのでとてもよく理解できます。しかし、これをピンチと慌てるよりも、「立ち止まって中学受験を考えてみるチャンス」ととらえたほうが、よい目に転がることが多いのです。

一番の悪手は焦りのあまり、わが子に「受験するんでしょ? 塾に行きなさい!」と無理強いしたり、「嫌なら受験するのをやめなさい!」という言葉を発したりすることです。
どちらも発想が極端すぎるのです。

まずは慌てないことが大事。お子さんの様子をじっくり観察して、お子さんに合った対策法を考えてみてくださいね。

塾に行きたくない理由と対策

塾を行き渋る主な理由として、次の5つが考えられます。

1)単純に疲れている

塾通いは、学校とのWワークのようなもの。大人でもこの暮らしは結構、ハードです。ましてや、体力的に優位ではない小学生です。長期の休み明けや塾のクラス替え、行事の直後などはペースが狂って疲労感が増していることも大いにあり得ます。
子どもがオーバーワークになっているなと思ったら、勉強よりも睡眠を大事にして、生活リズムを整えることに注力してみましょう。
それでも元気がないように見えるときは、体力的に、あるいは精神的に受験は早過ぎかもしれないという意識を持ちつつ、質・量ともに無理のない勉強法を見つけてください。

2)塾と合わない

塾にもさまざまなスタイルがあり、教室によっても、また、在籍しているクラスによっても指導法はいろいろです。講義内容が理解できない、授業のスピードが速すぎる、逆に遅すぎる、なども考えられます。また、成績順で座席が決まるといった評価システムが辛い、宿題が多すぎる、先生が怖いなども理由としては多いようです。
場合によっては、転塾することが問題解決につながることもありますが、転塾も“賭け”になります。お子さんの話をじっくり聞いてみて、塾との相性を冷静に判断してください。

3)友だちと合わない

塾は勉強しに通うものですが、小学生にとっては「友だち」との交流は何より大事なものです。「友だちと会えるのが楽しい」という理由で塾に行っているのが本当のところかもしれません。しかし、塾内でも人間関係がありますから、合う子、合わない子は当然いるでしょうし、ときには仲違いしてしまうこともあるでしょう。
友人関係がうまくいっているかどうかは本当に大切なこと。お子さんの様子をさり気なく観察しながら、お子さんが話しやすい環境を作ってあげてください。聞いてくれる存在がいるだけで、乗り越えられることもたくさんあります。

万が一、イジメや嫌がらせを受けている場合は、すぐに塾に相談です。一刻も早く適切な環境で勉強できるようにしなければなりません。親も頑張りどきですので、アポを取って、有効な話し合いになるよう落ち着いて行動してください。

4)目的が見えない

受験生活は楽しいことばかりではありません。スランプに陥り、塾に行く気もなくなることだってあります。特に、何のために受験するのか、なにゆえ勉強するのかがハッキリと理解できていない場合、偏差値が少し下がっただけでも意欲が落ちてしまい、塾に行きたがらないというケースも多いのです。

しかし、熱望校とも呼べるほどの具体的な目標を持っている子は、スランプにハマった場合でも強いものです。人間は目標を持つと、それに向かって頑張る生き物だと思います。
そのためにも、低学年の内からいろいろな学校に出向いてください。もし、その中で憧れの学校が見つかったら、お子さん自身が、今、何をすべきかを考えて行動しやすくなります。ぜひ、お子さんと一緒に具体的な志望校を選んでみてください。

5)親の期待値が高すぎる

塾に行き渋る理由のひとつに、親の期待値が高過ぎる、ということもあります。
どんな子どもでも褒められれば嬉しいですし、否定されればやる気はなくなっていきます。中学受験は数字が目に入りやすい世界。数字越しにわが子を見てしまうという“子育ての罠”が待ち構えているため、注意が必要です。
私が見てきた中には、「塾に行くと(親による)“数字の支配”が待っているから」という理由で通塾を拒否した子どももいました。

子どもの頑張りを認めない、あるいは「もっと、もっと」と鼓舞し続けることで、逆に子どものやる気を削がないよう気をつけなければなりません。
中学受験のせいで勉強嫌いになっては元も子もありません。少し手を伸ばせば届きそうな目標を親子で設定し、その目標に無理はないか、進捗状況はどうかなどの目線で確認しあうことも大事です。

さらに、できている部分はしっかりと言葉に出して褒めたほうがモチベーションは上がります。中学受験は親子の受験ですが、親のプロデュース力が必要な受験でもあります。
子どもが塾や受験そのものを嫌がっている場合は、親の期待値が高すぎていないか、接し方も含め、親自身の言動を振り返ってみましょう。

最初に述べたように、中学受験は山あり谷ありで、一筋縄ではいかないもの。親子バトルに発展することも多々あるでしょう。その中で、子どもも成長しますが、実は親も成長しています。
ときには、「子ども時代の自分がされたら悲しいこと」・「されたらうれしいこと」を想像しながら、わが子の頑張りを応援していきたいものです。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)など多数刊行。最新刊は『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)

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