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私立中高一貫校の流行りのフレーズを考える

私立中高一貫校の流行りのフレーズを考える

鳥居りんこ

学校には、「建学の精神」というものがあります。開校にあたり、どのような人材を育成したいのかという理念を謳ったものです。とりわけ、私立学校では創設者の「建学の精神」が重んじられており、それぞれの学校で特色を持った個性豊かな教育が行われています。

学校の教育方針は常にアップデートされている

この理念は教育方針にも生かされていますが、学校はその時々の時代の要請に応えていかなければならない使命も併せ持っていますので、教育方針に注目してみると、毎年のようにアップデートされていることがわかります。つまり、教育理念は「どんな生徒を育てたいか」という教育に対する理想像、教育方針は「そのために何をするか」ということです。

私立学校はこの二本柱で運営されているのです。

この教育方針については、各校ごとにオリジナリティ溢れるものが作られていますが、先に述べたように、学校も社会の一部ですので、その時代に合わせた教育を成し遂げるために、どうしても「トレンド」というものが出てきます。

一昔前でいえば「キャリア教育」、さらに前でいえば、「中高 6 年一貫教育」などがそれに当たります。今回は、これらが“当たり前”になったその後、つまり、現在の「流行りのフレーズ」というものをご紹介してみましょう。

1「国際化」

このワードは、「グローバル教育」と同じような意味合いで以前から用いられていましたが、今も日々進化しながら、各校の教育方針に生かされています。

やはり、未来は今以上にグローバル社会になるという予測から、それに対応した教育環境やカリキュラム導入は必須とのことで、私立中高一貫校は力を入れ続けています。

例えば、海外研修の実施、ターム留学(約3か月間の短期留学)など各種留学制度の充実、ネイティブによる授業、模擬国連への参加、イマージョン教育(外国語で他の教科を学ぶこと)などが一般的です。

また、スーパーグローバルハイスクール指定校としての取り組みを行っている学校も多数あります。

近年は、「グローバルコース」「インターナショナルコース」などのようにコース制を設ける学校も急増しています。英語の授業時間を週7時間にする、全員に1年以上の留学をさせるなど、語学教育に特化していることが特徴です。

「ダブルディプロマ」という日本と海外の高校卒業資格を同時に得られるコース設定をしている学校も少なくありません。

2「多様性」

「多様性」という言葉も、学校現場で近年、頻繁に飛び交っている用語です。

これからの時代は語学力だけではなく、論理的思考力、コミュニケーション能力、プレゼンテーション力といった多種多様な能力や知識が必須という社会的背景があるからだと思います。

グローバル化に伴う地球規模での人的な流動性が高くなる時代、学校教育で何が重要視されるかといえば、異なる人種、言語、宗教、歴史的背景などの異文化を理解し、共に協力していくという態度を養うことなのです。

私立中高一貫校はこのことを意識し、多様性のある教育活動を展開しています。

例えば、豊富な数の交換留学生を在校生の家庭で受け入れる、奉仕活動、企業とのコラボ活動、高大連携授業、大学進学に向けた独自のカリキュラムなど、その学校ならではの取組みを行っていることが大きな特徴になります。

3「ICT教育」

ご承知のとおり、今年は新型コロナウイルスの影響を受け、学校が長期にわたって休校に追い込まれました。

しかし、私立中高一貫校では、ほとんどの学校が「学びを止めない」とのスローガンのもと、休校直後よりパソコンやタブレット、電子黒板などのITツールを駆使し、授業を行ったのです。

普段からICT教育への取り組みを強化していた成果が思わぬ形で出たのですが、大多数の私立中高一貫校では、スムーズにオンライン授業が実施されたという事実に「公立と私立」の格差を感じた保護者も多かったことでしょう。

このICT化の流れは、今後、ますます大きくなるでしょう。

アフターコロナ後も見据え、「ICT教育」をどのようにして、今まで以上に学びに活用していくのか。

各校の動向に注目が集まっています。

4「理数教育」

近年はSTEM(科学、技術、工学、数学)教育に力を入れる中高一貫校が多かったのですが、実は女子校も理数教育に熱心です。

男女の区分けなく、「我が子を理系に進ませたい」という保護者のニーズに敏感に反応している表れでもあり、実際、理数教育に定評がある学校は人気があります。

例えば、医進・サイエンスコースを持つ広尾学園、理数インターコースを持つ宝仙学園、理系大学の附属校である工学院大附属や芝浦工大附属、医薬系大学の附属校である東邦大東邦、女子校では豊島岡女子、鷗友学園などが理数教育に強いという評価を得ています。

男子校はもともと理系に強いということもあり、特段「理数教育」で推すことはなかったのですが、世田谷学園が2021年度より理数コースを新設し、理数教育を強化すると発表し、話題になりました。

2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されたことからも、国が情報教育に力を入れていることは明らか。情報も含めた理数教育の重要性は、今後ますます高まることが予想され、中高一貫校の動きにも注目が集まっています。

以上、駆け足で現在の「教育のトレンド」という面から解説しました。

おわかりのように、学校によって教育活動は様々です。

まずは、ご家庭がどのような教育を求めているのかをしっかりと話し合い、そのニーズに合致する学校を選択することが大切となるでしょう。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)など多数刊行。最新刊は『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)

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