医学部に合格するための具体的勉強法
study tips to pass medical school
医学部入試では、とくに単科医科大を中心として、応用レベル・発展レベルの大変な難問がたびたび出題されます。たしかに、一部の最難関校では、このような難問でもある程度までは得点できなければなりません。しかし、そのような例外を除けば、医学部入試では難問の出来で合否が決まることはありません。医学部の受験戦略としては、「難問をとる」ことではなく、「基本問題・標準問題で落とさない」ことが必要なのです。
ここでは、「医学部という進路」「学習計画と学習戦略」「もっと知りたい医学部受験」のカテゴリで述べてきた「総論」からもう一歩踏み込み、「各論」として教科・科目別の対策と、個別対策を超えたより実践的な対策に触れていきます。医学部用の受験勉強に必要なステップである「入試基礎固め」「典型問題演習」「過去問演習」「共通テスト対策」「面接対策」「小論文対策」の具体的な方法論を確認し、日々の受験勉強に落とし込んでください。
【医学部受験用 教科・科目別対策⑤】数学の勉強法⑵(典型問題演習)
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この記事では、医学部受験数学対策として必要なプロセスである「入試基礎固め」「典型問題演習」「過去問演習」のうち、「典型問題演習」を取り上げます。
「網羅系参考書」の使用には要注意
「入試基礎固め」がひと通り終わってから入る「典型問題演習」は、教科書や教科書傍用問題集に載っているような基本問題よりも少しレベルが高いものの、多くの参考書・問題集に載っているようなパターン化された問題を演習するステップです。「典型問題演習」は、科目(数学Ⅰ・数学A・数学Ⅱ・数学B・数学Ⅲ・数学Cなど)ごとの全範囲学習、すなわち「領域学習」が終わった段階から開始しましょう。
この段階に差し掛かった受験生の多くは、「トレーニング量を確保するために『網羅系参考書』を使わなければならない」と考えます。医学部志望者にとりわけ高い人気を誇る「網羅系参考書」は「青チャート」(『チャート式 基礎からの数学』シリーズ/数研出版)です。たしかに、「青チャート」は、医学部数学入試の標準的な出題レベルに対応しています。しかし、以下の理由から、「網羅系参考書」を医学部数学対策のメイン教材として使うことには注意が必要です。
- 収録問題数の多さから、挫折する可能性が高い
- たとえ挫折せず最後まで解き終えることができるとしても、あまりにも膨大な時間がかかりすぎる
- 医学部受験における数学はあくまで「守り」の教科。学習時間の長さとトレーニング量に重点を置く問題演習は「タイパ」が悪い
もちろん、「網羅系参考書」は、相性が合う受験生なら使ってもらってかまいません。しかし、医学部入試における「得点の最大化」という受験戦略を考慮するならば、数学よりも得点が安定しやすい英語・理科の対策、あるいは個別学力検査の問題よりもずっと取り組みやすい共通テストの対策などに多くのリソースを割くことが現実的だといえます。
「典型問題演習」用としては、たとえば、『1対1対応の演習』[数学Ⅰ/数学A/数学Ⅱ/数学B/数学Ⅲ/数学C]、『新数学スタンダード演習』(以上、東京出版)などが適します。これらは、「網羅系参考書」よりも少ないページ数で医学部数学における標準的なレベルの問題を十分に確保し、なおかつ実践的な解法を多数紹介している参考書です。
ただし、受験生の中には、東京出版の参考書で紹介されているシャープな解法が「あまりにも鮮やかすぎて、自分にはまねできない」と感じる人も一定数います。もっとオーソドックスな解法が知りたい受験生には、『理系数学 入試の核心 標準編』(Z会)や『標準問題精講』[数学Ⅰ・A/数学Ⅱ・B+ベクトル/数学Ⅲ・C](以上、旺文社)などが向きます。
「未知」を「既知」に変えよう
入試問題は、最初は手も足も出ないと思える「初見問題」も含め、設問として与えられている条件を「入試基礎固め」で習得した「知識」「解法」に結びつけていけば必ず答えが出るようつくられています。
「初見問題」では、問題作成者が仕組んだ複雑な設問条件によって、「出題意図」が巧妙に隠されています。パッと見ただけではどこから手をつけたらよいのか、皆目見当がつきません。しかし、そのような「初見問題」であっても、「いま目の前にある問題は、すでに習った内容とどのように結びついているのだろうか」という視点から解こうとすると、見えていなかった「出題意図」がだんだん明らかになっていくとともに、正解までのゴールも見えてきます。「典型問題演習」では、このように、「未知」の内容を「既知」の内容に置き換えていくという姿勢が大切です。
もっとも、「典型問題演習」のあとに入っていく「過去問演習」で取り組むこととなる志望校の過去問には、この方法が通用しない難問も一部含まれます。しかし、そのような難問の多くはいわゆる「捨て問」であり、合否にはほとんど影響しません。「典型問題演習」では、合否にかかわる問題だけを解いていきましょう。
問題は、「文章の式化」と「式の文章化」の両面から解こう
入試問題には、大きく分けて2通りのタイプがあります。以下のとおりです。
タイプ1 | 設問条件があらかじめいくつか与えられていて、それらを問題文の中から読み取って立式していくタイプ |
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タイプ2 | 設問条件がほとんど与えられておらず、自分で設問条件を構築したうえで立式していかなければならないタイプ |
「タイプ1」は、「文章の式化」によって解いていくことが可能です。しかし、「タイプ2」では、そのやり方は通用しません。この出題スタイルを攻略するためには、「タイプ1」とは正反対のプロセスである「式の文章化」が必要です。
多くの受験生が「タイプ1」の問題を得意とする一方、「タイプ2」の問題には苦労します。試験本番では、両方のタイプに対応できなければなりません。
「式の文章化」の訓練においては、「自分がどういう思考回路をたどって答えに行き着こうとしているか」を意識しながら解くことが必要です。このような、「『自分が何を考えているか』を考える」という頭脳の働きは「メタ認知」と呼ばれます。「メタ認知」の視点から問題演習に取り組んでいくと、たとえ多くの受験生が苦手とする「タイプ2」の問題であっても、基本問題と同じ方法論で解けるようになっていきます。
『入試問題を解くための発想力を伸ばす 解法のエウレカ』[数学Ⅰ・A/数学Ⅱ・B+ベクトル](Gakken)は、合格者が頭の中で行っている「メタ認知」のプロセスを紙面として可視化した参考書です。収録されている問題のレベルは医学部数学の過去問レベルにはおよばないものの、「入試基礎固め」が終わっていることを前提とした構成ですので、「典型問題演習」の初期段階で使うことに向いています。このような本も利用しながら自分の思考プロセスを客観的に振り返り、確固たる実力を身につけていきましょう。
1つの問題に対して複数のアプローチを試みよう
入試問題にはたいてい、いくつかの解法が存在します。たとえば、図形問題の解法には、最もオーソドックスな「幾何」(例:「三平方の定理」の利用)だけでなく、「三角比」(例:「正弦定理・余弦定理」の利用)、「座標」(例:「対称性」の利用)、「ベクトル」(例:「1次独立」の利用)などもあるのです。
「典型問題演習」では、1つの問題につき複数のやり方を試しましょう。1題に対して1通りの方法しか知らないと、もし試験本番の場で自分が知っているやり方が通用しないと気づいた場合、後戻りできなくなってしまうからです。また、仮に1通りの解法で結果的に正解にたどり着くことができるとしても、もっと合理的・効率的な別の解法が学べたかもしれない絶好のチャンスを逃してしまう可能性があるからです。
多くの参考書では、標準的な解法以外に「別解」が取り上げられています。「典型問題演習」では極力、王道の解法だけでなく、別解によるアプローチも使ってみましょう。自分が使える解法のストックが増えていけばいくほど、合格可能性は高まっていきます。
*参考文献:『改訂第2版 世界一わかりやすい 京大の理系数学 合格講座』(池谷哲〔著〕/KADOKAWA/2021年)
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