医学部に合格するための具体的勉強法
study tips to pass medical school
医学部入試では、とくに単科医科大を中心として、応用レベル・発展レベルの大変な難問がたびたび出題されます。たしかに、一部の最難関校では、このような難問でもある程度までは得点できなければなりません。しかし、そのような例外を除けば、医学部入試では難問の出来で合否が決まることはありません。医学部の受験戦略としては、「難問をとる」ことではなく、「基本問題・標準問題で落とさない」ことが必要なのです。
ここでは、「医学部という進路」「学習計画と学習戦略」「もっと知りたい医学部受験」のカテゴリで述べてきた「総論」からもう一歩踏み込み、「各論」として教科・科目別の対策と、個別対策を超えたより実践的な対策に触れていきます。医学部用の受験勉強に必要なステップである「入試基礎固め」「典型問題演習」「過去問演習」「共通テスト対策」「面接対策」「小論文対策」の具体的な方法論を確認し、日々の受験勉強に落とし込んでください。
【医学部受験用 教科・科目別対策③】英語の勉強法⑵(典型問題演習)
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この記事では、「入試基礎固め」の次のステップである「典型問題演習」として取り組むべき「英語長文」と「英作文」の学習についてお話しします。
「英語長文」の学習について
「英語長文」は、医学部入試の合否を分けるといっても過言ではない最重要分野です。「典型問題演習」の段階でも、やるべきことは大量にあります。「英語長文」の学習について気をつけるべきポイントは、以下のとおりです。
- 論理パターン
- 接続表現
- 文法の知識
- 語法の知識
- パラグラフを利用した主旨把握
- 時事英語
以下、順を追って説明していきます。
論理パターン☞文章の展開には「型」がある
「英語長文」の設問パターンには、大別して「知識系」と「論理系」の2通りがあります。前者は、語彙や文法をストレートに問うタイプです。後者は、書かれている内容の流れ・つながり・まとまりである「論理」を尋ねるタイプです。医学部の英語入試問題では、とくに「論理系」設問が頻出します。
英文の「論理」を追うには、語どうし・文どうし・段落(パラグラフ)どうしがどのような流れでつながり、そしてまとまっているかを把握しなければなりません。そのためには、前提条件として、文章の展開パターン、すなわち「型」をつかんでおく必要があります。おもな「型」は、以下の4つです。
文章の「型」の例
型 | 役割 |
---|---|
具体化 | 「抽象」に続けて「具体」を示す *抽象的な「一般論」を述べてから「具体例」を示すという展開が多い。 |
因果関係 | 「原因」に続けて「結果」を示す |
逆接 | 前に述べた内容に続けて「対比」的な内容を示す |
言い換え | 前に述べた内容に続けて「類似」的な内容を示す |
「型」にはほかに、「追加」「強調」「代替」などもあります。文章は、ただ単語を逐語的につないで読むだけでなく、「このあとにはこういう展開が来るはずだ」と予想しながら追っていきましょう。
接続表現☞1つの語につき複数の意味をおさえる
文章の「論理」を司る語は「接続表現」と呼ばれます。「接続表現」は、英文の展開をたどるうえでキーワードとなる語であり、文中に頻出します。学校の授業でもたくさん習います。
しかし、「接続表現」の多くが教科書で扱われるような有名な言葉だからといって、学校の授業で教わった内容だけで十分だと甘く考えてしまうと、足をすくわれます。というのも、「接続表現」の意味は文意次第でさまざまに変化するため、複数の意味を覚えていないと通用しないからです。以下、意味をおさえておくべき「接続表現」の例をいくつか挙げます。
複数の意味をおさえておくべき「接続表現」の例
接続表現 | 意味 |
---|---|
in fact |
|
after all |
|
on the contrary |
|
instead of |
|
in turn |
|
文意を整える目印として文中に置かれているこれらの語は、空所に適する言葉を入れさせるという空所補充問題などで直接問われる場合があります。「接続表現」には、覚えているだけで即得点に結びつく可能性があるのです。
文法の知識☞基本中の基本だからこそ応用が利く
多くの受験生は、「英語長文」対策と聞くと、何か特別なことを勉強しなければならない、と考えがちです。たしかに、一部の医系英語に出てくるような特殊な出題には、ある程度テクニカルな対策が必要です。しかし、そのように応用的な内容は、志望校の出題傾向に合わせて行う「過去問演習」の段階で十分間に合います。それよりも、「典型問題演習」の段階では「文法」の知識にもとづく正しい読み方の習得を優先していきましょう。
「典型問題演習」においては、「文章を読むための英文法」をフル活用することが求められます。一例を挙げると、長文では「ifを使わずに表されている仮定法の条件」が頻出します。以下は、条件に相当する内容をifなしで表している例です。
「ifを使わずに表されている仮定法の条件」の表現例
表現 | 例文 |
---|---|
without「~がなければ/~がなかったら」 | 例 Without your help, I would have failed to solve these questions. 「あなたの助けがなかったら、これらの問題は解けなかっただろう」 |
主語 | 例 Even an elementary school student would not make such an easy mistake. 「小学生さえそんな初歩的な誤りは犯さないだろうに」 |
副詞句 | 例 Two years ago, I could not have understood the concept. 「2年前だったら、その概念は理解できなかっただろう」 |
不定詞 | 例 To see him teach his students, you would think him a wonderful teacher. 「彼が生徒を指導しているのを見れば、彼をすばらしい教師だと思うだろう」 |
ifの省略による倒置 | 例 Were I a handsome guy, I would ask her out.(=If I were a handsome guy, ~.) 「もし僕がイケメンなら、彼女をデートに誘うのに」 *上のようなWere+S+~.以外に、Had+S+~.やShould+S+~.などの形もある。 |
以上の内容は、英文法で必ず習うレベルの基本事項です。しかし、「基本事項だから入試には役に立たない」と考えてはなりません。むしろ、このような基本事項こそ、難しい入試問題を解くうえで応用が利く万能ツールとなりえます。簡単な内容だからといってけっして侮らず、慎重に勉強していきましょう。
語法の知識☞能動態⇔受動態の変換は、じつは意外に難しい
「語彙に関する文法」である語法の知識も、長文の意味をとらえていくための強力な武器となりえます。
一見簡単そうに思えて、実際に英文で出てくると案外スラっと意味がとれない例に、「followの語法」があります。followは基本単語ですが、この語が表す因果関係の理解は意外にやっかいです。たとえば、以下の( ア )と( イ )、( ウ )と( エ )の空所にはそれぞれsummerとautumnのどちらが入るか、考えてみてください。
- ① ( ア ) follows ( イ ).
- ② ( ウ ) is followed by ( エ ).
多義語であるfollowには、「~の次に来る」という重要な意味があります。ここで、summer「夏」とautumn「秋」の因果関係を考えてみましょう。当然、「夏」☞「秋」の順番となりますね。この順番を文として表すと、「秋は夏の次に来る」となります。したがって、この関係を能動態で表している①の文の空所( ア )と( イ )には、主語と目的語としてそれぞれAutumnとsummerが入ります。一方、①の文の受動態である②の文では、主語と目的語の関係が変わります。したがって、②の文の空所( ウ )と( エ )には、それぞれSummerとautumnが入るのです。
このような受動態⇔能動態の変換は英文法の初歩的な知識ですが、因果関係がからむと理解のハードルが上がります。長文に出てきた際に混乱しないよう、「典型問題演習」の過程で語法をしっかり意識しておきましょう。
パラグラフを利用した主旨把握☞「意味段落」ごとに「イイタイコト」をおさえる
東京科学大(旧東京医科歯科大)や日本医科大では、読解問題として2000語レベルの超長文が出てきます。また、この2校ほど極端ではないにせよ、多くの医学部入試では1題あたり約800語という長文の出題もザラです。医系英語の受験勉強では、分量が多い文章のトレーニングを重視する必要があります。
しかし、1000語近くもの長文は、よほど英語が得意な受験生でもない限りスラスラ読みこなすことは困難です。そのため、英文を読んでいる途中で文章展開がわからなくなり、たとえ読み切ったとしても、「全体で何が書かれているのかよくわからなかった」と感じてしまう受験生が続出します。
このような事態を回避するためにおススメしたいのが、パラグラフ単位で英文全体の主旨(=「イイタイコト」)をとらえていくという読み方です。具体的には、以下のように、
- いくつかのパラグラフを意味のまとまり(=意味段落)ごとにとらえる
- 意味段落ごとの要点を「パラグラフメモ」として残す
という方法を実践してください。このように、「自分で実際に手を動かす」という泥くさいやり方こそ、長文読解力を高めていくための王道なのです。
「英語長文」対策用参考書としては、『関正生のThe Rules 英語長文問題集2入試標準』『関正生のThe Rules 英語長文問題集3入試難関』(以上、旺文社)などが適します。この2つは、読み方・解き方の両方を体系的に習得できる点でおススメです。
時事英語☞医療テーマに偏らず、幅広い題材に触れておく
近年の医学部英語入試では、新しいトピックを含む時事的な英文の出題が増えています。英文の出典は医療テーマに限りません。人文科学系・社会科学系、医系以外の自然科学系などからも幅広く選ばれています。「典型問題演習」の仕上げとしてこのような「時事英語」対策を行い、医療テーマに偏らず広範な英文テーマに触れていきましょう。
対策用の参考書としては、『ERA 大学入試頻出の最新トピックで覚える英単語』(Gakken)などが適します。この本は英単語集ですが、最新の英文テーマごとに章立てされている点、英文を読みながら単語が習得できる点などから、「時事英語」対策への使用が可能です。『最新トピック 英語長文 予想問題 文化・社会編』『最新トピック 英語長文 予想問題 自然・科学編』(以上、旺文社)は、新しい英文素材に触れられる長文対策用問題集としておススメできます。「時事英語」の学習用としては長らく『話題別英単語リンガメタリカ』(Z会)が定番書ですが、現在では扱われているトピックが古くなっているため注意しましょう。
なお、医療テーマが出題される大学を受験する場合には、医療テーマの英文に慣れておくことが必要です。該当する受験生は、「過去問演習」の段階で医療テーマ長文をトレーニングしてください。
「英作文」の学習について
ここでは、「英作文」の勉強法として「和文英訳」対策と「自由英作文」対策を述べていきます。
「和文英訳」の攻略は、まず「和文和訳」から
日本語の文を英訳させるという「和文英訳」の出題頻度は、「自由英作文」に比べると低めです。しかし、「和文英訳」によって日本語☞英語のトレーニングを積まない限り、医系英語に頻出する「自由英作文」を攻略することはできません。「和文英訳」対策は、「自由英作文」対策に取り組むための前提条件なのです。
「和文英訳」の学習で注意すべきポイントがあります。それは、「設問として与えられた日本語の文をそのまま機械的に和訳してはならない」という点です。「和文英訳」では、設問意図をくみ取り、与えられた文をシンプルな日本語に置き換える必要があります。このような「和文和訳」を習慣化してください。
たとえば、「その店では閑古鳥が鳴いている」という日本語の文を英訳すると想定しましょう。ここで、「閑古鳥が鳴いている」をそのまま機械的にa kanko bird is singingなどと英訳してしまったら0点です。「閑古鳥が鳴く」は、「〈商売など〉がはやらない」ということを意味します。したがって、ここでは設問文から「その店では商売がうまく行っていない」という意図をとらえて「和文和訳」し、Business doesn’t go well at the store.などと書かなければならないのです。
「自由英作文」は、じつは「不自由英作文」
「自由英作文」は、このような名称がついていながら、書きたいことを何でも好きなように書いてよいという出題ではありません。
「自由英作文」の設問では、必ず条件が課されます。たとえば、「語数」「構成」「書式」「肯定・否定/賛成・反対などの意見・立場の表明」「問題文引用の有無」などです。あるいは、出題者側が「このような内容を書いてほしい」という「テーマ」を指定するケースや、英文を読ませ英語で「要約」を書かせるケースなどもあります。逆説的ではありますが、「自由英作文」とは、守るべき条件に従って書かなければならない「不自由英作文」なのです。
受験生は、このような厳しい制約の中で解答を組み立てる必要があります。与えられた条件から出題意図を見抜き、出題者が示唆している方向性に沿って答案をまとめていきましょう。
答案は、「序論」「本論」「結論」の「フォーマット」に落とし込む
「自由英作文」は、いわば、「英語で書く小論文」です。したがって、自由英作文の答案には、医系小論文の答案構成としてよく教わる、「序論」「本論」「結論」という「フォーマット」がそのまま生かせます。以下のとおりです。
自由英作文の答案構成に生かせる「フォーマット」
パラグラフ | 役割 | 構成要素 |
---|---|---|
序論(Introduction) | 考えを述べる部分 | 意見・立場の表明/条件として与えられたキーワードの定義/問題提起 |
本論(Body) | 考えに説得力を持たせる部分 *「序論」で示した一般的な内容を具体化していく要素。 |
理由・原因/具体例 |
結論(Conclusion) | 考えをまとめる部分 | 提起した問題の解決策/意見・立場の反復 |
*設問条件によっては、パラグラフ構成で書くことが必ずしも求められないケースもある。しかし、構成要素として上記の項目はおさえておこう。
自分だけの「キラーフレーズ」を持つ
各パラグラフの役割・構成要素を理解し答案の形式に慣れたら、次の段階では、「自由英作文」の答案でよく使われる「キラーフレーズ」の習得に努めましょう。たとえば、I agree with this idea.「私はこの考えに賛成する」、I suggest that+S+V.「私は、SがVすることを提案する」、The most important thing is that+S+V.「最も重要なことは、SがVすることである」などです。
参考書としては、『大学入試問題集 関正生の英作文ポラリス[2 自由英作文編]』(KADOKAWA)などが適します。この本では、「キラーフレーズ」だけでなく、定番テーマやパラグラフの構成法なども学べます。また、英検準1級ライティング問題の答案は「序論」「本論」「結論」のパラグラフ構成で書かせるケースが多いので、『英検分野別ターゲット 英検準1級ライティング問題』(旺文社)のような英検書は入試対策としても有用です。
これらの「キラーフレーズ」は、答案で縦横無尽に使いこなせなければなりません。参考書で学んだこのような表現は、ノートに「表現リスト」としてまとめておきましょう。こうして、使える知識のストックを増やしていき、作文力を向上させてください。
*編集協力:門脇 渉(英語指導者)
■本気で医学部をめざすなら……医学部受験専門の個別指導塾・予備校[メディックTOMAS]
https://www.tomas.co.jp/medic/
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