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受験勉強は、なかなか予定どおりには進まないものです。「学習計画を立てた、科目別対策もわかった、参考書もそろえた、あとは勉強するだけだ!」と意気込んではみたものの、途中でモチベーションが下がり、勉強に手がつかなくなってしまうことはよくあります。また、医学部入試は科目数が多く、受験勉強がうまくいっているときでさえ大きい負担がかかります。ましてや、調子が悪いときには、この状態が永遠に続くのではないかという絶望感に襲われがちです。
このコーナーでは、医学部対策について、「受験勉強のヒント」「くわしい入試情報」など、モチベーションの向上に役立つ小ネタ(Tips)を取り上げます。この記事で医学部受験のアウトラインを把握し、つらい受験勉強を乗り切ってください。
【医学部受験勉強Tips③】受験勉強の時間戦略(トータルの学習量/1日内での時間の使い方)
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質問
受験勉強の中で、時間をどう使ったらよいのかわかりません。試験本番までに合計でどのくらいの時間勉強すればよいのか、1日の中でどういう時間配分で勉強すればよいのかなどは、学校でも塾でも教わったことがないので、まったく見当がつきません。医学部に合格した人はどうやって勉強時間を管理していたのでしょうか。
このように、「勉強時間の使い方がわからない」と嘆く受験生がたくさんいます。英語・数学・理科2科目の学習に加えて面接と小論文の対策まで立てなければならない医学部の受験勉強ではやるべきことが多く、いくら時間があっても足りません。また、「時間はこう使わなければならない」という原則があるとしても、勉強の進み具合は個々人によって千差万別であり、それぞれの受験生に必要な勉強時間も異なるため、同じように自分に当てはまるとも限りません。
もっとも、勉強時間の使い方に関する「原則」というほどおおげさなものではないにせよ、時間管理の参考となる一定の「指針」は存在します。志望校合格は、その基準を個々人でカスタマイズし自分に最適化された時間戦略を立てることによって可能となります。
この記事では、「受験勉強の時間戦略」として、「トータルの学習量」「1日内での時間の使い方」という2大テーマにつき具体的な方法を説明していきます。この内容を自分なりにアレンジし、以降の受験勉強に役立ててください。
トータルの学習量
以下では、医学部受験の土俵に乗るために必要な勉強時間と、高2までに達成しておきたい努力目標についてお話しします。
最低でも計3,500時間の勉強が必要
そもそも、医学部に合格するためにはどのくらいの勉強時間が必要なのでしょうか。受験勉強に必要な時間は、大学の偏差値や共通テスト受験の有無(=志望校として国公立大を選ぶか、私立大を選ぶか)によって変わります。そのような事情を考慮すると、一般的には以下のとおりとなります。
- 私立大中堅校:3,500~4,000時間
- 国公立大中堅校:4,000~4,500時間
- 私立大・国公立大中位校以上:5,000時間~
ここからわかるように、医学部受験に必要な勉強時間の下限は3,500時間だと考えてください。ここには、学校や塾での授業時間は含まれていません。あくまで家庭での自学自習のみの勉強時間です。
最低でも1日6時間の勉強が必要
一般的に、医学部志望者が受験勉強を開始する時期として最も多いのは高2の秋だといわれます。もし受験勉強を高2の秋から開始する場合、上で述べた「下限3,500時間」を試験本番までにクリアするためには、単純計算で1日最低6時間の勉強が必要となります。
平日に、1日の4分の1にも相当する、こんな長い時間を確保するのはなかなか大変です。しかし、繰り返し述べているように、これはあくまでも最低ラインです。学校や塾の宿題に追われていたり部活動で疲れていたりして自学自習できない状況が生じた場合には、勉強の遅れを取り戻すため、休日であればたとえば1日8時間など、さらに長く勉強しなければなりません。また、受験勉強の開始時期が高3にずれ込んでしまった場合には、試験本番までにこのノルマを消化するため、1日の最下限の勉強時間はさらに長くとる必要があります。開始時期が遅れるほど、試験までにこなさなければならない勉強時間の確保は厳しくなっていきます。また、志望校のレベルが上がるにつれ、この勉強時間はもっと増やさなければなりません。
勉強時間を十分に確保するための最善策は、「確実に遂行したい『学習計画』の基本方針」の記事でも述べたように、「対策の早期化」です。「基礎ができていないのに、受験勉強なんてまだ早い」などと尻込みする必要はありません。受験勉強には「フライング」も「順番待ち」もありません。医学部受験生には、中学生のうちから高校内容を「先取り学習」で勉強してきた中高一貫校生もたくさんいます。このような猛者に追いつき、そして追い越すためには、受験勉強の開始時期を繰り上げなければなりません。高1、あるいは高2の秋以前のような早い時期から受験勉強のスタートを切りましょう。
高2終了時点までに「ここまではやっておきたい」という基準とは
高2終了時点は、試験本番まで1年を切っているという、受験勉強の一里塚ともいえる時期です。「中学生・高1生・高2生モデルプラン」の記事で触れたように、高2までに達成しておきたい努力目標は以下のとおりです。
- 英語:英検準1級合格
- 数学:数学Ⅲ
- 理科:2科目
英語については、英検合格を学習のペースメーカーとしてください。高2までに英検準1級に合格するためには、中学生のうちに英検2級までは取得しておきたいところです。また、英語の過去問には高3新学期開始期から手をつけ、1年かけてじっくり対策してください。英語は医学部受験最重要教科ですから、対策の開始が早すぎるということはありません。
数学Ⅲを高2のうちに勉強し終えることはとてもハードです。しかし、数学Ⅲの前に「先取り学習」しているはずの数学Ⅰ・A・Ⅱ・B・Cの復習も必要ですから、やはり高2終了時点を数学Ⅲ学習のデッドラインだと考えるべきです。万が一間に合わなかった場合でも、高3のゴールデンウィークまでには全範囲をカバーしてください。
理科については、化学と物理、化学と生物という組合せとなるはずです。物・化・生についてはいずれも、高2までに基礎科目・発展科目の両方を勉強しておいてください。
高3からは本格的な「過去問演習」、国公立大受験生の場合には個別学力検査で使わない教科の共通テスト対策、および面接・小論文対策も必要となっていきます。しかし、これらの学習は、高2までに英・数・理の「入試基礎固め」「典型問題演習」がうまく進んでいれば1年以内になんとかなります。まずは、医学部受験という土俵に乗るために最低限必要な条件を整えておきましょう。
1日内での時間の使い方
以下では、1日の中で受験勉強をどのように進めていけばよいかという指針をお話しします。
1科目の学習は「60分単位」でモジュール化
受験生の中には、勉強をその日の気分に任せてしまう人がたくさんいます。気分が乗れば得意科目を何時間でも勉強し続けるのに、苦手科目はやる気が起きないから放置……このように無計画なやり方では過酷な医学部受験を乗り切ることはとうていできません。
やるべきことを小さな単位に分けるという考え方を「モジュール化」といいます。この思考法は、受験勉強にも当てはまります。モジュール化によって、1科目の勉強時間を区切るのです。1科目あたりの勉強時間を60分単位で設定しましょう。60分は、人間の集中力の限界だといわれる時間だからです。
先ほど述べたとおり、高2秋から受験勉強を開始したとすると、最低でも1日6時間の勉強が必要です。したがって、「1科目60分」のモジュールだと、1日で6科目分の学習が可能となります。つまり、単純計算で英語・数学・理科2科目の学習に4時間使え、残り2時間は共通テスト対策や面接・小論文対策に割り当てることができるのです。
なお、1科目60分の時間配分を下回ることは勉強のペースを乱すこととなるので推奨できませんが、60分を超えて勉強する分には問題ありません。英・数のように勉強すべきことが大量にある教科であれば、「60分+α」の学習時間を確保することもありえます。もっとも、1科目の勉強時間が長くなりすぎると学習効率が落ちてしまいますし、他科目にも影響が及びますから、調整が必要となってきます。
学習スケジュールは、上で述べたモジュールを順守しつつも、ある程度の余裕を持たせながら見直していきましょう。たとえば、あまりにも疲れていてどうしても1科目60分勉強することができないという日には、その日できなかった分を翌日に回しましょう。ガチガチに固めすぎたスケジュールは、必ずどこかでほころびが生じます。来た道を「行きつ戻りつ」していくという感覚で、勉強時間を柔軟に見直していってください。
学習時間の枠をある程度固定すると、「その時間内に終えなければならない」「締切があるからがんばろう」という心理的な強制力が働きます。このような精神面のプラス作用は「タイムプレッシャー」と呼ばれます。心地よい緊張感を味わいながら前向きな気持ちで勉強に取り組んでいってください。
苦手科目☞得意科目の順に進める
1日の受験勉強の中では「学習順」を意識してください。まだ頭や体が疲れていない最初のうちに苦手科目を勉強し、頭と体が疲れていてもやる気が維持できる得意科目は後回しにするのです。得意科目を先に始めてしまうと、頭と体が疲れ切ってから苦手科目へ着手することとなってしまいます。コンディション不良のままで取り組んでも、ただでさえ気が進まない苦手科目の勉強は捗りません。苦手科目こそ、先にサッサと片づけてしまいましょう。
1科目の勉強では「復習」☞「新出事項の学習」☞「振り返り」の流れを順守する
ここからは、1科目の「モジュール」内でどのように勉強を進めていくべきか、という点についてお話しします。
1日の勉強時間全体を1科目60分という単位に分けたら、次にやるべきなのは、そのモジュールをさらに要素まで細分化することです。具体的には、先ほど述べた「1科目60分」という単位を、以下のような要素と時間に区切ってください。
- 復習(15分)
- 新出事項の学習(30分)
- 振り返り(5分)
- 休憩(10分)
苦手科目を勉強しようと考えるときにはどうしても気が重くなります。それと同様に、新出事項の学習に入ろうとすると、「おっくうだな」「やりたくないな」という気分に襲われます。このような倦怠感を回避するためにおすすめしたいのが、上記のように「はじめは前日の復習から入る」という方法です。新しい内容に手をつける前に、復習として、前日に解いた参考書に載っている問題の模範解答を再現できるかどうか確認してください。復習は、未履修の内容をイチから勉強するよりもはるかにスムーズに進むので、テンションが上がっていきます。その高揚した気分を保ち、自分の成長に手ごたえを感じながら新出事項の学習に入りましょう。
新出事項の学習は、理解をともなう「暗記」と、現時点における自分のレベルに合った問題を解く「演習」の組合せで進めてください。前者のような「インプット」と、後者のような「アウトプット」のどちらかに偏ることなく、2つをバランスよくこなしていきましょう。
医学部受験生の中には、自分の実力不相応に難しい問題を解こうとする人がよくいます。しかし、背伸びは禁物です。「おさえておきたい医学部受験の『全体像』」の記事で触れたとおり、医学部は、たとえ応用問題・発展問題のような難問がとれたとしても、基本問題・標準問題を落としてしまうと合格できません。難問では差がつかないのです。基本問題・標準問題で着実に得点できる実力をつけることに重点を置きましょう。
新出事項の学習が終わったら、最後にやるべきことは、ここまでに勉強してきた内容の振り返りです。新出事項としてどのようなことを覚えたか、問題を初見で目にしたときにどのような発想が思い浮かんだか、正解(あるいは不正解)に至るまでにどのように解いたかなど、自分の思考過程を意識化してください。意識化の過程で気づいたこと・改めるべきだと思ったこと・次の勉強に生かそうと考えたことはノートに書き留め、翌日の振り返り時に確認しましょう。
このような、「『自分が何を考えたか』を考える」という精神面の働きは「メタ認知」と呼ばれます。医学部合格者は、「メタ認知」によって自分を客観視し、改善点を見つけてこまめな軌道修正(=フィードバック)を繰り返し行うことに成功した人たちです。
以上、ここまでに述べてきたことからわかるとおり、受験勉強で肝心なのは、その日の気分に任せず、学習方法を「ルーティン」として定着させていくことです。途中で適度に調整しながら、勉強時間をうまく管理していってください。
まとめ
医学部合格に必要なトータルの学習量から算出された1日の勉強時間は、最低でも6時間です。1科目あたりの勉強時間を60分単位に分けたうえで、60分の勉強時間をどのように使うか、各科目をどのような順番で進めるかなどを意識することによって、勉強時間を綿密に管理していきましょう。
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