学習計画と学習戦略
study plans and learning strategies
ここでのテーマは、「学習計画」と「学習戦略」です。「学習計画」とは、いつまで・どこまで・どれくらい勉強すればよいかを示す指針です。一方、「学習戦略」とは、どのような方法で勉強すればよいか、あるいは学習計画どおりに勉強が進まなかった場合にどう立て直せばよいのかを示す指針です。勉強の方向性を決定づける大切な2つの考え方を身につけていきましょう。
【医学部受験に関する「学習計画」の立て方と進め方①】確実に遂行したい「学習計画」の基本方針
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ここからは、医学部に進むという「進路」を決めた人が受験勉強を行う際の指針である「学習計画」について説明していきます。
学習計画は3つの段階に分けて立てる
入試対策は、以下のような3つのステップに分けられます。入試対策のための「学習計画」は、おおまかにはこの3つの流れに沿って立てていくこととなります。
- 入試基礎固め
- 典型問題演習
- 過去問演習
「入試基礎」は、「知識」や「解法」などをさします。これらについては、のちほどあらためて説明します。
「典型問題」とは、教科書や教科書傍用問題集に載っているような基本問題よりも少しレベルが高いものの、多くの参考書・問題集に載っているようなパターン化された問題をさします。「入試基礎固め」がひととおり終わってから入るのが、この「典型問題演習」です。
「過去問演習」とは、文字どおり、第1志望校を含め自分がめざす大学の過去問を解いていくことです。過去問には、「典型問題」もよく出てきます。しかし、近年の医学部入試問題には、それ以上に、「初見問題」というタイプの問題が頻出しています。「初見問題」とは、覚えてきた知識・解法に当てはめて解くのではなく、知識・解法をその場で運用して解くという応用的・発展的な問題をさします。
志望校合格のためには、このような「入試基礎固め」「典型問題演習」「過去問演習」のステップを着実に踏む必要があります。このうちのどれがおろそかになっても、入試対策は完成しません。それぞれを完璧におさえていきましょう。
学習計画は「逆算の思考」で組み立てる
「学習計画」を立てる際の大前提は、「相手の要求に合わせる」ことです。
この場合の「相手」とは、もちろん「大学」をさします。したがって、「相手の要求」とは「大学側が受験生に求める学生像」を意味し、それは、出題内容・出題形式・出題分量・難易度・配点などの情報として入試問題に反映されます。入試問題の過去問には、「ウチの大学は、この問題が解ける力のある学生が欲しいのです。ぜひこの問題で合格点がとれるレベルまで勉強してくださいね」という大学側からのメッセージが表れています。受験勉強とはまさに、志望校の過去問を徹底的に研究・分析することによって、大学側が求める学力に自分を近づけていくというプロセスにほかなりません。
「大学側が受験生に求める学生像」には、たとえば、「世界標準のカリキュラムが消化できる学生」などがあります。これは、「実学重視型の教育課程についてこられる学生」という意味です。
現在は、医学部での教育における世界的潮流として、実学重視の傾向、つまり臨床実習重視の傾向があります。そのため、臨床の現場において、英語と理科(とりわけ、化学と生物)に関する高度で実践的な知識の重要性が高まっています。そのような動きを受け、近年は多くの大学で英語と理科の入試改革が実施されています。そのため、たとえば英語入試では、臨床の現場で必要となるコミュニケーション力を試すために、英文要約の出題を重視する傾向が強まっています。また、理科の配点を引き上げる大学も出てきています。
当たり前のことですが、医学部受験の目的は志望校合格にあります。合格するためには、志望校の入試問題で合格点をとる必要があります。受験勉強には、基礎学力を積み上げて「大学側が受験生に求める学生像」というゴールに近づいていくという「ボトムアップ」式のやり方も、もちろん大切です。しかし、それ以上に大切なのは、「志望校に合格するためにはどのように勉強していけばよいのだろうか」と「トップダウン」式に考えていくことです。つまり、ゴールからの「逆算の思考」によって学習計画を組み立てていくことが求められます。
ここからは、「逆算の思考」にもとづいて学習計画を組み立てていくために踏まえておくべき大きな方針を4つ取り上げます。次のとおりです。
方針1 | 得点の最大化 |
---|---|
方針2 | 対策の早期化 |
方針3 | 基礎の徹底 |
方針4 | 範囲の網羅 |
以下、それぞれの方針を説明していきます。
方針1「得点の最大化」:高得点がとりやすい科目に労力を割こう
「得点の最大化」とは、英語・数学の個別学力検査における高得点には必ずしもこだわらず、高得点がねらいやすい科目で合格点をとる、という方針です。たとえば、理科の個別学力検査や共通テストで点数を稼ぐという考え方などを表します。
みなさんの中には、学校で先生たちから「大学入試の主要教科は英語と数学だから、英・数の勉強に力を入れなさい」と言われている人がいるはずです。実際、高2まで英・数の指導が優先され、高3に入ってからやっと理科の対策を始めるという高校もたくさんあります。
英語と数学は、高得点をとるのがとても厳しい教科です。出題傾向がガラッと変わったり、難問が出てきたりする可能性が高いからです。とくに、数学は大問1題あたりの配点が高いため、1題分が解けないと大幅な失点につながりかねません。そういう意味では、こと医学部入試についていえば、数学は「守り」の教科なのです。
一方、理科は、英語と数学に比べ、高得点がねらいやすい教科です。もちろん、出題傾向の変化や難問の出題はあるのですが、英・数の入試問題のハードさに比べればだいぶ楽です。たとえば、私立大医学部の最難関校の1つである日本医科大は、英語と数学で大変な難問を出します。一方、理科であれば9割をとることは十分に可能なのです。すなわち、理科は「攻め」の教科だといえます。学校の進度とは無関係に、自分でどんどん進めておくべきです。
このような、入試における理科の優位性に気づいた学校が多いのか、近年、都市部の学校には、非受験学年から理科の対策に取り組ませるところが増えています。このような学校では、一般的に、高1の段階で基礎科目(2単位)と発展科目(4単位)の両方を履修させ、高2の段階で高1履修済み科目以外の基礎・発展科目をとらせて、高3では1年間をかけて2科目分の入試問題演習にじっくり取り組ませるという指導を実施しています。
共通テストについていえば、問題の難度は、センター試験時代よりも格段に上がったものの、個別学力検査のレベルに比べればはるかに下です。地方には個別学力検査よりも共通テストの配点のほうが高い国公立大医学部も多く、共通テストで高得点がとれればそのまま逃げ切れてしまう可能性があります。
合否は、受験した科目の総得点で決まります。高得点が見込めるのであれば、英語と数学以外で稼いでもかまわないのです。得点が安定しない教科・科目の勉強よりも、比較的軽い対策で高得点が稼げる教科・科目の勉強を優先してください。
方針2「対策の早期化」:大学受験の合否は、「どれだけ早くから取り組んだか」の差でしかない
「対策の早期化」とは、受験学年でのアウトプット時間を長く確保するために、非受験学年のうちに「入試基礎固め」のインプットを終えておく、という方針です。
大学受験における合否に、頭のよしあしはいっさい関係ありません。いち早く受験勉強に取り組んだ人が勝ち、それができなかった人が負ける、ただそれだけのことです。
医学部受験の競争は熾烈です。ほんの小さな差が合否を分けます。不合格になってしまった人たちは、何十点も失点して落ちているわけではありません。たった1問できなかっただけで不合格になっているのです。
たとえば東大理Ⅲのような最難関医学部に合格するには、難問でも高得点がとれる才能が必要です。しかし、最難関校以外であれば、受験勉強開始期を繰り下げて早くから取り組みさえすれば、才能のあるなしによらず、志望校合格の可能性は飛躍的に高まります。
方針3「基礎の徹底」:「知識」「解法」を完璧におさえよう
「基礎の徹底」とは、先述した「入試基礎固め」を確実に実行する、という方針です。
「入試基礎」は、おもに3つの要素からなります。
① | 知識 | 各教科の教科書に載っている内容 |
---|---|---|
② | 解法 | 教科書、および教科書傍用(ぼうよう)問題集などの教材に載っているような基本問題に答えるための手順 |
③ | 各教科で異なる要素 | 例 英語:「多読力」 例 数学・理科:「計算力」 |
「知識」は、英語であれば「語彙」「文法」、数学であれば「公式・定理」、理科であれば「用語」などに相当します。
「解法」は、英語であれば「出題形式(英語長文・自由英作文など)ごとの解き方」「英語長文中に出てきた未知の英単語の意味の類推法」、数学であれば「公式・定理を使う手順」、理科であれば「長い問題文の中から、設問に必要な情報を得る手順」などに相当します。
「各教科で異なる要素」については、英語であれば長い文章を最後まで読み切る力「多読力」、数学・理科であれば大量の計算を正確に速くこなす「計算力」などに相当します。
「入試基礎」を、「対策の早期化」の方針にもとづいて非受験学年のうちからどれだけ完璧に仕上げられるかが、志望校合否のカギを握ります。
方針4「範囲の網羅」:「抜け漏れ」を出さない
「範囲の網羅」とは、すべての単元・分野を履修するとともに、苦手な単元・分野をつくらないという方針です。
医学部受験において起きがちなのは、理科で未履修単元・分野を残したまま試験本番に臨まざるをえないという事態です。生徒によっては、学校の授業で理科を全範囲教わらないまま受験せざるをえない人がいます。また、学校で全範囲習ったものの、他教科の勉強、とくに数学の勉強に時間をとられすぎた結果、理科の勉強まで手が回らなかったという人もいます。時間をかけて勉強しさえすればある程度の高得点が見込める理科でやり残しを出したまま入試を受けるのは、コスパの面から非常にもったいないことです。
よほど才能に恵まれていたり勉強が好きだったりする人でもない限り、特定の科目・単元・分野に苦手意識を抱いてしまうことは致し方ありません。多くの受験生は、苦手意識のある科目の勉強を避けようとします。しかし、苦手意識は、原因を分析し対策を講じれば克服可能なのです。
「苦手」という状態には、おもに2つの原因があります。
原因の1つ目は、「知識・解法のいずれか、あるいは両方を間違えて覚えている」というものです。これは、「正しい知識、もしくは解法を身につける」という対策によって克服できます。
原因の2つ目は、「知識・解法のいずれか、あるいは両方とも正しく身についているが、理解度・習熟度が低いため、問題が解けない」というものです。この克服法は、「典型問題演習によって理解度・習熟度を高める」ことにあります。
このように、受験勉強では、全範囲をカバーすること、および苦手科目・単元・分野を潰すことによって「抜け漏れ」をふさぐことが必要なのです。
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