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受験勉強は、なかなか予定どおりには進まないものです。「学習計画を立てた、科目別対策もわかった、参考書もそろえた、あとは勉強するだけだ!」と意気込んではみたものの、途中でモチベーションが下がり、勉強に手がつかなくなってしまうことはよくあります。また、医学部入試は科目数が多く、受験勉強がうまくいっているときでさえ大きい負担がかかります。ましてや、調子が悪いときには、この状態が永遠に続くのではないかという絶望感に襲われがちです。
このコーナーでは、医学部対策について、「受験勉強のヒント」「くわしい入試情報」など、モチベーションの向上に役立つ小ネタ(Tips)を取り上げます。この記事で医学部受験のアウトラインを把握し、つらい受験勉強を乗り切ってください。

【医学部入試情報Tips①】迷っている受験生必読! 「志望校」選びのヒントとなる3つの視点

【医学部入試情報Tips①】迷っている受験生必読! 「志望校」選びのヒントとなる3つの視点

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「アナタにピッタリの『受験方式』と『志望校』の選び方」の記事では、志望校を決める際の大前提をお話ししました。この記事では、その応用編として、具体的な志望校選定時に参考となる視点を3つ取り上げていきます。先に挙げると、以下のとおりです。

視点1 総合大学の医学部/単科の医科大学
視点2 国公立大学/私立大学
視点3 首都圏の大学/関西の大学

以下、それぞれの視点を説明していきます。これらの考え方を参考として、自分にとってベストな志望校を選んでください。

視点1総合大学の医学部/単科の医科大学

総合大学の出題は標準的。単科医科大の出題は難しめ

総合大学の中に学部の1つとして入っている医学部の入試問題には、2つの種類があります。1つ目は、ほかの理系学部との共通問題です。2つ目は、医学部独自の独自問題です。
一般的には、共通問題は標準的で、独自問題は難度が高いという傾向が見られます。たいていの総合大学において、偏差値が最も高い学部は医学部です。総合大学における医学部の入試問題は、理系の他学部(理学部・工学部・農学部など)とレベルを合わせて出題される必要があります。そのため、共通問題が極端な難問となることはありません。一方、他学部とのレベル差に配慮する必要がない医学部単独の出題は、難度が青天井となりがちです。

 共通問題を出す総合大学:
  筑波大/群馬大/千葉大/信州大

 独自問題を出す総合大学:
  福井大/山梨大/大分大/宮崎大/北里大/帝京大/東海大/日本大

単科医科大の場合、学内にあるのは医歯薬系の学部のみです。医学部とそれ以外の学部との間に偏差値の差が生じている場合もありますが、入試問題については、他学部とのレベル調整は行われません。そのため、総合大学における医学部独自問題と同様、単科医科大の出題は難しくなりやすいという傾向がみられます。

数学対策をやりすぎてはならない

医学部独自問題と単科医科大の入試問題でとくに高難度となりがちなのは数学です。とりわけ、計算の分量が多くて煩瑣な問題が好んで出されます。
このような難問も、対策に長い期間を割けばいずれ解けるようになっていきます。しかし、たくさんの科目を勉強しなければならない医学部受験において、数学対策に労力を使いすぎることは賢明な戦略だとはいえません。
「確実に遂行したい『学習計画』の基本方針」の記事で述べたとおり、医学部受験において、得点が安定せず高得点がとりにくい数学は「守り」の教科です。数学の対策に時間をかけるよりも、得点が安定しやすい英語と理科2科目の学習に多くのリソースを使うほうが現実的なのです。
このような、医学部受験における理科の優位性に気づき始めたのか、近年は、都市部に位置する多くの高校で生徒に理科の対策を始めさせるタイミングを早めています。また、英語については、生徒が書いた記述答案の添削に力を入れている都市部の高校も見受けられます。一方、総合大学の医学部をねらわせることが多い地方の高校では、従来どおり、数学の指導に重点を置き続けています。そのため、生徒の意識が数学に強く向きがちで、英語と理科の対策への意識が高まらないまま受験を迎えてしまう、という事態がよく起きがちです。
したがって、地方在住の受験生は、学校の方針に左右されず、志望校の状況に合わせ、自分で受験戦略を組み立てる必要があります。たとえば、東北地方の受験生の場合、東北大学医学部のような総合大学を受験するのであれば、他学部との共通問題として標準的なレベルの出題が多いという状況を踏まえ、ある程度までは数学重視の戦略をとることは正しいといえます。一方、東北医科薬科大のような単科医科大を受験する場合には、数学で高得点をとることは難しいので、英語と理科2科目の対策を優先すべきです。

視点2国公立大学/私立大学

都市部の受験生に強く見られる私立大志向

「国公立大医学部を受けるべきか、それとも私立大医学部を受けるべきか」……これは、ほとんどの受験生が直面する重大な決断です。受験生の中には国公立大専願・私立大専願という人も一定数はいるものの、圧倒的多数派は国公立大と私立大の併願者です。また、全国的には、地方を中心として国公立大志向が強めです。
もっとも、国公立大はどこも難関です。とりわけ、都市部の国公立大は最難関校が目白押しであり、都市部の進学校生であってもそう簡単には合格できません。そのため、都市部には、都市部以外の国公立大と都市部の私立大という組合せを選ぶ受験生もいます
ただし、このような受験生は、もし都市部以外の国公立大と都市部の私立大の両方に合格した場合には、後者への進学を優先する傾向にあります。以下は、都市部以外の国公立大と首都圏の私立大を併願してダブル合格した首都圏在住の受験生が、実際に選択した進学先の例です。

  • 大分大と昭和大にダブル合格☞昭和大に進学
  • 筑波大と東京慈恵会医科大にダブル合格☞東京慈恵会医科大に進学
  • 新潟大と日本医科大にダブル合格☞日本医科大に進学

この例から明らかになるのは、都市部の受験生が、偏差値レベルが近い組合せで国公立大と私立大を併願する場合、私立大への進学を優先している、という実態です。

首都圏の受験生が私立大を好む理由は「自宅通学できるから」

たとえば、上に挙げた「新潟大と日本医科大にダブル合格☞日本医科大に進学」というケースは、北関東・甲信越地方・東海地方などの受験生にとっては、「自分がダブル合格したのなら、間違いなく新潟大を選ぶのに」と思えるかもしれません。新潟大医学部は、戦前から大学として存在していた伝統校であり、現在でも名門と目される大学です。しかし、多くの首都圏の受験生にとって、新潟大は、本命校である首都圏私立大受験後のダメ押しで受ける大学だと見なされています。そのため、合格を辞退する受験生が多く、新潟大は毎年、多めの繰り上げ合格者を出しています。
では、なぜ首都圏の受験生はそのような国公立大の名門校を進学先として選ばず、私立大へ行くことを優先するのでしょうか。以下が、その理由です。

  • 首都圏には私立大医学部が多数所在するため、私立大に親近感を覚える
  • 家から通える
  • 地方で1人暮らしする場合には学費と生活費の両方がかかるが、首都圏に住み続ければ学費の負担だけで済む

以上のように、首都圏在住の受験生の多くが、「高校まで続けてきた自分のライフスタイルをいまさら変更したくない」「地元(=首都圏)でそのまま生活したい」などの理由から、首都圏私立大への進学を選ぶのです。
もっとも、近年は、首都圏でも国公立大医学部志向が高まっており、地方の国公立大医学部受験への抵抗感が薄れてきています。実際、群馬大や信州大などは、首都圏から距離的に近いという理由もあり、多くの首都圏の受験生が志望します。また、英語が得意な人が多い首都圏の受験生を集めたいと考えている富山大は、難度の高い英語の入試問題を出すことによって、首都圏からの志望者を獲得しています。
上で、首都圏における国公立大医学部志向の高まりについて述べました。とくに、首都圏医学部志望者の上位層に人気がある医学部は北海道大と東北大です。一方、この2校と同じ旧帝大である名古屋大を志望する首都圏の受験生はきわめて少ないという傾向にあります。実際、首都圏の私立進学校から名大医学部に入学した受験生は、面接のときに、試験官から「なぜ首都圏に住んでいて本学を受験したのですか。珍しいですね」と言われたそうです。

視点3首都圏の大学/関西の大学

日本を代表する都市部といえば、首都圏と関西。この2つには地域性にさまざまな違いがありますが、その違いは入試問題の傾向にも色濃く反映されています。以下、首都圏と関西の医学部における出題傾向の違いを述べていきます。

首都圏の大学の入試問題は「スピード重視」

首都圏の大学における入試問題の特徴は、以下のとおりです。

  • 試験時間に比して問題の分量が多い
  • 記述問題では、答案の指定字数が短い
  • 英語入試では、読解問題の配点が高い

「試験時間に比して問題の分量が多い」ことは、大量の問題に素早く対応する能力、つまり「情報処理能力」を試す出題が多い、ということを意味します。
また、単に分量が多いというだけでなく、相当な難問が出てくる場合もあります。その典型例が、東大の英語入試で課されるリスニング問題です。
例年、東大英語のリスニング問題としては、3本分の英文が出されます。それぞれの英文は、スクリプト(台本)に直すと読解問題に出てくる長文かと見紛うくらいの大ボリュームです。しかも、読み上げられる英文には、英検1級レベルの高度な語彙まで含まれます。東大英語リスニングをクリアするためには、設問の選択肢から予想される解答を「先読み」し題意を素早く理解するという「瞬発力」が必要です。しかし、このような能力は一朝一夕では身につきません。東大英語のリスニング問題は、相当な難問だといえるでしょう。
「記述問題では、答案の指定字数が短い」ことは、記述問題において答案を手際よくまとめるよう要求されている、ということを意味します。このような出題では、ダラダラと言葉を重ねた冗長な答案を書いてはなりません。答案では、よけいな要素をそぎ落とし、不可欠な要素のみを端的に伝えることが必要です。
「英語入試では、読解問題の配点が高い」ことは、首都圏の英語入試対策としては、長文読解の学習を重視すべきである、ということを意味します。医学部の入試英語には、1題につき800語を超える英文が当たり前のように出てきます。日々の学習では、長文の中でも相当な長さの英文をたくさん読み込み、長文への耐性を身につけていきましょう。
ここまで述べてきた首都圏の大学の入試問題における特徴は、ひと言で表すと「スピード重視」の傾向であるといえます。日々の学習では、試験時間と解答スピードの両方を意識し、できる限り多くの年度の志望校過去問を解いていきましょう。

関西の大学の入試問題は「記述力重視」

関西の大学における入試問題の特徴は、以下のとおりです。

  • 試験時間に比して問題の分量は少ない
  • 記述問題では、答案の指定字数が長い
  • 英語入試では、作文問題の出題率が高い

ここからわかるように、関西の大学の出題傾向は首都圏の大学のそれとは対照的です。関西の大学の入試問題はおしなべて、じっくり時間をかけ、わかりやすく、ていねいな答案を書くよう求める傾向が強いことから、全般的に「記述力重視」であるといえます。また、問題の分量に比して試験時間に比較的余裕があることから、高得点勝負になりやすいという特徴もあります。

志望校選びの際には、首都圏と関西という立地条件だけでなく、ここまでに述べてきたような、それぞれの地域の大学におけるおおよその出題傾向の違いまで踏まえていくと、合格の可能性が高まっていきます。志望校を決める場合には、自分が「スピード重視」の出題と「記述力重視」の出題のどちらに向いているのかをしっかり見きわめてください。

関西在住の国公立大志望者は、他地域の大学まで選択肢に加えよう

首都圏には、埼玉県のように国公立大医学部が存在しない県があります。一方、関西(滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)では、すべての府県に国公立大が所在しています。そういう意味では、関西は首都圏よりも国公立大医学部に恵まれている地域だといえます。
しかし、関西に所在する国公立大は、いずれも高偏差値校だらけです。「旧帝国大学」である京都大・大阪大の医学部はもちろん、京都府立医科大や、大阪公立大医学部・神戸大医学部なども大変な難関です。また、関西に近い中国地方の瀬戸内側に位置する岡山大医学部・広島大医学部なども、関西の大学に匹敵する高い難度を誇ります。
関西在住の国公立大志望者で、「関西の国公立大医学部合格は、自分の学力では厳しい。岡山大・広島大も手が届きそうにない。でも、関西から遠く離れた場所にある大学は受験したくない」と考えている人がもしいれば、関西から比較的近いという条件を満たす大学として、東海地方にある岐阜大や三重大、中国地方の山陰側にある鳥取大や島根大、四国地方にある徳島大や香川大なども検討してみてください。志望校選びの幅が一気に広がります。

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