中学受験・秋からの志望校対策 – 入試傾向/教科別対策/受験校選びについて
※本記事は、TOMAS会員向け冊子版Schola2017年秋号(2017年8月31日発行)に特集記事として掲載されたものを、WEB用に再編集したものです。 |
算数 責任者 TOMAS自由が丘校 扇谷洋平 |
国語 責任者 TOMAS成城学園校 鎌田竜 |
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理科 責任者 TOMAS飯田橋校 高山知行 |
社会 責任者 TOMAS池袋校 森本晋也 |
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司会進行 TOMAS進学対策室 堤昭久 |
◯入試傾向について
●難関校、上位校を中心に難化傾向が続いています。近年の入試トレンドとして、新しいタイプの問題を出題する学校が増えていますね。
扇谷:算数については、単純な一問一答では対応しきれない問題が増えています。特に顕著なのが問題の長文化です。設問に入るまでのリード文が非常に長くなっており、その中で何が問われているのかが掴みにくくなっています。長い問題文を読み取る根気や耐久力とともに、「言いたいことは何か」を的確に読み取る高度な読解力が求められます。
鎌田:国語においては論述問題が増えています。もともと多かった御三家に限らず、その他難関校でも論述問題が目立ちます。記述の設問数自体が増えたり、100字程度の論述解答が課されたりするケースが多く、ただ論述するだけでなく、「自分の言葉で」「具体的に」など論述の仕方にも工夫が求められています。
●理科や社会の入試問題でも、出題の質に工夫が見られますね。
高山:理科は大学入試制度改革を意識した問題が増えています。今年はさらにその傾向が強まりました。来年も同様の流れでしょう。表やグラフなどデータの読み取りとそこからの計算問題も頻出。男子校や共学校では長いリード文から実験や観察の要点を整理する力、女子校では実験の測定結果の表やグラフから計算し、変化を読み取る力が問われています。
森本:日頃から新聞やニュースの話題にアンテナを張ることが大切です。社会では知識問題ももちろん出題されますが、「なぜその出来事が起こったのか?」「その結果どうなったのか?」を説明させるなど、出来事の背景や人物のつながりを理解していなければ解けない問題が増えています。中学側は基礎力に基づいた広い視野を要求しているのでしょう。
●4科に共通して言えるのは、典型問題のパターンで対応できるような出題が減っていること。問われていることを的確に読み取るために、正確な分析力や思考力が今後さらに必要になってくると言えるでしょう。
◯教科別対策・・・算数・国語について
●2018年の出題予想と、具体的な対処法を教えてください。
扇谷:算数は、単純に公式を当てはめて解く問題よりは、「そもそもなぜこの公式ができたのか?」というような、本質を求めてくる、もしくは本質を理解していないと解けない問題が増えると予想されます。特に立体図形や数量の変化など、グラフを読み取る問題の出題も増えてくると思われます。
もう一つ注意したいのが、作業量·解答手順の増加です。解き方・考え方はそう難しくはないけれど、計算量が多かったり、複雑な計算式をミス無く処理することが求められたりする問題が目に付きます。思考力重視といった新しい形式に気を取られがちですが、基礎となる知識や計算などの技能を疎かにしてはいけません。受験勉強に必要な力は実はそれほど変わりなく、基本的な問題を解く能力はやはり必須であるということです。その上で先ほど言った通り、長い問題文から相手の言いたいことを読み取り、推し量る力が求められるのです。
小学生にとっては非常に高度な要求ですから、生徒の成長も含めて一人ひとりに合わせた個別指導で対応することが望ましいと思います。
●国語も思考力重視への転換が進んでいます。国語は対策が立てにくい、どう勉強したらよいか分からないという声が多いですが、対策のポイントは何でしょうか。
鎌田:国語で伸び悩んでいるお子さんに共通するのは、「答えを出すまでに“なんとなく”の部分がある」ということ。つまり論理の一部が抜けているのです。抜けた論理の一部が「本文の情報整理」なのか、「設問の吟味」なのか「選択肢の吟味」なのか、それとも他に問題があるのか。国語の答えを出すためには、実は「段階」が多いのですが、多くの指導者は「答えは本文にある」で片づけてしまったり、「設問はこうだから答えはこれ」で終わってしまったりする。受験生としては「それは分かっているんだけど、自分はどこで間違えたんだろう」と肝心な部分が分からず、集団指導ですと、その積み重ねで国語が嫌いになってしまうわけです。個別指導なら、答子を出すプロセスの中でのバグを見つけることができます。本文・設問·選択肢のどういう箇所をどういう風に間違えるのか、この傾向を分析して修正をかけることで、取れそうで取れない問題を、確実に点数が取れる問題に変えていく。過去問などを利用しながらバグ修正をしていくのが、9月以降にやっていくべきことだと考えています。国語は個別なら、今からでも十分得点源に変えられます。
●過去問の話が出ました。過去問演習で気をつけることは?
扇谷:やりっぱななしにしないこと、そして当たり前ですが、時間をきっちり計って挑むことですね。また、本番は4科目タテに続けて受験します。途中で息切れしないように集中力を持続させる訓練も必要です。日曜日などに4科目続けて過去問に取り組んでみてほしいと思います。解く年数としては、算数は10年分を目安にしてください。しかしそれだけ解くのは物理的に厳しいし、過去問が手に入らないという問題もありますね。TOMASでは、漫然と10年分を解かせるのではなく、どの年度・どの単元から解くかを個々のレベルに合わせて戦略的に進めます。
◯教科別対策・・・理・社について
●社会では、この時期からは時事問題対策が鍵になりますね。
森本:近年、時事問題は大半の学校で出題されています。特に社会ではその傾向が顕著で、2017年度の入試では、首都圏の主な私立中約100校のうち86%の学校で時事問題が出題されました。時事問題は、ニュースそのものが出題されるだけでなく、ニュースに関連する単元まで掘り下げて出題されるケースがほとんど。「入直前に暗記するもの」というイメージが強いかもしれませんが、それでは得点に結びつきません。たとえば「築地市場移転」という時事ニュースであれば、「暮らしと経済」「地方自治」「水産業」などの単元と結び付けて出題されることが予想されます。2018年度入試で狙われそうな「天皇退位」であれば、歴史上の天皇制や、日本国憲法における条文なども押さえておく必要があるでしょう。
高山:理科の攻略ポイントは大きく3つあります。―つは教科書レベルの基本を徹底的に理解すること。近年出題された「雲の名前」などは、教科書に載っている資料や知識からの出題でした。焦って過去問をやり込むよりも、教科書を読み込んでおくことが非常に重要になってくるわけです。たとえば生物分野では、学校の教科書に載っているような身近な動植物に関する出題が目立ちます。二つ目は、身の回りの物を素材とした問題が増えているので、その対策を講じること。例えばボールペンのインクの性質を問うような、身の回りの「なぜ?どうして?」に着目した問題が増えていますね。身の回りの事象に関心を持って、理科的な視点で考えることです。三つ目は、表やグラフの読み取りです。さまざまな形で表やグラフが問題の中に組み込まれていて、数値の読み取り、変化の大小、変化の理由などが問われます。この3つのポイントを押さえた学習が大事です。
●実験器具も頻出ですよね。
高山:実験手順や結果だけでなく実験器具の使い方をしっかり理解しているかが問われる問題が目立っています。上皿てんびんや顕微鏡、試験管、電流の実験で使う電源装置の使用法などは、桜蔭や筑駒などの最難関校でも出題されています。器具の形やその働き、正しい使い方などに着目しておきたいものです。
●過去問の使い方は?
高山:「やりっぱなしにしない」ということに尽きます。「やりっぱしにしない」というのは、たとえば、間違った問題は、なぜ間違ったのかを分析するところまでやるということ。原理や法則を間違って覚えていたのか、データや数値を間違えたのか、仕組みを理解できなかったのか。エラーの種類を分析しなければ意味がありません疑問を明確にして、TOMASの授業で―つひとつ解決してほしいと思います。
●社会は過去間をやらない方がよいという話もあります。
森本:時事問題などは、古い年度になると参考にならないのでやらなくていいかもしれませんね。5年分が目安ですが、一人ひとりの志望校を見てバランスよく過去問演習を組み立てています。演習の際は、答案用紙に丁寧に字を書くことや、表記の仕方についても本番を意識して取り組んでほしいと思います。答案用紙は学校へのメッセージですから。
◯受験校選びについて
●受験する学校をどう紐み合わせていくか、組み合わせの妙が成功の秘訣で、そこはTOMASでしかできない強みです。
扇谷:大切なのは、第一志望校の入試日に最高のパフォーマンスを出せるように受験校を組み合わせること。12歳の入試ですので、メンタルが相当影響することを念頭に置きましょう。第一志望校の入試前に併願校で合格が得られていれば、精神的にリラックスした状態で臨むことができます。逆に不合格が続いてしまった場合、生徒は引きずります。1月入試をうまく活用して2月入試へ、という作戦です。東京・神奈川入試では2月1日が本命という生徒が多いので、その前に1月入試で実戦経験を積ませることが重要になってきます。
森本:社会については、本命校入試の前に本物の時事問題を入試で経験できることは大きなメリットです。
どのような受験校の組み合わせが良いのかは、生徒によって異なります。それを見極められるのはTOMASの最大の強み。東京・神奈川では、1月入試でうまくいった生徒が2月の本命校を決めているという傾向がありますね。
鎌田:この時期、精神面でのマネジメントも重要です。―つの例を紹介しますと、昨年難関校に合格した子たちは全員「振り返りノート」を作っていました。模試や過去問など解いた問題を時系列でノートに貼らせていくのです。努力をしてもなかなか点数に反映されないときというのは、どこに何があるのか整理できていないことが多い。振り返りノートを見直すことで整理できるし、精神的な支えにもなります。
●秋からは親御さんの不安も高まってくる時期ですね。保臆者の方にメッセージをお願いします。
扇谷:この時期は往々にして生徒のマイナス面に目が行きがちですが、なるべくプラスの声かけで働き掛けましょう。プラスの声かけの方がお子さんの原動力につながると思います。
鎌田:親御さんの感情は子どもにストレートに伝わります。中学受験は感情が結果を左右しやすい勝負でもあるので、周囲の大人には“演技力”が求められます。できるだけ良い感情を見せてほしいと思います。私たちも日々演技をしながら子どもたちをコントロールしています。結果が良かったときの模試や過去問を見返して、どうして解けたのかを思い出し、プラスの結果をイメージできるように心がけましょう。
森本:本人に毎日やってほしいことがあります。鞄の中の持ち物を整理させてほしいのです。鞄の整理をお母さんが手伝っているケースが多いですよね。単純に鞄の中が整理整頓されていないと効率が落ちるということもありますが入試当日はわずか12歳にして一人で戦わなければいけない。鞄の整理ということを通して厳しい状況に一人で挑む心構えをつくっていってほしいと思います。
高山:この時期、「それでは第一志望は受からない」「中学受験なんてもうやめなさい」など、本人につい感情をぶつけてしまうという保護者の悩みをよく聞きます。マイナスの言葉ではなく「信じているよ」「あなたならできるよ」とプラスの言葉をかけてほしいと思います。スランプに陥ったら気分転換をしてください。思い切って一週間勉強をやらない、基礎に戻るなどさまざまな方法があります。どんな方法が合うかは個々で異なりますが、我々は経験が豊富ですから、迷ったらぜひ相談してほしいと思います。
◯まとめ
- 算数:問題の長文化が顕著。設問までのリード文が非常に長くなっている。何が問われているのを的確に読み取る力が要求される。
- 国語:100文字程度の論述問題が増えている。ただ論述するのではなく、「自分の言葉で」「具体的」になど論述の仕方にも工夫が求められる。
- 理科:攻略ポイントは、教科書レベルの徹底理解。身の回りの素材に関する問題や、表やグラフなどデータの読み取りも増えている。
- 社会:単なる知識問題ではなく「なぜその出来事がおこったのか」「その結果どうなったのか」、出来事の背景やつながりが問われる。
◯入試対策委員からのワンポイントアドバイス
- 入試当日は12歳の子どもが一人で戦わなければならない。自分の鞄は自分で整理するなど、生活習慣を通して心構えを作りましょう。
- 中学受験はメンタルが相当影響します。2月までに1度入試を経験しておくことが重要。1月入試の活用がポイントですね。
- 過去問の 解きっばなしはNG。振り返りノートを作って、解いた問題を時系列で貼っていこう。時系列だと後で探しやすいですよ!
- スランプに陥ったら、 思い切って1週間勉強をやらない、基礎に戻るなどの方法も。迷ったら、経験豊富な我々に相談してください。
- 過去問を解く際は、答案用紙に丁寧に字を書くことや、表記の仕方にも注意しましょう。答案用紙は学校へのメッセージです。
- 小学生は年が明けてから本気になるケースが多い。模試の判定から志望校を変更したり、ランクを下げたりする必要はないですよ。
- この時期は生徒のマイナス面に目が行きがち。親御さんにはプラスの言葉で働き掛けてほしい。それがお子さんの原動力になります。
- 9月からは過去問演習を通して「自分はどこで間違えたのか」という“バグ”を修正していく時期。個別なら今からでも十分間に合う!
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