学習計画と学習戦略

study plans and learning strategies

ここでのテーマは、「学習計画」と「学習戦略」です。「学習計画」とは、いつまで・どこまで・どれくらい勉強すればよいかを示す指針です。一方、「学習戦略」とは、どのような方法で勉強すればよいか、あるいは学習計画どおりに勉強が進まなかった場合にどう立て直せばよいのかを示す指針です。勉強の方向性を決定づける大切な2つの考え方を身につけていきましょう。

【医学部受験に関する「学習戦略」の実現方法②】「模試」の活用法/「苦手科目」と「成績不振」の克服法

【医学部受験に関する「学習戦略」の実現方法②】「模試」の活用法/「苦手科目」と「成績不振」の克服法

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すべての科目を「まあまあ解ける」という状態にもっていく

過酷な医学部入試を突破するためには、苦手科目をつくってはなりません。もっとも、これは、「すべての科目を得意にしなければならない」という意味ではありません。そもそも、そんなことは不可能です。大切なのは、すべての科目を、「得意ではないが、苦手でもない」という状態にもっていくことです。医学部受験で必要なのは、そのような「まあまあ解ける」という状態の科目を合格基準スレスレの点数でやり過ごし、得意科目で勝負をかけるという戦略です。

苦手科目の攻略は「短期集中型」で

苦手科目を潰していくための勉強法は、以下のとおりです。

  • 「ここならなんとかなりそうだ」という単元・分野から手をつける
  • 短期間で仕上がる参考書・問題集を使う

たとえある科目が苦手であっても、その科目に含まれるすべての単元・分野が苦手だという人は案外少ないものです。それよりも多いのは、たとえば数学が苦手な場合だと「『確率』は苦手だけど、『関数』なら解けないこともない」、物理が苦手な場合だと「『電磁気』は不得意だけど、『力学』まではなんとかなる」など、単元・分野によってはそこまで強い苦手意識がないというケースです。そこで、「『ここならなんとかなりそうだ』という単元・分野から手をつける」という戦略をとり、なんとかなりそうなところだけでも苦手意識を克服していきましょう。そうすると、不思議なことに、苦手だった単元・分野までできるようになっていくのです。これは、広げたハンカチの1点を持ち上げるとその周りも持ち上がっていくという現象にたとえられることから、「ハンカチ効果」と呼ばれます。
短期間で仕上がる易しい参考書・問題集を使う」も重要な戦略です。多くの学習者は、苦手科目を、じっくり時間をかけ、難しい問題まで含めてたくさんの問題を解くことによって克服しなければならない、と考えています。しかし、そのようなやり方は、ただでさえ気が進まない苦手科目の勉強への抵抗感を強めるだけです。苦手科目の対策では、長い時間をかけず、ページ数が少ない本で、教科書レベルの基礎を全範囲、一気にさらっていきましょう
苦手科目の場合、たとえ易しい本であっても、最初のうちは完璧に理解することが難しいかもしれません。しかし、何度も繰り返し読んでいくうちに、学習開始段階では気づかなかったこと・わからなかったことがだんだんクリアになっていきます。あきらめず、粘り強く勉強していきましょう。

模試は、悪いところを見つけるつもりで受ける

奇妙に聞こえるかもしれませんが、模試を受ける目的は、積極的に悪い点数をとることにあります。
大人になると定期的に受診することとなる健康診断には、ほぼ必ずX線撮影(レントゲン撮影)があります。レントゲン撮影は、目に見えない体内の不具合を画像として記録します。一方、模試は、ふだんの学習からはわからない弱点をデータとして記録します。つまり、模試は、レントゲン撮影で体の悪いところを見つけるのと同じように、学力的に足りないところ・苦手なところをあぶり出すために受けるものなのです。

模試における「大問別成績」のデータは、受験勉強の道しるべとなる

ふだんの学習からはわからない学力的な弱点・苦手箇所は、模試を受けたあとに出てくる成績表の中の「大問別成績」という項目に反映されます。この項目には、大問別の得点率だけでなくアドバイスも掲載されています。この情報は、受験勉強の指針として非常に有益です。
平均点を下回っている大問のアドバイスには、たとえば「教科書レベルに戻って復習しましょう」などと書かれているはずです。そのメッセージを真摯に受け止め、教科書や基礎用参考書を使って基礎からやり直しましょう。

模試の結果に左右されず、「未来志向」で行こう

模試を受けた人の多くは、合計得点・偏差値・順位などの項目を気にしがちです。しかし、それらは、あくまで模試を受けた時点での学力しか表さない、過去のデータにすぎません。受験生の学力は、とくに現役生の場合、入試直前期に飛躍的に伸びていきます。実際のところ、模試でC~E判定をとっていた受験生の多くが志望校合格を勝ち取っています。ですから、模試の結果に一喜一憂することはやめましょう
模試の結果が悪かったからといって落胆せず、また、よかったからといって浮かれることなく、「大問別成績」に載っているアドバイスを素直に取り入れ、苦手科目を克服し、得意科目をさらに伸ばしていきましょう。
受験勉強において必要なのは、過去の結果にこだわることではなく、志望校合格という未来を思い描くことです。

模試は必ずあとで解き直す

河合塾の「全統模試」にしても、駿台予備学校の「全国模試」にしても、ベネッセの「進研模試」にしても、模試は良問の宝庫です。模試を1回受けて解きっ放しにするのはあまりにも惜しいことです。模試終了後に解き直し、解説冊子を熟読しましょう。
復習時の注意点があります。それは、模試本番で解答できなかった問題の解説だけでなく、解答できた問題の解説にも目を通す、ということです。なぜかというと、解答できた問題の答えはまぐれで当たっただけ、という可能性があるからです。別の試験で似たような問題が出たときには解けないかもしれません。
実力がついていない人の得点率は不安定です。たまたま自分と相性のよい問題が出たときには高得点がとれる半面、これまで自分が解いたことのない問題に当たってしまったときには悲惨な点数をとってしまいます。出題傾向に左右されない確固たる実力を身につけるため、模試に出てきたすべての問題をくまなく復習していきましょう。

スランプのときに必要なのは、「前進」ではなく「後退」

受験勉強の過程では、「成績が伸びない」「模試でひどい点数をとってしまった」など、必ずスランプがやってきます。そのときにはどう対処すればよいのでしょうか。
多くの学習者は、成績不振に陥ると、難しい問題に手を出したり、まだ終わっていない範囲を先取りしようとしたりします。しかし、成績が伸び悩んでいるときには、無理に先へ進もうとしてはなりません。スランプのときこそ、「先へ進む」のではなく、「前に戻る」ことを意識してください。「前に戻る」とは何かというと、いままでに勉強してきた内容の徹底的な復習です。
成績不振時に必要なのは、自信を取り戻すことです。これまで使ってきた教科書や参考書を読み返したり、載っている問題を解き直したりしてみましょう。案外できることに気づき、やる気がわいて自信が回復していきます。伸び悩んでいるときに必要なのは「前に戻る勇気」なのです。

戻る場合には、教科書レベルまでさかのぼる

たとえば、あなたが数学の成績不振に陥っているとしましょう。この場合、どこまで戻ればよいのでしょうか。あなたはこれまで、参考書として「青チャート」(『チャート式基礎からの数学』/数研出版)を使ってきたとします。では、「青チャート」を復習し直せばよいのでしょうか。違います。このときにさかのぼる先は、それよりもずっと手前の教科書レベルなのです。
数学の成績が伸び悩んでいる原因の多くは、計算力不足にあります。計算力は、教科書の例題や練習問題、あるいは計算ドリルなどをこなすことによって身についていきます。一方、「青チャート」は、読者が計算力を身につけているという前提にもとづいてつくられているので、いきなり入試の標準的な問題が解けるレベルを要求してきます。つまり、「青チャート」を使っても、計算力不足を解決することはできないのです。
勉強が行き詰まる原因の多くは、自分が考えるよりもはるかに深いところにあるものです。たとえば、数学の「2次関数」を苦手とする人は、中学で習う「1次関数」の理解があいまいだったりします。この状態では、「2次関数」の解法を復習しようとしてもうまくいきません。そのもっと手前にある「1次関数」まで戻って、計算力から鍛え直さなければならないのです。教科書レベルまで戻ることには抵抗感があるかもしれませんが、勇気を振り絞って、自分の学習履歴をさかのぼっていきましょう。
学力は、乱高下を繰り返しつつも、最後には必ず上がります。成績が下がったからといって落胆することなく、「自分の弱点が見つかってよかった」というように、前向きにとらえていきましょう。

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