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居場所が多い子どもは、自己肯定感が高い
家庭だけなく、学校や地域などで自分が「ほっ」とできる居場所が多い子どもほど、自己肯定感やチャレンジ精神が高まる――。そんなデータが、先日内閣府から発表された「子供・若者白書」に掲載されました。
長引くコロナ禍の中、感染対策と学校生活の両立にはジレンマを感じることも少なくありません。けれども、さまざまな居場所を確保することは、子どもたちの健やかな成長のためだけでなく、将来への希望を持たせることにつながっているのです。
白書から見える子どもの姿
内閣府が毎年発表する「子供・若者白書」は、子どもや若者に関する国の施策を紹介すると同時に、困難を抱える子どもや若者の実態や社会課題を取り上げ、社会全体でこれからの世代を支援する意識を高める役割を担っています。
2021年度版の白書では、今年4月に国が策定した、第3次「子供・若者育成支援推進大綱」を特集し、すべての子どもや若者が自らの居場所を得て、成長・活躍できる社会を目指そうと訴えています。
白書は今回から、子どもや若者に関する調査データを、図やグラフを交えて指標として示しています。
「今の自分が好きだ」という自己肯定感を持つ子ども・若者は、2019年度の調査で全体の46.5%となりました。
国際比較では日本の子どもは他の先進国の子どもと比べて、自己肯定感が低いと言われますが、前回の2016年度の結果と比較して、わずかな上昇が認められました。
しかし、他の指標については、以前の調査よりネガティブな結果が並びます。
「今の生活が充実している」「自分の将来について明るい希望を持っている」と回答した割合は減少。
ほっとでき、居心地のよい「居場所」を尋ねたところ、「自分の部屋」だと感じる子どもは、89.0%から85.3%に減少。
実家や親族の家を含む「家庭」(79.9%→75.6%)、「学校」(49.2%→48.1%)も軒並み減少していました。
そして「どこにも居場所がない」の回答は、3.8%から5.4%に増えていました。
ほっとできる場所があれば前向きになれる
居場所の数と、自己肯定感の関係を整理したところ、自分の部屋や家庭、学校、地域、職場、ネット空間など居場所の数が多い子どもほど、「自己肯定感」が高くなる傾向があります。
例えば、居場所が1つしかない場合、自己肯定感を感じる子どもの割合は27.2%でした。3つに増えると38.3%、4つだと50.2%、6つだと72.0%と上昇していきます。
同様に「チャレンジ精神」「今の充足感」「将来への希望」の項目に関しても、居場所の数が多いほど高まる傾向が見られました。
さらに、「相談できる人がいる場」の数や、「困ったときに助けてくれる人がいる場」の多さと自己認識の前向きさも、おおむね相関が見られるといいます。
コロナ禍で求められる、家以外の居場所
今回の指標は、コロナ禍以前のデータが主に用いられています。今後、このコロナ禍が子どもの心身の発達に与える影響は、年を経るごとに明らかになっていくでしょう。
ステイホームの掛け声で、家で過ごすことが多くなっているこの1年半、多くの親子がストレスを感じながら生活をしています。国立成育医療研究センターが、小学生から高校生までのべ3万人の子どもを対象に行ったオンライン調査によると、7割以上の子どもが何らかのストレス症状を抱えていることがわかっています。
厳しい行動制限がある中、学校では自分の机で給食を食べることや、部活動、遠足、修学旅行も変更を余儀なくされ、友達と思う存分話したり遊んだりすることも叶いません。
休日に子どもが自由に遊べる場や機会も減ってきていますし、習い事や学習塾なども同じです。
これらはすべて子どもたちの居場所になりうる場ですから、これらが減ってしまうことは、自己肯定感や生活の充実感の低下につながりかねません。
感染リスクを高める「密」な状況は避けるべきですが、オンラインも含め、さまざまな居場所を確保することは、子どもたちの健やかな成長のためだけでなく、将来への希望を持たせることにつながります。
昨年4月の一斉休校時に、私立中高一貫校の中にはいち早くオンライン授業を始めた学校もありました。
その多くが、いきなり授業を始めるのではなく、健康観察や朝の会、学年集会、カトリック系の学校なら礼拝など、生徒と先生、生徒同士の心のつながりを回復する取り組みからスタートしています。
「子供・若者白書」のデータから考えると、中学入学後、子ども達が居場所だと思える空間や場面、取り組み、相談できる仕組みなどが、学校に多彩に用意されていれば、中高6年間を心身ともに健やかに過ごすことができます。
また、大学受験や就職活動といった人生の節目に向かって明るい展望を持ち、チャレンジする気持ちが育つと考えられます。
「子どもの居場所になりそうか」という観点から学校の取り組みを見てみることも、コロナ後の志望校選びの基準になり得るのではないでしょうか。
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