
さきよみ中学受験

進む国立大の国際化と学校選び
海外留学や英語での授業が広がる
全国の国立大学などで構成される国立大学協会(国大協)は、2011年より、国立大学の国際化を進めてきました。2020年をめどに数値目標を掲げ、毎年、その進み具合を調査しています。
このほど、第7回のフォローアップ調査の結果が公開されました。調査は2019年度に国立大学86大学を対象に実施。回答率は100%でした。
調査の結果、現時点で成果が出ている項目は2つありました。
ひとつは、「日本人の海外留学者数の割合を学部と大学院合わせて5%にする」です。
2018年の段階で目標値5.0%を上回る5.9%を達成しています。1年未満の短期留学が主流ではありますが、学部生が5.2%にあたる22,316人、大学院では8.3%にあたる10,512人、合計で32,828人が海外留学をしています。
2011年の海外留学者は13,119人でしたから、国立大学の学生の留学者は、7年間で2.5倍に増えたことになります。
日本学生支援機構の調べでは、国立・私立を合わせて、日本人学生の海外留学は2017年度に年間10万人を突破しています。
官民が協同で留学資金を援助する「トビタテ!留学JAPAN」なども功を奏しているのでしょう。全体を見ても、留学者数は2009年度から比較すると3倍近くになっています。
海外留学者数の多い大学のトップは早稲田大学で、2,770人でした。2番目は京都大学の2,209人、3番目は立命館大学の2,049人で、以下、東洋大学1,961人、東京大学1,871人、同志社大学1,713人、関西学院大学1,572人、関西外国語大学1,556人、大阪大学1,521人、明治大学1,520人となっていて、国立大学も健闘しています(2017年度実績)。
さて、もうひとつ成果が出ているのは、「英語での授業実施科目数を学部、大学院ともに倍増させる」です。
こちらは目標値を大幅に超す達成が見られました。学部での授業数は8,587授業科目で、7年前の約2.3倍、大学院での授業数は28,216授業科目で、7年前の約3.5倍となっています。英語での授業を実施している大学数は、学部で81.7%、大学院で86%となっており、これから国立大学に進む学生は、英語による授業を受けるのが当たり前になりそうです。
内なる国際化が課題
ここまで見ると、日本の国立大学は海外留学、英語での授業など、国際化が順調に進んでいることがわかります。しかし、目標値と照らしてみると、まだ達成には遠い、次のような課題も残っています。
「外国人留学生の割合を学部と大学院合わせ10%にする」という目標においては、2019年11月現在、外国人留学生の比率は8.0%で、学部・大学院合わせて48,483人でした。2017年11月から2019年5月までの間、7%台で推移していましたので、目標年度の2020年までに10%の達成は厳しそうです。
また、「外国人教員比率を倍増させる」という目標においても、目標値は国立大学全体で6.4%ですが、2019年5月現在の達成率は4.8%、3,076人(兼務者を除く)にとどまっており、こちらも達成はまだ遠いと言えます。
日本から海外に学生を送り出すことだけが大学の国際化ではありません。海外からの学生を受け入れ、教える教員やプログラム、単位取得の方法などを多様化させ、大学の教育環境をグローバル化することも求められています。
環境の変化に負けないグローバルな精神を育む
さて、この調査を実施した国大協は、2020年3月に、経団連と合同で『Society 5.0に向けた大学教育と採用に関する考え方』を公表しました。
この中で、「Society 5.0」と呼ばれる、人工知能やロボットなどの新しい技術を使って課題を克服する社会を実現するには、大学生に課題解決能力を育成する必要があるとし、大学に海外留学体験の機会を広げることを求めています。
今年に入り、新型コロナウイルス感染症の拡大で、大学の国際化にも大きな影響が及んでいます。これから先、日本人学生の海外留学や留学生受け入れの機運が落ち込むことは避けられません。
しかし、100年に1度と言われる世界規模の課題を解決するためには、国家間の連携や、国内外の研究機関との調整は不可欠です。
少子高齢化が一層進む日本では、外国人人材や海外からの投資を呼び込むことが経済回復につながります。そうした場で活躍できる日本人を育てるためにも、大学の国際化の歩みは止めてはならないでしょう。
社会全体が危機に陥っている今だからこそ、グローバルな視野を持ち、正解のない課題に向き合う人材を育てられるのはどのような大学なのか、お子さんが中学受験を志すこの時期から、見極めていきたいものです。
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