
さきよみ中学受験

「学び直し」が人生100年時代の
スタンダードになる
社会人と学生を行き来するライフスタイル
「リカレント」とは、「反復」「循環」という意味の英語で、リカレント教育とは、職業生活と学校教育とを必要に応じて行き来しながら、キャリアアップを図る教育システムをいいます。
近年、このリカレント教育が「学び直し」といったキーワードと共に注目を集めています。
その理由の1つは、日本人の平均寿命が延び、長期間仕事をするようになったことです。
2013年に高年齢者雇用安定法が改正されたことで、希望者は原則65歳まで継続して働けるようになりました。現在、さらに70歳まで引き上げられようとしています。
理由のもう1つは、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などの高度なデジタル技術が、あらゆる産業をけん引する時代に突入したことです。
このような時代に、半世紀も働くとなれば、大学で学んだことや就職直後に身に付けたスキル・資格で一生稼げると考えるのは無理があります。
会社が用意する研修以外に、新たな知識やスキルを獲得するため、自ら投資しブラッシュアップする「学び直し」の姿勢が、日本人全体に求められているといっても過言ではないのです。
国が「リカレント教育」を推進しようとする理由もここにあります。
文部科学省は、大学が行う社会人向けの高度な教育を「職業実践力育成プログラム」(BP:Brush up Program for professional)に認定し、普及を目指しています。
大学で経営者からリーダーシップを学ぶ
では、実際にどんなことが学べるのか、日本の大学が提供するリカレント教育を見てみます。
早稲田大学は、組織を導く人材育成をおこなう「WASEDA NEO」を日本橋キャンパスに設置、リーダーシップやマネジメントなど、約120時間のプログラムを開講しています。
日本女子大学は、その名もズバリ「リカレント教育課程」を持っています。大学卒業後に就職し、育児や進路変更などで離職した女性を対象に、英語やIT、マーケティングなどの1年間のプログラムを通して、キャリアアップや再就職を支援します。独自の合同会社説明会を開くなど、きめ細かなサポートを特色としています。
大阪大学では、研究者・技術者を対象として、次世代産業につながるナノサイエンス・ナノテクノロジーの講座を開いています。
いずれの大学においても、現場を熟知した現役の経営者や実務家が講師を務めるのが特色です。
中高のキャリア教育も変化する
日本の大学におけるリカレント教育は、少しずつ行われてきているものの、働き盛りの保護者世代にはいまひとつピンと来ないかもしれません。
経済協力開発機構(OECD)の調査からは、国際的に見て日本は社会人の学び直しが普及していないことを示唆しています。
厚生労働省の調査でも、学び直しの課題として、「仕事や家事・育児が忙しくて時間がない」「費用がかかる」「どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない」「自分の目指すべきキャリアがわからない」などがあがっています。
ただ、変化の兆しも見えています。
「働き方改革」で残業時間が削減され学習に回す時間が増加する、オンライン講座を活用した低コストの学び方が広がる、副業を認める大手企業が増える――など、多様で柔軟なキャリア形成が可能になっています。
子どもたちが社会に出る20年後、30年後には、個人が充実した生活を長く続けるために、学び直すことが当たり前の社会が到来しているかもしれません。
そうしたときに、中学・高校時代のキャリア教育の役割はいっそう重要性を増します。
私立の中高一貫校の多くは、時代に先駆けてキャリア教育を推進してきました。
偏差値で志望大学・学部を決めるのではなく、社会的・職業的な自立に向けた能力を養う場所として大学を捉え、選べるよう、各校がさまざまなプログラムを工夫しています。
自己理解や他者理解、コミュニケーションスキルのトレーニングを中学段階から取り入れている学校も少なくありません。
今後は、人生100年時代に必要な「リカレント教育」をプラスして、キャリア教育を構想する学校が増えてくることが予想されます。
大学は「1つめの夢をかなえる場」であり、そして長い人生のあいだに「別の夢を叶える場」や「新しい進路を開拓する場」になると知っているだけでも、子どもたちのキャリアのイメージも大学進学の選択肢も、より豊かなものになるでしょう。
ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授らが提唱した、生涯を通じてさまざまなキャリアを経験する「マルチステージ」の人生に対応したキャリア教育が求められています。
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