おかあさんの参考書
成績急降下を考える

成績急降下を考える

鳥居りんこ

12月に入ると、6年生は最終模試の結果が出る時期に入ります。「この後はいよいよ受験本番!」という武者震いと恐怖が同時に襲ってくる模擬試験なのですが、この最終模試、私は「後悔模試」と呼んでいます。
不思議なことに、よりによってこの時期に、「今まで取ってきたこともないような偏差値」を叩き出す場合が多いのです。もちろん、上ではなく、下という意味で。
これを目にすると、お母さんは気絶するほどのショックを受けてしまうのですが、私からアドバイスをするならば、「公開模試が後悔模試になるようなら、なかったことにするがよし!」です。

成績が急降下したとき、道はふたつに分かれる

模試の結果を見たお母さんの気持ち、よくわかります。
「もう後がない時期に入っているのに、この点数は何!? 第一志望どころか、どこも受からないんじゃない!?」というショックと嘆き。
でも、ここで道はふたつに分かれているのだと肝に銘じてください。

ひとつは、「ピンチを味方につけるお母さん」。
もうひとつは、「ピンチで自滅してしまうお母さん」。
当然、あなたは前者の道を選択しなければなりません。

よく考えてみてください。たかだか、模試です。合否が出たわけではありません。単に志望校の合格確率が出ただけです。しかも、年内の成績に過ぎません。お子さんの受験は年明けのはずです。
ここは、「本番でなくてよかった!」と安堵し、戦術の見直しをはかるのが「監督」としての使命なのです。

立て直しのはかり方は?

では、どう立て直しをはかればよいでしょうか。
具体的には、1に観察、2にも観察、3、4がなくて5にも観察です。受験に限らず、子育てではこれが一番の肝になります。

まずはお子さんの様子を観察してください。もしかしてお子さんは、ものすごく疲れていませんか?
中学受験は猛烈サラリーマンが休みなしで仕事をしているようなものです。学校から帰ったらすぐに塾、塾から帰っても問題の見直し、さらに日曜は模試という日々を長らく続けてきたのです。

いつもすべてに及第点を取ることなんて、不可能です。お母さん自身の仕事や家事にあてはめてみてください。成果を求められても、こたえられない時期があるのは当然です。いわゆるスランプです。

では、スランプに陥ったときの打開策とは?
それは「インターバルを取ること」です。
「過ぎたるはなお及ばざるが如し」のことわざもあるように、パンク寸前ならば、休む必要があります。
特にこの時期、塾をサボってプチ家出を決行するお子さんが案外います。これは、実は大いに結構なことなのです。
私の観察からいえば、こういうお子さんは意外とよい結果を出します。おそらく、自分の意思を自分で確認する能力があるからだと推察しています。

6年生の今、ほんの数日のあいだ塾に行かなくても、何の問題もありません。何なら、ゲームもOKです。少し、塾や受験とは全く関係のない空間に身を置いて、心と体を休めてみましょう。「本当は、自分はどうしたいのか?」を考える時間を持つことは、お子さんにとって大きな意味があります。
こういう時間を持った子は、受験から逃げるどころか、逆に受験を完遂させると思っています。私はこの子たちの未来にたくましさを感じます。

よい方向に進める方法

お母さんは、さらに観察を続けましょう。模試の結果はもう忘れてください。それより過去問の分析をしたほうがよい方向に進みます。
なぜなら、入試の傾向は模試よりも過去問を通して見えるからです。模試を作っているのは模試の会社の人、入試問題を作っているのは志望校の先生です。それなら、運命は過去問が握っています。

過去問への取り組み方は、「過去問を考える」の記事に詳しく書いています。よろしければこちらを参考にしてください。

https://www.tomas.co.jp/schola/list/mother/toriiteacher/2889/

お母さんができること、お母さんしかできないこと

お母さんの観察はいよいよ最終段階に入ります。
今一度、お子さんをよく見て、お子さんの性格を見極めてください。
お子さんは、親がどういう言葉かけ、あるいは態度を示すと、笑顔になり、元気になっていますか?
褒めるとやる気になる、励ますと安心する、ご褒美で俄然やる気になるタイプでしょうか?
あるいは、「まさか、もう諦めてる?」というような叱咤が効くタイプでしょうか。なかには、何も言わずにただ黙って好物を食卓に並べる作戦が一番、というお子さんもいます。

これからは、いかにお子さんをいい感じに乗せていけるかが勝負です。本番は何が起こるかわからない一発勝負です。けれども、受験週間のまっただなかであっても、お子さんの実力は上がっていきます。最後は1点を諦めなかったご家庭が勝利するのです。

得点力は最後の最後まで伸びていきます。ここまで、あなたは必死にお子さんに伴走してきたのです。第一志望は変えなくて大丈夫。このまま、駆け抜けましょう。
入試直前に入っていきますが、お母さんができること、お母さんしかできないことは、まだまだ山のようにあります。最後まで、お子さんを応援することを止めないでくださいね。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)、『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)など多数刊行。最新刊は、取材・執筆を担当した『黒い感情と不安沼 「消す」のではなく「いなす」方法』(やまざきあつこ著・小学館)。

ブログ:湘南オバちゃんクラブ

Facebook: 鳥居りんこ

Youtube:鳥居りんこちゃんねる


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