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理数教育を考える

理数教育を考える

鳥居りんこ

首都圏では中学受験人気が継続しています。なかでもここ最近は、理数教育に力を入れている中高一貫校に注目が集まっています。
今回は、中高一貫校での理数教育についてお話ししましょう。

中高一貫校が理数教育を重視するのはなぜ?

現代の高度情報化社会においては、ICT(=Information and Communication Technology、情報通信技術の略称)教育はもはや必須です。
コミュニケーションという言葉が入っていることからもおわかりのように、単なる情報処理にとどまらず、ネットワーク通信を利用した情報や知識の共有、さらには、それらをベースとする柔軟な思考が必要とされている社会的背景があるのです。

中高一貫校はもちろん教育機関ですが、特に私立学校は“経営”という側面もあわせ持っていますので、時代のニーズには敏感です。世の中の動きの少し先を見据えた教育を行う学校は多く、保護者の期待感も強いことが特徴です。
そのため、最近では中高一貫校でも理数系重視のムーブメントが起こっているのです。

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは

この動きは、国が施策として「理数教育」を重視しているということも関係しています。
例えば、「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」という制度をご存じでしょうか。文科省が理科・数学教育を重点的に行う高校を指定し、各校の研究開発、実践活動を予算面で支援していく事業で、2002年より始まったものです。

これは、将来の国際的な科学技術人材の育成を目指すもので、2022年度は全国の公私立高校から基礎枠57校、科学技術人材育成重点枠3校が新規に指定されています。
期間は5年間となっており、今現在の指定校数は217校となっています。

SSHに選ばれると、学習指導要領の枠を超えて、理数系分野を重視した教育課程の編成が可能になります。大学や企業との連携などを通して、より高度な研究に主体的に取り組める環境が整うことになります。

国の予算が入った、ある意味、贅沢な環境ですので、その成果も顕著です。
世界中の国の高校生が集まる会議の席で研究発表を行うこともありますし、中には、国際コンテストで受賞した学校もあるほどです。

SSHの探究活動は地域や国を超えて、国際的に活躍しながら社会貢献するという刺激を高校生に与えています。こういった活動に興味を持つお子さんにとって、実に魅力的な環境といえるでしょう。もちろん、私立中高一貫校も数多く選ばれています。

特色ある理数教育を導入している一貫校

理数教育を重視している中高一貫校の具体例を見てみましょう。
「宝仙学園共学部 理数インター」は、理数的思考力を重視する教育方針を打ち出しています。「広尾学園 医進・サイエンスコース」では、医師や研究者として必要なマインドを育成するカリキュラムを展開。「芝浦工業大学柏」は、グローバル・サイエンスクラスを設置し、探究活動を重視しています。
これらの学校では、コース制、クラス制を導入しながら、生徒の理数的な興味関心を引き上げることに尽力しています。

このように、現在ではSTEM(科学、技術、工学、数学)教育に力を入れる中高一貫校はたくさんあり、女子校も例外ではありません。むしろ、今や女子校のトレンドは「理数教育」といっても差し支えないほどです。

特にここ数年は、新型コロナウイルスの感染拡大による景気の先行き不透明感も手伝い、大学受験は「理高文低」の傾向が続いています。
中高一貫校が大学受験を意識するのは当然のことですが、特に理数分野は「資格職」に繋がることも多いといえます。理系を選択する女の子も増加傾向にあるため、男女ともに医学部、理系学部進学を目指す子どもたちが増えており、各中高一貫校はその指導に熱心なのです。

理数重視の選抜方法も

上記のような理由もあり、中学受験の選抜方法にも変化が見られます。算数選抜という1科目型の入試を導入する学校も増えています。
例えば、今年は巣鴨、攻玉社、世田谷、高輪、湘南白百合、普連土、田園調布、品川女子、桜美林などで算数1科目入試が行われました。

また、科目を選択して受験できる学校もあります。ひと昔前までは2科目受験といえば国語と算数の2科目を指していたのですが、最近では算数と理科で受験できる学校もあります。今年は城北埼玉、東京電機、三田国際、農大一などで実施されました。

このことからもわかるように、理系が得意な子を入学時からさらに伸ばしていきたいという熱意を持っている学校は少なくありません。
算数や理科、あるいは実験などに興味があり、将来は科学技術分野にかかわる仕事をしたいという夢を持つお子さんならば、このような充実した環境の中、同じ志を持つ友人たちと切磋琢磨できる6年間は充実したものになるでしょう。

中学受験は、お子さんの個性に合わせた学校選びが可能です。
お子さんの知的好奇心というワクワクが満たされるような学校はどこだろう? という視点を持って学校見学をしてみてください。

著者プロフィール

鳥居りんこ
鳥居りんこ
とりいりんこ

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。保護者から“中学受験のバイブル”と評された当書は、その後シリーズ化され、計6タイトルが出版された。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『【増補改訂版】親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(双葉社)、『【増補改訂版】親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(同)、『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、企画・取材・執筆を担当した『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(やまざきあつこ著・小学館)、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・同)、『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)、『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(石黒智也著・双葉社)など多数刊行。最新刊は、取材・執筆を担当した『黒い感情と不安沼 「消す」のではなく「いなす」方法』(やまざきあつこ著・小学館)。

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