


どういう大人になって欲しいのかを考える
多くの中学受験生の保護者に接していますが、時代は猛スピードで変わっているのに、親たちは、こと子育てに関して意外と保守的だなぁと思うことが多々あります。
令和の時代であっても、未だに根強い昭和思考をお持ちの方が多いと思う次第です。
もちろん、それは「我が子に良かれ」という気持ちではあるのでしょうが、受験を前にすると、親自身の価値観が揺れてしまうことに原因があるように感じています。
これからの時代に必要な力「VUCA」とは
例えば、最近は、これからの時代に必要な力として「VUCA」が挙げられています。
「VUCA」とは、市場、組織、個人などあらゆるものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が困難になっている状況を意味しています。「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」という、4つの単語の頭文字を取った造語だそうです。
元々は1990年代から米軍で使われ出した軍事用語ということですが、ここ最近では教育界でも流行りのワードとなっています。
時代の風に敏感な中高一貫校では、最近はしきりに「予測困難な時代だからこそ、変化に対応する力をつける!」とうたうことが多くなってきました。
AI化やグローバル化がさらに進むと考えられている時代ですので、流動的で不確実な世の中に対応すべく、(1)自分のやりたいことを見つけ、(2)集中力を持って取り組み、(3)仲間を募り協調しながら、(4)自分らしいオリジナリティ溢れる強みを持ち、(5)自らの意思で行動できる人間を育てる、と明言している学校が増えています。
そのために、国際教育の充実を図ったり、アクティブ・ラーニングに力を入れ、生徒ひとりひとりを刺激して、自らの人生を切り拓いていけるだけの土台を作らせようと奮闘しているのが、今の中高一貫校なのです。
「コスパ」や「偏差値」に左右されていませんか
中高一貫校のこの考え方に賛同し、「やはり中高一貫校で教育を受けさせよう!」と受験に参入される方も多いと思います。
ところが、当初の思いとは裏腹に、徐々に「世間体」「コスパ」などという別の価値観が幅を利かせてきたりするのです。
「やる気が見られない」→「中学受験は無駄」
「塾に行かせているのに成績が上がらない」→「中学受験は無駄」
「整理整頓もできず、塾の宿題もやろうとしない」→「中学受験は無駄」
「ゲームをダラダラしているだけで、勉強しない」→「中学受験は無駄」
このようなお悩みを寄せてくださる保護者は多いのです。
親たちがやってしまいがちなことのひとつに、原因を探ろうとせず、子どもの様子の一面だけを見て、「これでは志望校に受からない」と判断してしまうことがあります。
語弊があるかもしれませんが、言ってしまえば「お金と時間のコスパが合わないので、結果が伴わないのであれば受験させたくない」「しかし、今まで費やしたことが無駄になるのも嫌なので、できれば親が納得できる結果が欲しい」という本音が見えるのです。
中学受験は義務ではありませんので、どうしたって親の意思が入ります。
たとえ「子どもが受験したいと望んだ」というきっかけであったとしても、親が賛同しなければ事実上、中学受験はできないからです。
保護者の方々は当初、それぞれの中高一貫校が持つ教育に賭ける熱い思い、使命感、その実行力などに魅力を感じて受験を選んだのだと思いますが、徐々に、その学校の偏差値の高低や、大学合格実績、聞こえの良さなどに固執するようになるのもよくある話です。
塾の先生方からも、「この偏差値以上の学校でなければ行かせない」と公言される親御さんはいまだに多いと聞いています。
しかし、偏差値ひとつとってみても、今は3年も経たずにその順位表はめまぐるしく変わっています。流動性の時代そのままに偏差値表もアップデートを繰り返しているのです。
つまり、偏差値表ひとつとってみても、基準とするには確実なものではなく、はなはだ曖昧なものに過ぎないのです。
子どもによって違う「幸せ」を得る力
今は、偏差値に固執することなく、その学校が持つ源泉ともいうべき理念と、未来を予測し対応しようとしている意思、そして実行力を冷静に見る時代になっています。
まずは、我が子がどのような力をつければ、我が子の人生が充実したものになるのかという視点で考えてみることが必要と思われます。
そのためには、入学後の子どもが伸び伸びと力を発揮できる環境かどうかを判断できる目を、親こそが養わねばなりません。これは識者にも塾にもできないことです。それを成し遂げられるのは、この世で唯一、親だけなのです。
メディアなどが発信している流行りの価値観ではなく、ご家庭によっても、その子によっても違うであろう、我が家流の「幸せな人生のために必要な力は何か」という観点で我が子の長所を見つめ、そしてその先に広がっている進路を導いてほしいと願っています。
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