「嵐を呼ぶ思春期をどう乗り越えるか?」を考える
避けて通れない「思春期」と「更年期」
子どもが中高生の時代というものは、ちょうど「思春期」という名の、人生の中で「ややこしい」年代と重なることが多いので、母にとっては悩ましい時代になります。
また、母は母で、この時期に「更年期」という名の、自身にとって「ややこしい」年代を迎えてしまいます。
つまり、「ややこしい」と「ややこしい」がぶつかり合って、家庭内の雰囲気が一気に悪化するのが、子どもが中学・高校に在籍している時代の特徴とも言えるのです。
高校受験があるのとないのとでは、母のストレス度がまったく違う
私が「中高一貫校は良いなぁ」と思う理由は様々ありますが、この「子どもの思春期と母の更年期」問題も大きく関係しています。
まず、「高校受験」がないことが、この時代の母にとっては、とてもありがたいことなのです。
母というものは、「心配することがお仕事」のようなところもあり、子どもの顔を見るなり、心配のあまりについ口が出てしまいますよね。
「受験学年なのに勉強しなくていいの?」とか、
「内申が〇〇以上じゃないと、××高校には行けないらしいじゃない?」とか、
「ボランティア活動や英検なんかも内申に響くって本当?」などという類いの言葉かけを、ついついしてしまいます。
母に悪気はないのですが、「受験」というハードルが余計に母のお仕事を増やしてしまいますよね……。
もちろん、そんな口出しをしたところで、中高生が素直に母の話をありがたがるということは稀有であり、聞く耳持たずという態度が普通です。
公立中学であろうが、中高一貫校であろうが、心配することは母のお仕事ですし、更年期はやってきます。
更年期で体が絶好調とは言えないのに、日々の忙しさで余計に疲労がたまりやすくなります。
そんな時に、目の前にいるわが子の態度にイラついて、つい「小言」になってしまうのは、私に言わせればホルモンのなせる業(わざ)なのです。
これは仕方のないことです。
このような時期である故、高校受験というものがあるのとないのとでは、母のストレス度がまったく違うと、私は思います。
中高一貫校の先生は「思春期を熟知したプロ」
今の日本のシステムでは、「受験」が、大部分の人たちが人生のどこかで越えなければならない壁となります。
私は、その壁を人生のどこに置くのかが意外と重要だと、実感している次第です。
もちろん、こればかりは各ご家庭の判断なので、どこに置こうが自由です。
ただ、もし高校受験ではなく、中学受験という選択をし、中高一貫校に子どもを通わせたならば、もれなくこういう特典が付いてくるということを、これからお話ししましょう。
中高一貫校にわが子を通わせるメリットのひとつに、「思春期を熟知したプロたち」、つまり中高一貫校の先生たちが、自身の子育てのサポーターに加わってくれるということがあります。
私は、中高一貫校の取材を数多く続けていますが、「先生方はさすがに思春期のプロだなぁ」と感心する場面に度々、遭遇しています。
直近では、ある中高一貫校でこういうことがありました。
ある中3生が、放課後の職員室で学年主任の先生に向かって、何かの反論めいたことを延々と言い続けている姿を目撃したのです。
「先生、これはナントカで(気に入らない)、これはナントカで(気に入らない)……」
2時間後に私が通りかかったら、まだ反論の最中でした。
その後、その先生に事のあらましを聞いてみたら、先生は私に笑顔でこうおっしゃったのです。
「教師のスッキリより、生徒のスッキリ(が大事)!」
つまり、
「上から押さえつけることは簡単だけれど、話を延々と聞いてくれる人のいることが大切で、本人が話しているうちに気持ちは整理されていくので、それを待つ」
「叱るにしても、生徒が大いに反論できる余地を残す」
「生徒の話を聞くほうが、はるかに大事!」
と言い切られたのです。
また最近は、別の中高一貫校でこういうことが起こりました。
ある高2生が授業中に寝てばかりいるので、先生は気になってその子を会議室に呼んだそうです。
当然、叱られると思っている生徒は、ふてくされた態度でやって来ます。
そして、先生はその生徒にこんな語り掛けをしたのだそうです。
「おまえ、英語、苦手なんだろ? 辛いよなぁ……。苦手なのに、座っていなくちゃいけないのも辛いよ。俺も『寝てていいよ』って言えたら楽でいいんだけど、そうもいかないしな……。
なあ、1時間の(授業の)中で、少しでも、わかることを増やそうぜ。ちょっとでもいいから、1個でも、2個でもいいからさ。そしたら、おまえは変わるぞ。俺が保証する」
先生は私にこう話されました。
「その生徒は決して、さぼりたいとか、反抗で寝ているとかではなく、むしろ理解できなくなっていることを放置している自分に腹を立てているんです。
もし私が、その生徒に『寝るな!』って叱っただけなら、それで生徒と教師のコミュニケーションは終了してしまいます。
これって、その生徒にはこういうサポートが効くとわかっているから、できることなんですよ。
12歳から引き受けて、毎日見続けているわけですから、どの生徒もその子なりの成長がわかっていますし、反抗するにしても『この程度』ってこともよくわかります。
何より、ドイツもコイツも可愛いんです(笑)。
その生徒ですか? その翌日から寝なくなりましたね。
我々教員にとって、じっくり6年間にわたって世話ができるっていうのは、大変な喜びですし、じっくりと各々の成長を待てるっていうことはありがたいことです」
中高一貫校には、反抗期の6年間を面倒見てもらえる環境がある
中高一貫校の先生方がよく口にする台詞に、
「学校は家庭と社会の中間にあるもの。子どもが社会に出るまでの、大事な繋ぎの役割をしている」
という意味合いのものがあります。
母が更年期、子どもが反抗期の時代で、大きな繋ぎの役割を自認している先生方がおられる学校で、12歳から18歳までの長きにわたり、面倒を見てもらえる環境が用意されていることは、とても贅沢なことだと、私は思うのです。
そういう意味でも、今、中学受験に際し、悩み苦しんでいる親御さんには、
「中高一貫校はなかなか良いから、今を頑張ってみれば?」
というエールを送りたいと思う、新学年の始まりです。
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